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第二部「創世神降臨」編
感謝祭二日目ー4
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クロトとアクアの戦いはクロトの勝利で終わった。
訳あって使えなかった力を一部分とはいえ開放したおかげである。
さもなくば、よくて引き分けで終わっていたはずだ。
「また勝てませんでしたね・・・。」
落ち込んでいるアクアをフォローするのはクロト・・・ではなくラファエル。
「アクア様、奥の手を出させたのですから、もっと喜んでもいいかと思われます。」
「残念ですが、アレは奥の手の一つに過ぎません。他にもまだありますよね?」
アクアはクロトに、他にも手札があるのでしょう?という視線を投げかけた。
クロトはそれに対して薄い笑みを浮かべただけで、否定も肯定もしなかった。
だがアクアは、それが事実上の肯定だと理解した。
「そういう訳で、とても喜べる状況にはありませんよ、ラファエル?」
「は。差し出がましいことを申し上げました。」
「よろしい。」
アクアはラファエルの謝意を受け取って鷹揚に頷いた。
張っている胸が強調され、中々男の目を引き付けるような姿になっている。
アクアに茶目っ気が出てきたのは少し前の話だが、これもまた魅力的要素だ。
「そういえばラファエル、体の調子はどう?今日の夜、大丈夫そうかな?」
「っ!?ク、クロト様!?何を・・・!?」
ラファエルはその言に動揺して、用意していたお茶入れがその手から滑り落ちた。
クロトはそれを器用に受け止め、彼女の代わりにお茶をコップへ注ぐ。
「わ、私は、夜伽の誘いはっ・・・!精神が引きずられているだけで・・・!」
「いや、違うから・・・。そんな言い訳染みたこと言わなくていいからね?」
ラファエルが、誘いを魅力的に思ってしまうのはこの体のせいだと主張した。
それは全くその通りではあるのだが、そもそもそんな話はしていないという。
クロトの言う通り、彼女の誤解である。
「ラファエル。今日の夜、義体としての仕事は問題ないか、ということですよ?」
「っ、失礼いたしました。そちらの務めの方でしたら問題ないかと思われます。」
「それは結構。けどね、この流れでそちらの務めとか言わないで・・・?」
そちらでない務めとは何なのか、という話になるからだろう、きっと。
ラファエルは度重なる失態に肩を落とすのであった。
「それはそうと、クロトさん。アレはどうなさいますか?」
「ん?もちろん撃墜で。アクアに任せるよ」
「分かりました。では私がやらせてもらいますね」
アクアはコップを置いて席から立ち上がり、詠唱を始めた。
水神魔法を習得してからはあまりやっていなかったことなのだが・・・。
「願い求めるは水神の根源。
凍てつく波動と一つになりて、定めし世界を根絶せよ。
全ては我が望みのために・・・水天神魔法・天世の氷神波っ!!」
発動した大魔法はクロトでもギリギリ目で追えるかどうかの速度。
一瞬にも満たない時間で深海竜の群れを呑み込み、敵は全滅した。
呑み込むというような表現が似合わない魔法なのに、そう表現するしかない。
あれは誰がどう見ても、死の波である。
「・・・アクアにも隠し玉はあるんだね。冷や汗を掻いたよ・・・。」
「はい。今はまだ、詠唱無しで発動させるのは困難を極めますけれど・・・。」
今はまだ、という確信めいた表現を聞いたクロトは、乾いた笑いを浮かべた。
その後、深海竜の素材を回収(塵より細かくなっていた)したのであった。
(それにしても群れとはね・・・。向こうで何かあったのかな?)
