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【番外編2-4】バルカ夫妻のせわしない日々 あるいはエーデルワイスの来た道 Ⅳ
晴天の日、姉妹を乗せた軍船がティグラ港を西エマンシュナへ向けて出航した。
大型のキャラック船を選んだのは、指揮官でもあるサゲンが若手の航行訓練を兼ねているからだ。イグリとゴランを含むベテラン数名に海軍の新人五十名、医療班の八名に加え、姉妹の付き添いという名目でエラも同行を許され、外交役であるアルテミシアの助手としてノイチも研修を兼ねて随行している。
既にエマンシュナ王府へはイサ・アンナの署名入りでイノイル王府関係者の渡航と姉妹の帰郷の連絡をしており、姉妹の故郷にいる縁者にも誘拐され行方不明だった彼女たちが帰国する旨を知らせている。姉妹の年老いた伯母は姪たちが生きていたことに大いに喜び、早く会いたいという手紙を送ってきていた。
本来であれば人身売買の被害に遭った者の帰郷にわざわざ女王が関与することはないが、今回は複数の国が関わる特殊な事例だ。
エマンシュナの海域を根城にしていた海賊が複数の国で犯罪行為を行い、それをイサ・アンナ女王の任命によりバルカ将軍率いるイノイル海軍が主導して、エマンシュナ海軍‘ナヴァレ’の協力のもと鎮圧し、なおかつエマンシュナ人を含む被害者の奪還と帰郷に成功したという事情がある。
そのため、女王としてはエマンシュナ国王に売っておけるだけの恩を売っておきたいという心算があるのだ。
姉妹の状態は、あまり良くない。帰郷できることを喜んではいるものの、船に乗ること自体が彼女たちの傷を開くためだ。そのためエラは最上層のデッキに彼女たちを連れ出して、できるだけ狭い船室へは行かせないようにした。食事を取るのも、外のデッキだ。風に当たると心が多少落ち着きを取り戻すらしかった。
外の空気を欲しがるのは姉妹だけではない。遠距離の航行に不慣れな新人が多いから、船酔いで体調を崩す者が続出した。
無論、サゲンはこのことを想定済みだ。そのために医療班の看護師と軍医を普段より多く同船させている。
その中には、サゲンの肩の手当てをしていた若い看護助手の姿もある。
アルテミシアは舳先に座って集まってくるカモメに手のひらから餌を与えながら、若い海兵の介抱をする看護助手を無意識のうちに目で追っていた。
なんだかやっぱりサゲンの方をちらちら見ている気がする。サゲンが近くを通り掛かるたびにそちらを向き、なんとか目を合わせようとして、仕舞いには船酔いの海兵に与えようとしていた薬湯をこぼしていた。
「ミーシャ」
とノイチに声をかけられ、アルテミシアはハッと我に返った。
(いけない。任務中だった)
部下もいるのだから、気を引き締めなければならないところだ。
「はは。鳥使いみたいですね」
ドレスの軍装で海風に髪を乱しながら無数のカモメに囲まれている姿は、なるほど異様だ。
アルテミシアはノイチの言葉であの看護助手にカモメをけしかける場面を想像したが、ぎゅっと目を閉じてその妄想を振り払い、舳先からデッキへぴょんと降りてスカートの裾を払った。
「ああ、ミーシャ。羽がついています」
ノイチがアルテミシアの頭から先が黒くなっている灰色の羽を取り、目を細めた。
「ありがと」
「頼まれていた書類、用意してきたので目を通してください」
ノイチが筒状に巻いて持ってきたのは、エマンシュナへの出航が決まってからアルテミシアがノイチに集めるよう指示していた事前情報と必要書類だ。
彼らは西エマンシュナ北部のルドヴァン領内にあるロショルー港に正式な手続きを経て入港した後、姉妹と十名ほどの代表者で陸路をしばらく南下してダランテス領へ入り、その領主邸で正式な手続きを行う必要がある。その際に必要なのが、姉妹が海賊討伐で保護された対象であること、外見の特徴や言語の訛り、これまで保護されていた場所などが記されているイノイル王府の公式な書面や、領内に立ち入る軍関係者のリストなどだ。更に、姉妹の今後の生活に支障が出ないよう、円滑な交渉で正確な手続きを行う必要があるから、ダランテス領主の為人を知るための資料も、アルテミシアは外交役として必要としていた。
