王城のマリナイア

若島まつ

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四、新たな旅 - un nuovo viaggio -

 バルバリーゴの船を見送った後、イサ・アンナは船上で尋ねた。
「アルテミシア・リンド、まずそなたの居住地について話をしよう。何か要望はあるか」
「兵舎にでも置いてくだされば結構です。共同生活には慣れていますから」
「ふむ…」
 イサ・アンナは少し考えて、後ろにいる人物を振り返った。あの岩壁のような大男だ。
「どう思う、バルカ将軍」
 問われたサゲン・エメレンス・バルカ将軍は、アルテミシアを神妙な面持ちで眺めた。濃い栗色の眉の下、暗い青の混じった灰色の瞳は無感情を装っているが、アルテミシアは僅かな不信を感じ取った。素性も分からない者が女王に付いて宮廷へ入ろうというのだから従者の感情も無理はないが、いい気はしない。眉間に皺が寄るのをこらえた。
 サゲンは苦い顔で再び女王に向き直り、何か言いたそうに一度口を開きかけたが、やがて観念したのか、静かにため息をついた。
「客人としてしばらく置く程度ならば問題はないでしょうが…」
 またアルテミシアの方を見た。今度は品定めするように、上から下までじっくり眺めた。
 化粧っ気がなく、肌は船乗りらしく小麦色に焼け、白いシャツから覗く腕は細いがしなやかな筋肉が付いている。外からは胸はあまり目立たず、女性にしては背も高いから、女王の話に聞いた通り一見しては少年に見紛えた。その半面、ヘーゼルの瞳が髪と同じ赤みがかった金色のまつ毛によく映え、丸みを帯びたアーモンド型の目は温和そうに弧を描いている。鼻梁はやや狭く、鼻の先は微かに天を向いていて、マーガレットの花びらのような形の唇は卵型の顔にバランスよく配置されている。町で普通に暮らしていれば、評判の美人になっただろう。それだけに、なぜ船乗りの格好をしてむさくるしい船乗り男たちと生活していたのか、謎だ。正直、女王が厚待遇でこの女船乗りを迎えようとしているのには賛成できない。しかし、女王を諫めたところで聞く耳を持たないのは分かり切っている。サゲンは苛立ったが、表情には出さず、抑揚のない声で言った。
「…一応は婦人です。士気に影響すると困る」
 さすがに今度は感情を隠しきれず、アルテミシアは僅かに顔を赤くした。「一応は婦人」、「士気に影響する」とは、言い方が悪い。こういうときの癖で、鼻に皺を寄せた。
「そうだな。大事な外交官だ。もっと良い場所を用意しなければ…」
「陛下、お言葉ながら」
 アルテミシアは食い下がった。
「六年も海の上で船乗りたちと旅をしていましたし、女だからといって困ったことはありません。しかし、兵舎がだめというなら、どこか身の周りの世話を焼く者がいなくて、気兼ねなく勉学ができて体を動かせる場所を選んでください」
 それを聞いて、イサ・アンナは眉を開いた。心当たりがある。
「それならば」
 漆黒の瞳が少しいたずらっぽく輝いたのを、サゲンは見逃さなかった。嫌な予感がする。が、不敬にならぬようにと、溜め息を押し殺した。生来、忠実な男だ。
「ちょうどいい場所がある」
 船を降りると、港に馬が数頭用意されていた。驚いたことに、女王がいるというのに馬車が一台もない。アルテミシアが不思議に思っていると、イサ・アンナは従者の手も借りずにひらりと真っ白な美しい馬にまたがった。数人の従者たちもそれに続く。
 イサ・アンナは快適そうに馬を駆りはじめたが、アルテミシアは困り果てた。馬など生まれてこのかた乗ったことがない。
「バルカ将軍、新しい外交官どのを頼んだ」
 女王に気軽な様子で命じられ、サゲンは軽く頭を下げ、不承不承従った。
「くれぐれも丁重にな」
