異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

プロローグ26

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 ここはアウターワールド、とある時間軸のとある場所。


「・・・いよいよね。」

「―――――」

「ええ。たとえ私たちの目的に必要なのだとしても、気分は良くないわよね。」

「私もアリスに同意します。何度もこれで良いのかと悩みましたから。」


 この場に居るのは全部で六人。

 全員がローブで顔を隠しており、そのローブの色は様々だ。


「きっと、私たちのやろうとしていることは間違っている。」

「それでも、彼らならきっと・・・乗り越えてくれるわよ。」


 緑ローブと黄ローブの二人がそんなやり取りを行った。

 互いに信頼していることがありありと分かる口調だ。


「彼女は・・・必ず取り戻してみせる。」


 そう呟いた紫ローブの者は、壁に掛かったとある色のローブを見つめていた。

 残りの者たちも、つられてそちらの方を見た。


「――――――」

「そうね。必ず勝ちましょう――――――全能神座争奪戦に。」


 銀のローブを纏った銀眼のアリスは、黒ローブの言葉にそう同意したのだった。










「くしゅん!!」

「カレン?風邪でもひいたの?服を脱いで寝たら駄目じゃないか。」

「私が自分で脱いだような言い方はやめろ!」


 同じベッドの上で目覚めたクロトとカレン。

 朝から元気な事である。


「昨夜は驚いたよ?急に部屋に押しかけてくるなんて・・・。」

「誰のせいだと思っているのだ!クロトが変なものを飲ませたからだろう!?」

「いや、飲ませたのは僕じゃなくてスティカだし・・・・。」


 昨晩カレンはスティカと食事をしたのだが、そこで妙な薬を飲まされたのだ。

 スティカに悪意などは無く、単純な好意だったので、カレンは気づけなかった。


 結論を述べると、その薬とお酒が妙な反応をして・・・ということである。

 なお、スティカは罪悪感から騎士団の宿舎に引きこもっている。

 クロトはいい薬だと考えて敢えて放置だ。


「だが、あの疲労回復役はクロトが開発したのだろう?」

「それはそうだけど、誰がどう使うかなんて僕が決められることでもないし。」

「くっ・・・!」


 カレンはクロトの責任を追及できないと理解して歯噛みした。

 体が火照ってどうしようもなかったとはいえ、昨夜のカレンは異常だった。

 その恥ずかしさから目を逸らしたくなるのも仕方ないことだろう。


「それにしても、カレンがあんなことを言うなんてね・・・。」

「あああああっ!?頼むからもう忘れてくれっ!!」


 そんなこんなで、創世神クラリアセレス大感謝祭は開幕の日を迎えたのだった。




「ところで、開会の挨拶まであと一時間も無いんだけど・・・どうしよう?」

「どうしようもこうしようもあるか!早く支度をしろっ!」








 創世神大感謝祭は一日目の正午から二日目の夜まで行われる。

 正午五分前には主催者代表、つまりはクロトから挨拶があると周知されている。

 遅刻しようものなら大問題だ。


「よし、準備完了だね。」

「どこも完了してませんわよ!?そのヘンテコなお面を早く外してくださいまし!」

「あ・・・間違えた。」


 クロトはお面を外し、アイテムボックスへ収納。

 あと一分で開催五分前のスピーチだというのに、何をやっているのやら。


「会長、財閥前の広場に人が集まり過ぎています。」

「んー、まだ建物内部に入れるわけにはいかないし、我慢してもらうしかないね。
 その代わりというわけでもないけど、開会後の誘導にできるだけ人員を割いて。」

「かしこまりました。」


 スイレンはクロトに伺いをたてた後、再び慌ただしく動き始めた。

 やはり、当日ともなれば不測の事態の一つや二つは起こるもののようだ。


「クロト、時間だよ!」

「ああ、分かった。ローナも持ち場に移動するように。」

「了解!」


 クロトはミカゲ財閥本社ビルの前にある大広場の中心へ転移した。

 そこにはステージが仮設されており、その影響で少々高い位置にある場所だ。


「ふぅ・・・。皆さん、ごきげんよう。ミカゲ財閥代表取締役のクロトです。」


 クロトがマイクで話し始めると、ステージの周囲に居た人々が一斉に静まった。


「時間も短いので、僕から言うことは一つだけ。
 この感謝祭は、創世神クラリアセレスへの感謝を捧げるお祭りです。
 事前に配布したクラリアセレスについての概要は読みましたよね?
 未だに救われない彼女に、許しと救いを与えるためのささやかな感謝を!
 ・・・創世神クラリアセレス大感謝祭、ただいまより開催いたします!」

「「「「「「「うおおおおおおおおおおっ!!」」」」」」

「「「「「「「きゃあああああああああっ!!」」」」」」


 世界中に映像で発信されたクロトの開催宣言。

 その言葉に、世界中の人たちが声を揃えて叫びをあげたのだった。

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