異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

感謝祭一日目ー5

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「クロトさん、私、まだ十代なのに、おばさんと呼ばれました・・・!」

「ああ・・・子供の言う事だから気にしない気にしない。リンカはまだ若いよ。」

「ううっ・・・。」


 クロトとリンカはカラーヴォイス王国王都郊外で仮設の高級長椅子に座っていた。

 ここは、まもなく始まる花火大会を観賞する特等席であるのだ。

 席は十数人が余裕で座れるくらいはあるが、クロトの隣は二人分のみ。

 クジ引きで当たりを引いた者が隣の席をゲットできる。


 リンカはとある事情からこの場へ一番乗りし、いきなり当たりを引いた。

 故に、クロトの右隣に座っているのだ。

 もっとも、該当の席に座る者が現れるまでは自由に座っていていいのだが。


「大体、年の話をするなら、もっと致命的な人が居るよね。」

「あっ、そうですね・・・。私、気にし過ぎていたみたいです・・・。」

「じゃあ、そういうことで・・・。」

「人の年の話で盛り上がらないでくださいましっ!!」


 クロトとリンカがクスクスと笑っていると、そんなツッコミが入った。

 たった今話題に上がっていた人物の一人、マリアである。


「やあマリア。早かったね。花火の準備はもういいの?」

「わたくしが手伝える部分は終わりましたわ。後はローナがやってくれますの。」

「そっか。それじゃあ、このクジを引いて?」

「・・・分かりましたわ。」


 マリアはやや緊張しながら、クジに手を伸ばした。

 箱の中からボールを取り出すタイプである。


「マリア、言うまでもないと思うけど、スキルは使用禁止だよ?」

「っ、分かってますわよ、それくらい!」

「そう言いつつ、天魔眼を使おうか葛藤してたよね?」

「えっ・・・マリアさん・・・?」

「なっ・・・!」


 図星を突かれ、口をパクパクさせた。

 何気にリンカの疑いの眼差しが一番キツイかもしれないと思うマリアであった。


「さ、どうぞ?」

「くっ・・・。」


 マリアは箱の取り出し口から手を入れ、中を探る。

 すると、人数分の球がそこにはあった。

 何とかしてクロトの隣である当たりを引こうと頭を使う。


(当たりの黒い玉は僅かに他と触り心地が違うはずですわ。だから・・・っ!)


 マリアは一つだけ違う触り心地の球をみつけ、しめた!と思いつつ取り出す。

 そうして取り出されたのは・・・黄色の玉。

 ・・・ハズレである。


「残念。ハズレだね。番号は・・・端っこの方みたいだね。」

「なっ!?そんなはずは・・・!?」

「ま、ズルしようとする人にはお似合いの結末かもしれないね。」

「・・・・・・はっ!?」


 そう、クロトが作ったこのクジ、相当な技術力を用いて作られているのだ。

 例えば、取り出し口に手を入れた瞬間ランダムで一つ触り心地が変わる、とか。

 仕組みとしては割と単純で、核となるのは幻想結晶や夢幻結晶など。

 なお、当然の如く当たりはランダムの対象に含まれない。


「創世結晶と神結晶は痛い出費になったけど、些細な事かな。」

「些細じゃありませんわよ!?このためだけに幾ら掛けたんですの!?」

「以前も言ったけど、神素材が絡むと値段なんてつけられないよ。学習して?」

「その通りですけどっ・・・釈然としませんわっ!」


 半分くらい自分を狙ったような仕掛けにむくれながら隣に腰を下ろす。

 他に人も居ないので、今は問題無いのだ。


「愛しき人を揶揄うことに手間とお金を惜しまないのは、僕なりの正義だね。」

「そんな正義はその辺に捨ててしまっていいですわ・・・。」


 マリアはどこか疲れたようにしながら、クロトに寄り添った。

 彼女も、自分のためにそこまでされているのは嬉しく思っているのだが・・・。

 如何せん、内容が内容だけに素直には喜べない様子。


 クロトは目前にある机に飲み物を出してグラスに注ぎ、マリアの前に移動させる。


「マリアは味の無いオレンジジュースで良かったよね?」

「よくありませんわ!味が無ければオレンジジュースとは言いませんのよ!?」

「大丈夫。栄養素は全く同じで味が無いだけだから。」

「だから味が無いことが大問題なんですの!大体、どうやって作ったんですの!?」


 マリアはそう言いつつも見た目も匂いも完全に同一のそれを口にする。

 すると、普通にオレンジジュースの味がした。


「クロト、オレンジジュースの味がしますわよ?」

「オレンジジュースなんだから当然でしょ?寝ぼけてるの?」

「っ、クロトおおおおおおっ!!」

「マリアさん落ち着いてっ・・・!」


 リンカは落ち着かせようとするが、猛るマリアはそう簡単には止まらない。

 だからクロトは一瞬触れあうだけのキスをして落ち着かせた。


 リンカはその様子を少しだけ羨ましそうに見ていたのだった。

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