 と、イサ・アンナは念を押した。平素から気儘に振る舞ってはいるが、他人の心情には敏感な質だ。忠実で真面目一辺倒なこの男が何を考えているかぐらいは水の中を覗くように明解だ。だが、浜での思いがけない拾い物を無下にはさせない。サゲンに警告するような視線を向けた後、踵で馬を蹴り、出発した。
 アルテミシアは遠ざかって行くイサ・アンナと白馬の後姿を見送りながら、急に大きくなった不安と戦った。今日知り合ったばかりの、しかも自分のことを良く思っていない男と二人きりで取り残される不安と。やはりあのまま船に乗っていればよかっただろうか。しかし、動揺を悟られるのは嫌だ。
「それで、どうしたらいい?歩いて行ける距離なら…」
 馬に乗れないことを自分から告げるのもばかばかしかったので、平静を装って気軽に言うと、サゲンはアルテミシアを無感情に一瞥して遮った。
「歩けば明日までかかる」
 そう言ってさっさと彼女の荷を馬にくくりつけ、その巨躯から考えると意外なほど身軽な動作で大きな青毛の馬の後方に跨り、アルテミシアに手を差し出した。
「つかまれ。それからそこに左足をかけて、体を持ち上げろ」
「不本意ながら女王陛下の命令とあっては…ってことね。忠実でいらっしゃいますこと」
 アルテミシアは殊更美しい発音で嫌味ったらしく言った。いけ好かないバルカ将軍は無感情な瞳のまま手を差し出している。肩をすくめ、ささいな反抗を諦めた。言われた通り、サゲンの大きな手につかまり鐙に足をかけ、ひょいと体を持ち上げて、大きな身体の前に腰掛けた。馬のつやつやした黒い毛並みが息遣いに合わせてゆっくり動いている。馬の乗り心地は思ったより悪くないが、問題は場所だ。背中に触れそうな位置にムカつく男がいる。敵に背中を向けていると思うと、ひどく居心地悪く感じた。
「さすが、身軽だな」
 サゲンの声は低くニコリともしないので、どういう意図があるのか判断がつかない。言葉をそのまま受け取れば身のこなしを褒められているのだろうが、船上での態度を考えると素直にそう思えなかった。ひょっとしたら小馬鹿にされているのかもしれない。
「宮仕えの軍人よりはね」
 と、皮肉を言ってやった。
 青毛の馬がゆるやかなスピードで歩み始める頃には、女王と数名の従者たちは、ほとんど見えないほど遥か前方を疾駆していた。差は大きくなるばかりだ。
「歩いても変わらないんじゃない?」
 アルテミシアが背後の男を振り返ると、男は無表情のまま答えた。
「船とは違う。あまり疲れさせたくないのでな。それに、この馬――ティティは移ろう風景を眺めながら歩くのが好きなんだ。行き先はわかっている」
 荒々しい風貌のこの男から情緒深げな言葉が返ってきたので、アルテミシアは意外に思った。
「奥ゆかしいね」
「面白い言葉を使う」
 アルテミシアは、男の含み笑いを背中で聞いた。これには敵意はなさそうだ。
 前方に先発隊の姿が完全に見えなくなってから、二時間は経っただろうか。道中、行き交う人々が驚いた様子で振り返った。船乗り風の少年と王国の紋章を翻した大男が馬に同乗しているのでは、仕方ない。あまりに不釣り合いな光景だ。田畑を抜け、羊や牛が草を食む丘を抜け、イノイル城壁を目前にして、ピュッと強い風が吹いた。それまで頭を覆い隠していた麻布が飛ばされ、肩まで伸びた赤みがかった金色の髪がはらはらと風に吹かれた。
「拾ってこよう」
 サゲンがそう言って手綱を引いたが、アルテミシアは首を横に振った。
「いい。もう必要ないものだから」
 サゲンは不思議な気持ちで目の前の人物を眺めた。薄情なのか、物に頓着しない質(たち)なのか、よくわからない。前者であれば、ますます国王に仕えるには向いていない。ところが、次の一言で考えを変えた。
「…気遣いをありがとう、バルカ将軍」
 必死で寂しさを抑えているような声色だった。麻布を拾わないのも、彼女なりの決別の意思の表れかもしれない。素性は定かではないしまだ信用はできないが、この風変わりな新参者に少しだけ好感を持った。
「サゲン・エメレンスだ。」
「それって、両方とも名前?」
