異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
550 / 600
第三部「全能神座争奪戦」編

プロローグ27

しおりを挟む
 アウターワールド、そのノーマルエリアにて、一人の女性が歩いていた。

 太陽の光を浴びて白金色に輝く、白く艶やかなギリギリセミロングの髪。
 瞳の色は黒にも白にも見える疑似的なオッドアイで、不思議と健康的に見える。

 身に着けているのは、白を基調として、所々に黒があしらわれたロングコート。
 見る人が見れば、某人物のコートと真逆でありつつ、とても近しいと思うはず。

 ショートパンツと黒い二―ソックス。
 半袖と長袖を即座に切り替えられるコートの袖。
 防具こそ無いが、キッチリと守られている首元。

 そのところどころから覗く健康的で色白で肌は、さぞ魅力的に映るだろう。
 男性からだけでなく、女性からも。

 顔の造形こそ二十歳女性において上の下ないし上の中あたりの美人止まり。

 しかし、全体を見れば、十人中七人か八人は擦れ違った時に振り向くレベルだ。


 その女性、シロナこと日向ひゅうが白奈しろなは、歩きながら次なる行動について考えていた。


「うーん・・・さっきの虹色に輝く光は何だったんだろう・・・?二十四個に分裂して方々に散っていったけれど・・・凄い大きなエネルギーを感じたし・・・。」


 シロナは声に出しつつ、先程起きた不可解な現象について思考する。

 つい先刻、彼女がブルーエリアを歩いている時、ノーマルエリアの上空で何かが虹色に輝いた。
 途轍もなく大きな力を感じさせるそれは、果たして何だったのか。
 シロナはそれを調べる為に、滅多に訪れないノーマルエリアに来たのだ。


「・・・あれ?よくよく考えれば、散っていった先に向かうべきなんじゃ!?」


 彼女の言う通り、調査の為であれば、その方が確実だ。
 今更ながらにそのことに気づいたシロナは、だがあまり気にしていない。

 何故なら・・・


「ま、こっちに来た方が絶対にいいことありそうだし、別にいいよねっ?」


 シロナは質問系で言葉を発したが、誰も答える者は居ない。
 彼女、考えていることが直ぐに口に出るタイプなのだ。

 とはいえ、聞かれて困ることは決して口にしない故、欠点とは呼べない、はず。


 と、そんな時、少し離れた場所の空から何かが降ってくるのを見つけた。

 それは黒い物体で、細長い形状をしていた。
 また、でこぼこしており、直線が少ないそれ。

 彼女は目を凝らしその正体を看破した。


「空から何か降ってくると思ったら、なんだクロトかぁ・・・。」


 シロナは空から目を外し、止めていた足を再び動かし始め・・・すぐに止めた。


(・・・ん?クロトが降ってくる?)


 シロナは足を止め、もう一度状況を顧みて・・・気づいた。


「・・・クロトっ!?何で空から降ってくるのさっ!?ていうか、ちょ、気絶してるよね!?このままだと地面に叩きつけられて・・・そこの落下物、いや、落下人間!ちょっと待ったぁーっ!!」


 シロナは慌てて全力で走り出し、最後はスライディングをしつつ、ギリギリのところで落下点に滑り込んだ。

 そして、衝撃を殺しつつ、クロトをキャッチ。
 あわや大惨事が起こるところだったのを寸でのところで食い止めた。

 クロトは、何気に人生最大の危機を通りかかったシロナに救われた。
 シロナはファインプレーである。


「はぁぁぁぁ・・・!!ま、間に合ったぁぁぁ・・・!!」


 シロナは仰向けになったまま、何とか助けられたことに安堵した。
 万が一にも死なせてしまったら、絶望という言葉が生温い程にショックを受けただろう。そう確信できるくらいに、彼女は深く安堵していた。


「朝から感じていた予感はこれかぁ・・・。朝ご飯も食べずに来た甲斐があったよぉ・・・。もう少し遅れていたらと思うと・・・ああ怖い怖い。」


 自分の上で、どこかあどけなさの残る顔立ちを見せて気絶している男性。
 彼女の親友をギュッと抱き締めながら、シロナはひと時の幸せに浸った。

 傍から見れば恋人としか見えないだろうが、あくまでも二人は親友である。
 そこに性的なものがあるかと尋ねられれば、無い・・・かもしれない。
 
 この二人はまだ幼いころに死に別れた為に、無いとは言い切れない。

 とはいえ、それは些細な問題だろう。
 彼と彼女にとって、互いの存在は他の何にも代えがたいものなのだから。

 クロトにとっては、恋人と同列に並ぶ存在と言ってもいい。

 恋愛感情無しで、恋人と同じ位置に存在できる。
 そう言えば、どれだけ掛け替えのない存在か分かるだろう。

 もっとも、そこから恋愛感情に発展したところで、何ら変化はない。
 つまり、アクアたちより大事になるという訳ではない。

 恋人と親友、この両者はあくまで、同列な存在なのだ。

 一般には理解しがたいことではあるが、彼と彼女には、それが真理。
 誰にも理解されずとも、それが厳然たる事実としてここにある。

 シロナはクロトを抱き締めつつ、そこでふと思った。


「・・・それで、どうして空から降ってきたの?新時代のバンジージャンプ?」


 シロナはクロトが目を覚ますまでの間、今回の件の考察を始めた。

 運に流されるままではいけない。
 運を理解して、ここへ至るまでの路を理解しなければならない。

 それが、運と対等に付き合うということなのだから。


「とりあえず、お腹すいたなぁ・・・」

しおりを挟む
感想 1,172

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。