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リンデルからの最後の電話を切ったあと、私はロバートに領主館の使用人達全員に休みを取ることを進めた。リンデルは王都に行って8日目の午後に帰る予定なので、明日からでも2日半は休めることになる。私は一人でも大丈夫と言ったら、料理人も護衛もいなくなることは出来ないと大反対されてしまった。皆交代で休みは取れているので問題ないとも・・・。
「他の使用人の皆は休みを取っているでしょうけど、ロバート、あなたが休みを取っているのを見たことがないわ」
私の言葉に無言になってしまうロバート
「この前娘さんのところにお孫さんが生まれたといっていたでしょう?同じカナンだけど州都ではないから直ぐに会いに行くのは難しいって」
それからニッコリして続けた。
「最低限の人数がいてくれればいいわ、リンデルが今王都にいることは仕事関係の方はご存じだし、アンジェラ様もいないしね」二人の名前を出すと、チクッと胸が痛んだ・・・。
その後もロバートは色々言ってきたけれど、人がいない静かな領主館でゆっくり休みたいのだと押し切るように頼んだら、渋々納得してくれた。
料理人と護衛と庭師、交代で休みが取れる最少人数の人たちを残して、使用人たちは翌日の朝から休みを取った。ロバートも朝から出かけるように促したので、お昼の領主館は静かだった。護衛の人には私の隣の部屋で待機してくれるように話した。昼ごはんの時に、この後は翌朝まで部屋で休みたいと話し、夕食用の軽食を作ってもらって2階に上がる。明日の午前中、私が部屋から出てくるまで静かに休ませてほしいとお願いした。
小さなかばんを持って自分の部屋から夫婦の寝室へ、その後リンデルの部屋に入り、主のいない部屋を眺めた。あの机で執務の残りをブツブツ言いながらかたずけていた。
あのテーブルで向かい合って座ってお茶を飲んだ。あのベッドに押し倒されてキスをされた後・・・・「ここでは狭いね・・・」と抱き上げて夫婦の寝室に行って朝まで二人で過ごした。
ダメだ・・・。やっぱり領主館(ここ)で二人を見ながら3年も耐えられない。長い手紙を書くと涙が止まらなくなりそうなので、なるべく短く書き上げて夫婦の寝室のサイドテーブルに置いた。
護衛から一番遠いリンデルの部屋からそっと出て、あたりを見回して誰もいないのを確かめて1階に降りる。そっと玄関を開けて外に出てから領主館を振り返った。雨の音がすべてを消してくれる。傘をさして門に向かって歩き、門を出た後は列車の駅を目指した。
州都の駅は雨にも関わらず人が大勢いた。列車は王都の方に向かう南行きの路線とカナンの北東の隣の州へ向かう路線がある。
(ルビアーナは寒がりだから、暑がりの私と寝ると丁度いいね)
そう・・・私は寒いのが苦手。
だから敢えて北の方に向かうことにした。
あの人(リンデル)が私を探すようなことはないと思うけれど・・・・。
左の薬指にはめたままのシンプルな結婚指輪に触れる。
(貴方の傍にはいられないけれど、3年はあなたの妻でいさせてください・・・)
「他の使用人の皆は休みを取っているでしょうけど、ロバート、あなたが休みを取っているのを見たことがないわ」
私の言葉に無言になってしまうロバート
「この前娘さんのところにお孫さんが生まれたといっていたでしょう?同じカナンだけど州都ではないから直ぐに会いに行くのは難しいって」
それからニッコリして続けた。
「最低限の人数がいてくれればいいわ、リンデルが今王都にいることは仕事関係の方はご存じだし、アンジェラ様もいないしね」二人の名前を出すと、チクッと胸が痛んだ・・・。
その後もロバートは色々言ってきたけれど、人がいない静かな領主館でゆっくり休みたいのだと押し切るように頼んだら、渋々納得してくれた。
料理人と護衛と庭師、交代で休みが取れる最少人数の人たちを残して、使用人たちは翌日の朝から休みを取った。ロバートも朝から出かけるように促したので、お昼の領主館は静かだった。護衛の人には私の隣の部屋で待機してくれるように話した。昼ごはんの時に、この後は翌朝まで部屋で休みたいと話し、夕食用の軽食を作ってもらって2階に上がる。明日の午前中、私が部屋から出てくるまで静かに休ませてほしいとお願いした。
小さなかばんを持って自分の部屋から夫婦の寝室へ、その後リンデルの部屋に入り、主のいない部屋を眺めた。あの机で執務の残りをブツブツ言いながらかたずけていた。
あのテーブルで向かい合って座ってお茶を飲んだ。あのベッドに押し倒されてキスをされた後・・・・「ここでは狭いね・・・」と抱き上げて夫婦の寝室に行って朝まで二人で過ごした。
ダメだ・・・。やっぱり領主館(ここ)で二人を見ながら3年も耐えられない。長い手紙を書くと涙が止まらなくなりそうなので、なるべく短く書き上げて夫婦の寝室のサイドテーブルに置いた。
護衛から一番遠いリンデルの部屋からそっと出て、あたりを見回して誰もいないのを確かめて1階に降りる。そっと玄関を開けて外に出てから領主館を振り返った。雨の音がすべてを消してくれる。傘をさして門に向かって歩き、門を出た後は列車の駅を目指した。
州都の駅は雨にも関わらず人が大勢いた。列車は王都の方に向かう南行きの路線とカナンの北東の隣の州へ向かう路線がある。
(ルビアーナは寒がりだから、暑がりの私と寝ると丁度いいね)
そう・・・私は寒いのが苦手。
だから敢えて北の方に向かうことにした。
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