「一つ目はイノイルの古い言葉で作られた名だ」
「道理で耳慣れないわけだ」
「イノイルの旧家の者は、イノイルの古語で名を付けられる」
 サゲンはアルテミシアにそう教えてやった。
「それは、興味深い」
 馬がそれから一時間ほど歩いた後、ようやく城壁をくぐった。その中は、イノイルの首都、オアリスである。

 オアリスの中心地に差し掛かった時、大通りの正面奥に破風造りの風変わりな城郭が姿を現した。あれがシトー王家の居城であることは、イノイルの中心へ初めて足を踏み入れたアルテミシアの目にも明らかだ。しばらくの間、居心地の悪さも忘れて身を乗り出した。
「わあ」
黒い瓦屋根と所々に金の装飾が施された漆喰の壁の壮麗な建物で、東西に両翼を広げるような形をしている。その後方にはステンドグラスの丸窓が美しいクーポラの塔があり、こちらは大理石でできているように見えた。このような建物はどの国でもまったく見たことがないが、その一方で城郭を囲んでいる煉瓦造りの壁には、アルテミシアにも見慣れたアーチ型の門が取り付けられている。多文化が融合し、不思議に調和したその建造物は、宮殿のようにも要塞のようにも見えた。
「オアリス城だ。古くは五百年ほど前に建てられた小さな城塞だったが、オーレン王が即位した時に大々的に改修して今の城郭になった」
と、サゲンは目が城に釘付けになっているアルテミシアに教えてやった。
 書物やイノイルの船乗りたちの話では聞いていたが、やはり実際にイノイルの街並みを目の当たりにすると圧倒される。生まれ育ったルメオの小さな村とも、ルメオの首都であり学問の都であるユルクスとも、これまで渡り歩いてきたいくつもの港町とも、全てが違っていた。
 黒っぽい瓦屋根と漆喰の建物が多く立ち並ぶ中、ちらほらと二階や三階建ての石造りや木造の様々な建物が見受けられ、庶民も貴族も入り混じって生活している。商店が多く集まる地域は、様々な階級の人々でごった返し、足の踏み場もないようだった。通り抜けるのに時間がかかったから、アルテミシアはその間賑わいを楽しむことができた。露店で新鮮な魚を売る若い親子、色とりどりの野菜や果物を売る元気な老婆、時には怪しげな骨董品が並ぶ薄暗い店もあり、街全体が活気に満ちている。
 この国が他国とは違う異質な雰囲気を漂わせている理由の一つが、服装だ。男性の服は襟付きの羽織にシャツ、細身のズボン、ロングブーツと、他の国とさほど変わらないが、女性が着るドレスは大陸の他の国とはまったく趣が違っている。他国ではローブと胸当てを使うか、あるいは色の違うドレスを何枚か重ね着し、スカートに多少なりとも膨らみを持たせたドレスが一般的だが、イノイルの女性たちは貴賎に関係なく、一枚で着ることのできる、スカートの膨らみがないシンプルなドレスを好んでいるようだ。中には、スカートの横にスリットを入れて、下にズボンを履いている者もいる。アルテミシアにはとても機能的に見えた。
「あれ、すごくいいね」
「ドレスが?」
「うん」
 サゲンはわずかに首を傾げた。
「珍しいな。外国から来た者は地味すぎると言うが」
「活動的でいいと思う」
 サゲンの口からは小さく笑みが漏れた。前に同乗している女は、やはり風変わりだ。しかし、少なくとも服装に関する意見は同じのようだった。

 市街地を過ぎ、郊外まで来ると、前方に黒々とした森が迫ってきた。森に入った瞬間、匂いと温度が変わった。樹木と土の瑞々しい匂いが鼻腔を満たし、森の冷たい空気が顔を撫でた。六年間味わうことのなかった感覚だ。夕陽が木々の間から漏れて、よく整えられた馬の黒いたてがみをつやつやと照らした。
「街の城壁の中に森が?」
「敵に城壁を突破されたときの前線基地になる。オーレン王の設計だ」
「なるほど。地の利というわけ」
 とアルテミシアが言ったのは、市街地が戦闘状態になった時、市民を匿ったりゲリラ戦術を行ったりすることができるからだ。サゲンは僅かに驚いた。
「船乗りは陸戦には明るくないと思ったが」
