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1章 マウン村編
アホ男と旅立ち
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マウン村はセントラル王国の片隅にある小さな村だが、その背後にそびえるマウン山の
豊富な資源や独自の自然環境を目当てに来る客は案外多い。豊富な資源が残ってるという事は
それだけ危険であるという事であり、そんな危ない場所に好き好んで集まってくる連中だからして
腕自慢の冒険者から研究に勤しむ地質学者など、多種多様な職業がそろい踏みしていた。
「ふんふんふ~ん♪」
そんな物好きの一種だろうか、一人の少女がやけに気分よく村を歩いていた。
幼さと凛々しさの備わった面差しは、いわゆる「美少女」と呼ばれるもので、
恐らく年不相応に豊満なバストと引き締まった体と相まって周囲の視線を集めずにはいられないが、
その口元はだらしく緩み、手元はいやらしくその体を弄り、足元は男らしくガニ股と来れば
また別の意味でも視線を集めずにはいられない。
この村に住む稀代のアホ男、フォーゼが「他人に変身できる能力」なる迷惑極まりない力を手に入れた事を
知っていれば、その美少女の正体は火を見るより明らかなのだが、普通の人間はそんな突拍子もない発想に
至らない為に、彼が人の体で精一杯下品な真似をしても問題にはならない事になっている。
「でさあ、これからどーする?」
美少女は一人虚空に向かって問いかける。そこには「変身能力」の副作用で透明になっている彼の弟分、レオが
いるのだが、傍から見る分にはいよいよ奇ッ怪である。
「俺に聞かないでよ。てか姉ちゃんの体で下品な真似すんな」
美少女、つまりレオの姉であるシオン、より正確にはその姿をしたアホ・フォーゼは
相も変わらず自分の胸を揉みながらうひゃひゃと笑った。声が少女のそれである為になおいっそう
下卑た印象が引き立つ。
「美少女のおっぱいを揉むのは上品下品の問題じゃねえだろ。男の本能だって」
「そのバカみたいな物言いも止めて」
「美少女がお胸を揉むのは上品下品の問題ではありませんわ。殿方の本能でしてよ?」
そもそもが「魔術学院を4留の挙句退学したダメ男」という変身能力なんか無くても際立った個性を持つ
稀代のバカである。話して通じるものでは無い、と弱冠12歳のレオは一回り以上年上のこの兄貴分に対し
見切りをつけた。
「やっぱり旅に出るんなら先立つ物が要ると思うんだよね」
む、とフォーゼはふと真顔になる。人助けの旅、などと曖昧な目標からも分かる通りフォーゼに
計画性と言う物は無い。
無いのだがシオンの姿だと真顔になるだけで何かを考えてるように見える。美人は得である。
「じゃ、俺の虎の子を持ってくか」
おお、とレオは思わず声を上げる。この男に貯金なる概念が存在した事がまず驚きである。
連れだってフォーゼの家に向かう道すがら、せめて往来で胸を揉むのだけは止めさせようとレオは思った。
豊富な資源や独自の自然環境を目当てに来る客は案外多い。豊富な資源が残ってるという事は
それだけ危険であるという事であり、そんな危ない場所に好き好んで集まってくる連中だからして
腕自慢の冒険者から研究に勤しむ地質学者など、多種多様な職業がそろい踏みしていた。
「ふんふんふ~ん♪」
そんな物好きの一種だろうか、一人の少女がやけに気分よく村を歩いていた。
幼さと凛々しさの備わった面差しは、いわゆる「美少女」と呼ばれるもので、
恐らく年不相応に豊満なバストと引き締まった体と相まって周囲の視線を集めずにはいられないが、
その口元はだらしく緩み、手元はいやらしくその体を弄り、足元は男らしくガニ股と来れば
また別の意味でも視線を集めずにはいられない。
この村に住む稀代のアホ男、フォーゼが「他人に変身できる能力」なる迷惑極まりない力を手に入れた事を
知っていれば、その美少女の正体は火を見るより明らかなのだが、普通の人間はそんな突拍子もない発想に
至らない為に、彼が人の体で精一杯下品な真似をしても問題にはならない事になっている。
「でさあ、これからどーする?」
美少女は一人虚空に向かって問いかける。そこには「変身能力」の副作用で透明になっている彼の弟分、レオが
いるのだが、傍から見る分にはいよいよ奇ッ怪である。
「俺に聞かないでよ。てか姉ちゃんの体で下品な真似すんな」
美少女、つまりレオの姉であるシオン、より正確にはその姿をしたアホ・フォーゼは
相も変わらず自分の胸を揉みながらうひゃひゃと笑った。声が少女のそれである為になおいっそう
下卑た印象が引き立つ。
「美少女のおっぱいを揉むのは上品下品の問題じゃねえだろ。男の本能だって」
「そのバカみたいな物言いも止めて」
「美少女がお胸を揉むのは上品下品の問題ではありませんわ。殿方の本能でしてよ?」
そもそもが「魔術学院を4留の挙句退学したダメ男」という変身能力なんか無くても際立った個性を持つ
稀代のバカである。話して通じるものでは無い、と弱冠12歳のレオは一回り以上年上のこの兄貴分に対し
見切りをつけた。
「やっぱり旅に出るんなら先立つ物が要ると思うんだよね」
む、とフォーゼはふと真顔になる。人助けの旅、などと曖昧な目標からも分かる通りフォーゼに
計画性と言う物は無い。
無いのだがシオンの姿だと真顔になるだけで何かを考えてるように見える。美人は得である。
「じゃ、俺の虎の子を持ってくか」
おお、とレオは思わず声を上げる。この男に貯金なる概念が存在した事がまず驚きである。
連れだってフォーゼの家に向かう道すがら、せめて往来で胸を揉むのだけは止めさせようとレオは思った。
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