異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

星空とデート終了

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 船上で散々イチャついた後、二人は東国ジャンゼパールへ転移した。

 目的地は、イスタルの町近くにある星見の丘。


「ここより先は最高級施設になりますのでご予約の無い方・・・失礼しました。」

「ん、案内はいらないから、行かせてもらうね?」

「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ。」


 クロトは事前に予約していた訳ではないが、身分証をみせればフリーパスだ。

 いつもなら事前に予約くらいするのだが、今回は突然のことだったので。


「・・・・・・。」


 リンカは、明らかに庶民の自分が来て良い場所ではない雰囲気に、緊張気味だ。

 日本で言うなら、スイートルームみたいなものなので、その反応も仕方ない。

 こういう何気ないところでクロトの凄さを思い知らされるのがリンカだ。


 少し歩くと、満天の星空を一望できる、最高級宿に到着。

 当然の如く貸し切りで、他に人は居ない。

 屋内でイチャつくの自由だし、テラスで星を眺めつつ乾杯というのも良い。


 ちなみに、ミカゲ財閥はこの施設を買収していない。

 国営というのもあるが、クロトが客として訪れたい場所第一位なので。








「それじゃあ・・・乾杯。」

「乾杯・・・!」


 二人は早速、テラスでジュースを飲みながら、星を眺めた。

 仰向けになりながら星を眺め、手が届くところに飲み物。

 隣を見れば、愛しい恋人の顔が間近に。

 これほどすばらしい環境は、ここにしかない。


「ほんとうに・・・綺麗・・・!」


 先程までの緊張はどこへやら。

 リンカは興奮した声で、そう呟いた。


 だが、それも無理なからぬこと。

 どこを見ても星の輝きが目に入る絶景は、世界広しといえどもここだけ。

 地球には存在しないであろうことは想像に難くない。

 リンカも乙女であるので、そういう絶景には弱い。



 どれだけ時間が経ったのか。

 クロトはリンカの手をギュッと握った。


「っ、クロト・・・さん・・・?」

「・・・。」


 クロトは何も言わずに星を見上げていた。

 どうやら無意識の行動だったらしい。


 リンカは胸の鼓動が信じられないくらい速くなるのを感じた。

 ともすれば、爆発してしまうのではないかと思うくらいに。


 ムードが後押ししたのもあるのか、クロトの事が愛おしくて堪らなくなった。

 自分の全てを捧げてしまいたくて。

 クロトに滅茶苦茶にしてほしくて。

 そんな想いが溢れて、口から零れだす。


「クロトさん、好きです・・・!大好きです!愛しています・・・!」

「リンカ・・・?」


 クロトはリンカによる愛の叫びを耳にして、そちらを向く。

 狂おしい程の慕情をリンカから感じ取って、ドキリとさせられた。


「好き・・・!何でもするからっ・・・ずっとそばに居てっ・・・!」

「リンカ・・・まるでヤンデレだね・・・。」


 リンカの心の奥に仕舞われた、ある意味自己中心的な感情が溢れだした。

 心を入れ替えて以来、普段は絶対に表に出ない感情だ。


 厳密にはヤンデレとは違うだろう。

 だが、鬼気迫る雰囲気のリンカをヤンデレと称したクロト。

 その判断は、間違ってはいまい。


 クロトという男は、ヤンデレが嫌いではない。

 寧ろ、少し好きなのかもしれない。

 なにせ、今のクロトはとても嬉しそうなのだから。


 自分を愛してくれるあまり、自分を殺そうとしても、許容できる。

 嫌ではなく、どちらかと言えば、嬉しくすらある。

 それがクロトという男が持つ懐の広さ。


 どこか狂っているのかもしれないが、それについては今更だろう。

 きっと世の中のヤンデレがクロトを相手にしたら、毒気を抜かれるに違いない。



「・・・部屋にいこうか?」

「・・・!」


 リンカは言葉の意図を理解して、思いっきり首を縦に振った。


 夜は始まったばかりだが、明日の事を考えれば、丁度いいのかもしれない。













 翌日の、まだ日が昇る前、クロトとリンカは目を覚ました。

 昨晩は控えめだったので、リンカの足腰が立たないということは無さそうだ。



 クロトはドレファトの町へ転移して、リンカを永遠の眠り亭まで送り届ける。


「クロトさん、昨日はありがとうございました!凄く、楽しかったです!」

「どういたしまして。僕も楽しかったよ。」


 クロトは名残惜しそうなリンカにそう告げた後、照れくさそうに、こう続けた。


「えっと、さ・・・。もしまた辛くなったら・・・・・・いいかな・・・?」

「っ・・・!?は、はい・・・!私なんかでよければ、喜んでっ・・・!」


 満面の笑みでそう答えたリンカ。

 クロトは安堵の表情を浮かべ、そっと唇を触れ合わせたのだった。

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