異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
492 / 600
第二部「創世神降臨」編

心乱れる原因

しおりを挟む
 ラファエルはクロトの言葉で激しく動揺した。


(調整・・・!?主様の命令・・・ですがっ、私が私でなくなるのは、絶対に嫌でございます・・・!ですがですが、命令は命令っ・・・!?)


 ラファエルの思考は堂々巡りとなり、ついには目がぐるぐるし始めた。


「ラファエル・・・?クロトさん、ラファエルの様子がおかしいです・・・!」

「うん、明らかにおかしい・・・のかな?微妙な判断になりそうだけど・・・。」


 クロトとアクアが蹲ったラファエルに声を掛けるが、反応が無い。


「ん、一度調べてみよう。ラファエル、少し眠っていて・・・っ!?」


 クロトは最後まで言うことができなかった。

 顔を上げたラファエルは、ボロボロと涙を流していたのだ。


「主様っ・・・!どうか、私を私のままで、いさせてくださいませっ・・・!」


 きっとそれは、ラファエルなりに考え抜いた答えだったのだろう。

 クロトとアクアを裏切らず、なおかつ自分の願いを叶える為の要求だった。


 だが、クロトとアクアはポカンとした顔をするしかできなかった。

 何故なら・・・


「・・・それって、当然のことだよね?」

「はい、ここに居るラファエルが、私たちにとって唯一のラファエルですから。」


 ・・・二人はラファエルをれっきとした人間として見ていたのだから。


 ラファエルがラファエルのままで居るのは当然で、決定権も自分たちにはない。

 他の性格が違うラファエルを、ラファエルとは絶対に呼ばない。

 自分たちに仕えていても、一人の人間である以上は、ごく当然のことだ。

 何があっても、アクアがアクアのままでいるように。


 なお、調整というのはラファエル自身のことではなく、装備等のことを指す。


「ラファエル、君が抱えていること、話してもらえるかな・・・?」

「ラファエル・・・私にも、聞かせてほしいです。」


 クロトとアクアは妙な行き違いがあると考え、彼女の心の内を問うた。








 ラファエルはすべてを正直に話した。


 クロトの言動に心が乱されること。

 自分に不具合が生じているのではと疑っていること。

 再調整により自分が自分でなくなり、別人がクロトとアクアに仕える恐怖。

 クロトの調整という言葉に動揺して、命令と願望の板挟みになったこと。


 全てを聞いたクロトは勘違いさせたことを申し訳なく思いつつ、こう告げた。


「それは恐らく・・・愛の血肉のせいだね。」

「・・・?」


 ラファエルの作製に愛の血肉という素材を用いた。

 ラファエルのクロトへの感情は、これが原因だと推測された。


 愛の血肉にはクロトの腕が使われている。

 そのせいで、ラファエルの肉体がクロトを求めてしまう、ということだ。

 そして、心が体に引きずられて、恋愛感情は無いのに心が乱される、と。


 恋愛感情の定義に引っ掛からないのは、明らかに歪な経路を辿ったからだろう。

 クロトから継承した記憶と符合しないのも当然である。

 細かい作用については詳しい解析が必要だが。


「つまり、それは仕様ということになるのかな?予想外の事ではあったけど。」

「私は、とんでもない思い違いをしていたのですね・・・。」


 ラファエルはクロトの説明に納得して、不具合ではないと理解した。

 そしてすぐに、膝を着いて迷惑を掛けたことを謝罪し始めた。


「クロト様、アクア様、私の勘違いでご迷惑をお掛けしました。」

「謝罪は要らないよ。どちらかと言えば、僕のミスなんだから。」

「完全に予想外だったのですから、ミスという表現も合わないかと思いますよ?」


 と、いう訳で、一件落着・・・・・・とはならない。


「それでクロトさん、どうすればその歪な状態を治せるのでしょうか・・・?」


 アクアは自分では思いつかなかったのでクロトに尋ねた。

 魅了の状態異常とは少し違うことは分かるのだが、その先は高度過ぎるのだ。


 アクアの問いに対するクロトの答えは、実に簡潔なものだった。


「・・・ない。」

「・・・・・・ふぇ?」

「・・・・・・へ?」


 アクアとラファエルは思わず間抜けな声を出した。

 そこでクロトは、もう少し詳しく答えた。


「そういう仕様である以上、今が正常体・・・だから、治しようがないよ。」

「・・・・・・ええええええええっ!?」

「・・・・・・・・・・・・。」


 アクアは驚愕の声を上げ、当の本人であるラファエルは放心していた。

 そして、衝撃の事実を告げたクロトも、どこか疲れたように顔を顰めていた。



 クロトは過去の経験から、人間の自由意思を大いに尊重する。

 だからこそ、今の今まで気づけなかった。


 生み出された命は、生み出した者に逆らえないようになるのが自然なのだと。

 今回は、それが愛という形を当てはめることで保障されるに至ったのだと。




「アクア、どうしよう・・・?」

「・・・どうしましょう?」


 アクアに尋ねはしたが、クロトは既に分かっていた。

 もうどうしようもないのだと。


 疲れた顔をしてしまうのも致し方ないことだろう。

しおりを挟む
感想 1,172

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。