異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

現在と過去

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 悪夢?から目覚めたアクアは、クロトとイチャついていた。


「今日は随分積極的なんだね・・・?」

「そうでしょうか・・・?」


 安全地帯となった天の塔26Fにて、クロトは動揺させられていた。

 目を覚まして抱き着いたアクアが、今までよりも色っぽく見えたのだ。


 アクアはそんなクロトの動揺を事細かに感じ取ってしまった。


 ユニークスキル「波紋超越せし極群青の天瞳」は、究極の感知スキル、

 ありとあらゆるものを感知可能であり、人の心であっても例外ではない。


 ただし、思考能力の上限を超えるものを感知すると、頭がおかしくなる。

 たとえば、世界の全てを感知しようとすると、ただでは済まなくなるだろう。


 アクアはユニークスキルの検証をしている間に、そのことを知った。

 そして、事故とは言え、クロトの心の表層を知ってしまった。

 つまり、クロトが平気そうに見えて動揺しているということに気づいたのだ。


「ふふふっ。クロトさんって可愛いですね・・・?」

「えっ・・・?」


 色っぽく微笑むアクアに、さらに動揺するクロト。

 アクアは、必死に動揺を押し殺しているクロトが、愛おしくて堪らなくなる。


「動揺しているのは分かっていますから、隠さなくてもいいですよ・・・?」

「・・・まいったね、これは。」


 アクアが確信を持って言っていることが分かってしまった。

 妙な恥ずかしさに襲われ、赤くなった頬を掻く。


「普段私が慌てさせられてばかりですから、ちょっとした意趣返しです。」

「・・・新しいスキルかな?」

「はい、そうです。」



 アクアはクロトの全てを知りたくなったが、そこは自重する。

 クロトだって、気分の良いものではないだろうから。


「新しいユニークスキルは、乱用禁止ですね。」

「ん?僕の心であれば、幾らでも読み取っていいよ?」

「えっ・・・?」


 真顔でそんなことをのたまうクロトに、アクアは呆けてしまった。


「ですが、その・・・。」

「アクアに隠すことなんて無いし、構わないよ。」

「・・・嫌ではないのですか?」

「全然。何なら、僕がどれくらいアクアを好きなのか、読み取ってみる?」

「・・・・・・。」


 アクアはクロトから自分へ向けられる感情が気になり始めた。

 愛してもらっているのは間違いないが、確かめたことなど無いのだから。


「本当によろしいのですね?」

「勿論。さ、どうぞ?」


 クロトは両手を広げて待ち受ける態勢に。

 アクアは意を決して、自分に関するクロトの心を読み取る。


「・・・・・・はぅっ!?」

「?」


 表現が難しく、上手く説明できない。

 だが、想像を絶するほど愛してもらっていることは分かったアクア。

 可愛らしい反応も当然の結果であったのだろう。


 いくつかクロトの欲望も読み取ってしまったが、大して気にならなかった様子。

 もっとも、その光景を想像して、顔が真っ赤になっているが。


「読み取れたかな?」

「は、はい・・・!」


 アクアは呼吸を整えて落ち着きを取り戻す。


「ふぅ。やはり、一度に読み取るのは疲れますね・・・。」


 そう零してクロトにしなだれかかる。

 やはりというか何と言うか、大人の魅力を醸し出している。

 欠片も卑しさを感じない、純粋な色気だ。

 クロトは試練で何かがあったのだろうと推測した。


「アクア・・・。」

「んっ・・・・・・。」


 クロトはその魅力に抗うことが出来ず、アクアの唇を奪った。








 その後、27Fと28Fを順調にクリアし、29Fのボス部屋の前へ到着。


「あの山羊騎士とかいうのは、可哀そうだったね・・・。」

「口上の途中で攻撃しては不味かったでしょうか?」

「いや、全くそんなことはないよ。寧ろよくやったと思う。」


 卑猥な言葉を吐きそうな気配があったので、それで正解だろう。


「・・・あれ?アクア、少し背が伸びた?」

「えっ?そんな短期間では伸びませんよ?」

「でも・・・ほら、僕と殆ど同じ高さになってる。」


 クロトは自分の身長と比べて、間違いないと感じた。

 ついでにキスをして、確信。


「んっ・・・確かに、そうですね。どうしてでしょうか・・・?」

「っ、どうしてだろうね?」


 キスをされても慌てず、色っぽく微笑むアクアに、クロトの心臓はバクバクだ。

 本当に、短期間で大人びてしまった。

 今までのアクアも好みのど真ん中だったが、今のアクアは更に上を行く。

 完璧に的の中心といってもいいくらいだ。


 首を傾げるアクアは、可愛く、美しい。

 クロトは平常心を取り戻すのに苦労した。



 簡単な打ち合わせをした後で、ボス部屋の中へ。



 そして、追い詰められている現状がある。







「水神魔法・神氷絶波!」

「神天十六夜連閃・龍絶」


 姿を消しつつアクアの魔法を全て回避したクロトのナイトメアドール。

 ほぼ完璧に再現されたそれは、隠密者をも使いこなす。


「水神魔法・鏡花水月!」


 隠密したクロトの位置を瞳のユニークスキルで感知。

 クロト人形の刃は、アクアをすり抜けた。


 今のアクアは、本気のクロトと戦っているようなもの。

 やや劣勢になっているが、それは地力が違うからではない。


 アクアがとある理由により動揺しているからだ。



 その理由というのは、クロトが戦っている相手にある。


 アクアは、ソレを始めてみた瞬間から違和感があった。

 自分の記憶を探り、その違和感の正体に気づいて、驚愕し、動揺した。


(どうして・・・?見間違いではありませんし、これは一体・・・!?)


 クロトが最も戦いたくない相手を再現したクロト人形。

 アクアは思わず叫んでしまった。














「クロトさんっ!その人はっ・・・・・・私の命を救ってくださった人です!!」

「・・・・・・え?」


 クロトは、呆然としながら、そう呟いた。


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