異世界住民が住むアパートで一人暮らしを始めました

三毛猫

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 帰りのバス。皆、静かだった。重い空気が流れる。

「えー。残念ながら私達、関東支部選抜勇者パーティーは全敗しましたが、パーティーとして、これからの伸び代に期待している。新しく美智香がファイターを希望してくれた。勇気ある選択に拍手を」

パチパチパチパチ!


『第32回、勇者パーティー対抗試合大会』は他の支部に全敗。合同対抗試合に出た私は終始逃げ隠れていた。

祖母がいた頃は盾を持って全ての攻撃を防いで関東支部を優勝に導いた時代もあったそうだ。祖母は凄すぎる。


バスに揺られ、アパートに帰ってきた。
部屋に入るとホッとして、シャワーを済ませて就寝した。


あれから2日後。
朝起きると美智香が消えていた。

隣の部屋のミニャを訪ねる。

「ミニャ、美智香知らない?」

「貴女の友達はライリーと走りに行きました。さぁ貴女も私と魔法の特訓を」

美智香は本気でファイターになる気だ。

一方、私は全くやる気が出ない。

「しばらく1人になりたい」

ドアを閉めて部屋に戻った。

朝のランニングと筋トレを終えて汗だくになった美智香が帰ってきた。

「おかえりなさい」

「紗倉、おはよう。ぐっすり寝てたね」

「うん。ミニャから聞いた。朝から凄いね」

「紗倉がさ戦うのとか、ダンジョンに行くのが嫌なら私が紗倉の分まで頑張って戦うから。無理しなくていい」

ジングルと同じような事を美智香も言ってくれる。
「無理しなくていい」
その優しい言葉が胸に響く。

私が美智香と出会ってこのアパートの存在を知ってリスクがあるのに入居して、その上私の分まで強くなろうと努力して・・・
私は周りの優しさに甘えて現実の課題から逃げているだけだ。

甘えるのはやめて、これからは現実から目を逸らさず立ち向かう!
私は魔法を学んで強くなる!
私の心の中で熱いものが湧き上がってきた。

「美智香、私もミニャから魔法を学んで強くなる!」

「紗倉・・・」

そう意気込んで私は玄関のドアを開いた。




おわり。
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