断罪の公爵令嬢は日本に転移して心変わりすると元の世界で成り上がります

三毛猫

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物が溢れた世の中

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「ただいま。セバルスさんの晩御飯買ってきましたよ」

ニチカのマンションに帰ってきた。

「お嬢様、ニチカ様、遅いので心配しました。私にご飯まで。ありがとうございます。ん?お嬢様?その目は!?」

セバルスは泣いて腫れ上がった目に気付いた。

「少し、泣いていたのよ。セバルス、今まで強く当たってごめんなさい。これからは人の気持ちが分かるニチカのような大人になるわ」

「お、おじょ、お嬢さまぁぁぁぁ!」

セバルスは突然大号泣した。大声でうぁん、うぁん泣くセバルスに唖然とする私とニチカ。

「セバルスさん、意外と壁薄いから静かにして下さい」

「だって、おじょーさまが初めて私にあやばって、謝ってくださいました。ニチカざまのように優しい人になると宣言くだざいました」

「泣きながら何言ってるか分からないわよ!」

「はい、おじょーさまぁぁ」

「レリアさんもセバルスさんも泣き虫だから、私まで泣けてきた」

「なんでニチカも」

気付くとニチカも涙を流していた。



翌日。


「おはようございます」
「ゴホッ、ゴホッ、おはようございます」
「おはよう」

川の字になって寝て起きた3人は一つの鏡を交代で顔を見る。3人とも瞼を腫らして夜にジュースを飲み過ぎたせいか顔も浮腫んでいた。


「今日からどうしますか?」

ニチカの昨日の話では、物置小屋のように狭い部屋から大きな部屋に移るにはお金が必要になる。お金は何処か働いて稼ぐか、起業するという方法もあるそうだ。
しかし私はアーマイン王国では働いたことがない。何処かで指図され働くのは難しい。
という理由で私は誰の指図も受けずセバルスと共に物を売る事にした。

「セバルス。ゴールドはいくらかあって?」

「お嬢様、私の手持ちはシルバーが2枚です。私の給金ではゴールドなどとても持ち歩くことは出来ません」

「セバルスの給金は月にゴールド何枚?」

「月にシルバー2枚です」

「えっ!」

私は無知だった。セバルスともあろう私が物心つく前から長年仕えていた執事でさえ月シルバー2枚。私のアフタヌーンティー1回の茶菓子代と同じ。それなのにセバルスは文句も言わず、私の身の回りの世話や管理をしてくれた。

「ありがとうセバルス。これからはもっと多くの給金を渡せるようにするわ」

「お、おじょーざまー、ありがとうございます」

「セバルスさん、朝から泣かないでください」
ニチカはセバルスにティッシュを渡した。
セルバスは涙を拭いた。

それから私とセバルスはニチカから借りた服に着替えた。

「私は仕事があるから行くね。千円札5枚渡すねから、これでレリアさんとセバルスさんでお昼食べてね。私の家の住所分からなくなったら交番でこの紙を見せて尋ねてね。それから仕事終わったら6時には帰宅するから」

ニチカは私に紙を渡し交番の説明をして皆で部屋を出た。ニチカはマンションの入り口まで私とセバルスを送り足早に去って行った。

「セバルス、いよいよね。私は何か物を売るわ」

「はい。お嬢様」

「まずは、世の中の知見を深めるわ。付いてきて」

ニチカが昨日教えてくれたビルという建物が建ち並ぶ繁華街を歩く。昨日ニチカがファミリーレストランの帰りに寄ったコンビニで、アーマイン王国にあって日本にない物を探す。アーマイン王国の知識や技術を使って作り出した物を日本で売ろうと考えている。

「これは何という優れたガラス!」
「私が昨晩いただいたご飯!」
「羊皮紙より薄くて色鮮やかな本!」

セバルスはコンビニで終始感動していた。

「なかなか凄いわね。日本という国は」

「はい。お嬢様」

アーマイン王国のどの商会の店よりも洗練された品揃えと種類の多さ。私はグニャグニャのガラスのような容器に入った飲み物を2つ買いコンビニを出た。

日本はアーマイン王国より暑くて喉がすぐ乾く。部屋を涼しくできる何かを売れば日本で大きな商会を築けるに違いない。
まずは買ってきた飲み物の容器の蓋を捻じ切り、蓋を開け喉を潤す。

「なにこれ!ワインのような味付きの水だわ」

「お嬢様、私の水はぷちぷちと口の中で泡が弾けた味付きの水です」

「飲み物まで洗練されているのね」

私とセバルスはコンビニから向かいの店に入った。服や雑貨が溢れ返った店内。私が考えていた部屋が涼しくなる物(エアコン)も既に存在していた。
アーマイン王国の一部の領地が食べるに困らないぐらいの量の食べ物まで並べられている。

既になんでも存在する国。物に困らない国だった。

「か、帰りましょうセバルス・・・」

帰りに本が無料で読めるという図書館を訪れニチカの帰宅まであらゆる本を読み漁り、ニチカのマンションに戻った。

ニチカに昨日教えてもらった通り、エレベーターに乗り5という数字のボタンを押す。エレベーターが上に上がり、扉が開いて通路に出て真ん中の部屋の前でニチカは待っていた。

「おかえりなさい」

「出迎えてくれたのね。ありがとう」

「いいえ。セバルス、足は痛む?」

「昨日よりは痛みは引いてます」

「無理しないようにね」

「ニチカ様、ありがとうございます」

部屋に入った私はニチカに今日の出来事を話した。
そしてスマートフォンという物であらゆる情報や動画を見せてくれた。

アーマイン王国は日本より農業、技術、産業、文化、教育、全てにおいて劣っていた。

その日から数日は図書館に通い、街を散策し知見を深めた。

ニチカは回る寿司屋や食材が山盛りになった店に焼肉にも連れて食べさせてくれた。

私にとって幸せな日々が続くと思われた矢先、部屋にいた私とセバルスにまたも謎の光が2人を包み、気付けばアーマイン王国に戻っていた。
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