そんなクロトの根拠なき推測は、図らずともある程度は真相を捉えていた。
だが、そのことをクロトが知るのは、もう少し先の話。
「勿体ない・・・。とりあえず、アクアにはお仕置きだね。」
「はぅ・・・!申し訳ありません・・・!」
アクアは精神が大人っぽくなっても、時折天然っぷりを披露するようだ。
こればっかりは出会った日の頃から変わらない。
「ゴブリンの巣で助けた時のアクアは、あたふたして可愛かったなぁ・・・。」
「クロトさんっ!恥かしいのでその話はやめてくださいっ!」
「なにこの可愛い生き物、って思ったよ・・・」
「やめてくださいってば!」
懐かしむように瞳を閉じてそう語り始めたクロトを、アクアは慌てて制止する。
二人だけならまだしも、ラファエルに聞かれるのは恥ずかしいのだろう。
彼女の前では頼れる主のように振舞っているのだから、当然か。
とうのラファエルはクロトの話に興味津々で聞き入っている。
クロトとアクアのじゃれ合いは、そのまましばらく続いた。
創世神クラリアセレス降臨予定時刻まで、あと三時間。
訳あって使えなかった力を一部分とはいえ開放したおかげである。
さもなくば、よくて引き分けで終わっていたはずだ。
「また勝てませんでしたね・・・。」
落ち込んでいるアクアをフォローするのはクロト・・・ではなくラファエル。
「アクア様、奥の手を出させたのですから、もっと喜んでもいいかと思われます。」
「残念ですが、アレは奥の手の一つに過ぎません。他にもまだありますよね?」
アクアはクロトに、他にも手札があるのでしょう?という視線を投げかけた。
クロトはそれに対して薄い笑みを浮かべただけで、否定も肯定もしなかった。
だがアクアは、それが事実上の肯定だと理解した。
「そういう訳で、とても喜べる状況にはありませんよ、ラファエル?」
「は。差し出がましいことを申し上げました。」
「よろしい。」
アクアはラファエルの謝意を受け取って鷹揚に頷いた。
張っている胸が強調され、中々男の目を引き付けるような姿になっている。
アクアに茶目っ気が出てきたのは少し前の話だが、これもまた魅力的要素だ。
「そういえばラファエル、体の調子はどう?今日の夜、大丈夫そうかな?」
「っ!?ク、クロト様!?何を・・・!?」
ラファエルはその言に動揺して、用意していたお茶入れがその手から滑り落ちた。
クロトはそれを器用に受け止め、彼女の代わりにお茶をコップへ注ぐ。
「わ、私は、夜伽の誘いはっ・・・!精神が引きずられているだけで・・・!」
「いや、違うから・・・。そんな言い訳染みたこと言わなくていいからね?」
ラファエルが、誘いを魅力的に思ってしまうのはこの体のせいだと主張した。
それは全くその通りではあるのだが、そもそもそんな話はしていないという。
クロトの言う通り、彼女の誤解である。
「ラファエル。今日の夜、義体としての仕事は問題ないか、ということですよ?」
「っ、失礼いたしました。そちらの務めの方でしたら問題ないかと思われます。」
「それは結構。けどね、この流れでそちらの務めとか言わないで・・・?」
そちらでない務めとは何なのか、という話になるからだろう、きっと。
ラファエルは度重なる失態に肩を落とすのであった。
「それはそうと、クロトさん。アレはどうなさいますか?」
「ん?もちろん撃墜で。アクアに任せるよ」
「分かりました。では私がやらせてもらいますね」
アクアはコップを置いて席から立ち上がり、詠唱を始めた。
水神魔法を習得してからはあまりやっていなかったことなのだが・・・。
「願い求めるは水神の根源。
凍てつく波動と一つになりて、定めし世界を根絶せよ。
全ては我が望みのために・・・水天神魔法・天世の氷神波っ!!」
発動した大魔法はクロトでもギリギリ目で追えるかどうかの速度。
一瞬にも満たない時間で深海竜の群れを呑み込み、敵は全滅した。
呑み込むというような表現が似合わない魔法なのに、そう表現するしかない。
あれは誰がどう見ても、死の波である。
「・・・アクアにも隠し玉はあるんだね。冷や汗を掻いたよ・・・。」
「はい。今はまだ、詠唱無しで発動させるのは困難を極めますけれど・・・。」
今はまだ、という確信めいた表現を聞いたクロトは、乾いた笑いを浮かべた。
その後、深海竜の素材を回収(塵より細かくなっていた)したのであった。
(それにしても群れとはね・・・。向こうで何かあったのかな?)
そんなクロトの根拠なき推測は、図らずともある程度は真相を捉えていた。
だが、そのことをクロトが知るのは、もう少し先の話。
「勿体ない・・・。とりあえず、アクアにはお仕置きだね。」
「はぅ・・・!申し訳ありません・・・!」
アクアは精神が大人っぽくなっても、時折天然っぷりを披露するようだ。
こればっかりは出会った日の頃から変わらない。
「ゴブリンの巣で助けた時のアクアは、あたふたして可愛かったなぁ・・・。」
「クロトさんっ!恥かしいのでその話はやめてくださいっ!」
「なにこの可愛い生き物、って思ったよ・・・」
「やめてくださいってば!」
懐かしむように瞳を閉じてそう語り始めたクロトを、アクアは慌てて制止する。
二人だけならまだしも、ラファエルに聞かれるのは恥ずかしいのだろう。
彼女の前では頼れる主のように振舞っているのだから、当然か。
とうのラファエルはクロトの話に興味津々で聞き入っている。
クロトとアクアのじゃれ合いは、そのまましばらく続いた。
創世神クラリアセレス降臨予定時刻まで、あと三時間。
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