「これでもユルクス大学を首席で卒業したんだよ。社交マナーや一般教養だけの女学生用の試験じゃなくて、十科目以上ある男子学生と同じ試験で」
 サゲンは目を見開いた。この人物は全てが見かけと違う。身元が確かでなくともこれを欲しがる女王の気持ちは少なくとも理解できる。
「ユルクスでは戦術も教えるのか」
「元将校でルメオの内乱期に内陸部の戦闘を指揮していた教授がいる」
 しかし、疑問は膨らむばかりだ。次の質問で核心を突いた。
「それで、ユルクス大学を首席で卒業したお嬢様が何故船乗りに?」
 アルテミシアは押し黙った。最後の質問はそれまでと声色が違い、敵意に似た響きがあったからだ。信用されていないのは分かっている。
「…これは尋問?それとも面接の類?」
 アルテミシアは冷静に話せるよう心掛けたが、苛立ちは隠しきれない。しかし、別段気に掛けることなく、サゲンは続けた。
「躾の厳しかった親への当てつけか」
「陛下ならまだしも、あんたに答える義理はない」
「親の決めた相手が気に入らなかった?」
 アルテミシアはカッとなった。実のところ、それもある意味で理由のひとつだからだ。しかし、今日会ったばかりの男にそんな質問を許すほど寛容ではない。鼻に皺を寄せたまま、後ろを振り返った。
「なんだ。図星か、お嬢様」
「最初は寡黙な軍人なのかと思ってたけど、女みたいにおしゃべりだね」
 アルテミシアは辛辣に嫌味を言ってやったつもりだったが、当の本人は気にせず、おかしそうに薄っすらと笑みを浮かべている。
「気に障ったか」
「ええ、気に障った。それから、次わたしのことをお嬢様って呼んだら顔面に一発喰らわせてやるから。バルカ将軍・・・・・
 アルテミシアのヘーゼル色の瞳が薄い緑や所々濃い茶色を含んで複雑な色に光り、剣呑な翳りを見せた。一見温和そうな貌をしていると思ったが、こうしてみるとずいぶん印象が変わる。危なっかしい小型の野生動物のようだった。
 あからさまな敵意を持って睨みつけられたというのに、サゲンはこの風変わりな女に興味が沸いた。剛直さは、サゲンが自分の軍の兵士に一番に求めるもののひとつだ。

 森へ入ってから三十分ほどで、その建物は現れた。木々の中の広く開けた場所に建つ、イノイル独特の黒い瓦屋根の建物だった。が、オアリス城のように漆喰ではなく黒っぽい石造りの平屋建てで、母屋はかなり広い。壮麗な神殿のようにも小さな要塞にも見えた。門はなく、篝火台の高い柱が広大な敷地を囲むようにいくつも設けられている。アルテミシアは、大きな平屋の周囲に、渡り廊下で母屋と繋がったいくつかの大小の建物があるのを見つけた。そのひとつひとつが厩や武器庫、食糧庫などになっていて、そのうちの一際大きな木造の小屋には、外に竈のようなものと煙突が備え付けられている。
 それを見た途端、アルテミシアの心は躍った。実家を思い出すとき、ただひとつ恋しく思っていたものだ。
「お風呂がある」
 サゲンは目を見張った。先ほどまでサゲンの無神経さにひどくへそを曲げていたのに、今は風呂を見つけて声を弾ませている。その変わり身の早さにおかしくなった。
「いい屋敷だね。すごく気に入った」
 質実剛健をそのまま体現したような建築に、必要以上に手を加えられず自由気ままに生い茂る木々、離れに設えられた木造りの浴室――ここの家主とは気が合いそうだ。
「入りたければ用意させる」
 とサゲンが言ったから、アルテミシアは飛び上がらんばかりに喜んで声を上げた。しかし、その前にこの趣味のいい屋敷の主人に挨拶をしておかなければならない。
「屋敷のご主人は?」
(まったく…)
 サゲンは静かにため息をついた。
(陛下もお人が悪い)
「俺だ」
 アルテミシアは背後を振り返って首を傾げた。
「えっ」
 自分でも頓狂な声だと思った。
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