ノイチはアルテミシアが女王のそばで通常の職務に忙しくしている間、塔にあるアルテミシアの執務室でこの作業に没頭していた。おかげで、特に興味もないダランテス領主である中年男性の経歴や家柄に、この船に乗る誰よりも詳しくなった自信がある。
「ルドヴァン領でも手続きがありますけど、こっちの情報は不要なんですか?」
「ルドヴァン領主夫妻のことはよく知ってるから大丈夫」
アルテミシアはニヤリとして言った。ルドヴァン領主――アルテミシアの恩師‘アリアネ先生’こと、イオネ・アリアーヌ・コルネールの夫アルヴィーゼ・コルネール公爵には、既にサゲンから話をつけてあるから、手続きは容易に終わるだろう。彼らとは定期的に私信や私的ではない情報のやり取りを行う仲だ。
アルテミシアはパラパラと書類をめくって目を通し、二箇所を指でさした。
「概ね問題ないけど、…ここと、ここ。綴り字記号落としてる」
「ああ、本当ですね。こんなに早く気付くなんて、さすがです」
言いながらノイチはジャケットのポケットから小さな木箱を出して携帯用のペンとインクの瓶を取り出し、ペン先にインクをチョンチョンつけてアルテミシアに差し出した。
「すごい。用意周到」
と、アルテミシアがペンを受け取る時、ノイチの手に爪がぶつかってしまった。
「ごめん」
引っ掻いていないか心配でそう言ったが、ノイチの顔を見ると、頬から耳にかけてみるみる赤くなっていく。
「…いえ、大丈夫です。僕こそすみません。…あの、綴りを間違えてしまって」
これか。
とアルテミシアは思った。恋の対象に獣のような視線を向けない例だ。
不覚にも可愛いと思ってしまった。深い意味はない。まるで思春期の少年のようだったからというだけのことだ。
ともあれ、部下とは適正な距離を保たなければならない、というサゲンの言葉が現実的な重みを持った瞬間だった。
この夜、アルテミシアはサゲンの船室を訪れた。甲板に打ち付けて固定された寝台と机と椅子があり、床は厚めの敷物で覆われていて、軍船の中にしては快適な部屋だ。サゲンはオイルランプの灯りで海図を広げ、その大きな身体には不釣り合いな小さい椅子に座っていた。
「姉妹に本を読んでいたんじゃなかったのか?」
サゲンは柔らかく笑って妻を迎え入れた。
「さっき二人とも寝ちゃったよ。エラがついていてくれたおかげで、落ち着いたみたい。実はあなたの署名が必要な書類があって、持ってきた」
アルテミシアが手に持っていた筒状の書簡をひらりと見せると、サゲンは笑みを消した。
「仕事の用事か」
「だめだった?」
「そうだな。もっと、個人的な用で来てくれてもいいんだぞ」
「おやすみのキスとか?」
「そうだな。それで終われば」
ふ、とアルテミシアは笑った。
「さすがにだめでしょう。任務だし、若手の訓練なんだから」
「そうだな」
サゲンは苦笑してアルテミシアから書簡を受け取り、机の上に広げて内容をざっと見ると、ペンを取ってささっとサインをした。そのままサゲンは書簡を返さずにちょいちょいと手招きし、近付いてきたアルテミシアの腰に腕を回して、その身体を抱き締めた。
「…ちょっと休暇を取らないか」
「これが終わったら?」
アルテミシアがサゲンの波打つ短い髪をわしゃわしゃと弄んで言った。
「ああ。君の妹か弟がそろそろ生まれるだろう。最近は働きづめだし、トーレへ遊びに行くのも良いんじゃないかと思っている。まあ、長く取れて二週間だろうが」
サゲンがそう言った通り、ルメオ共和国トーレ地方に暮らすアルテミシアの両親から、子供ができたと数か月前に手紙が届いたのだ。アルテミシアは手紙を読んだその場で跳びあがり、踊り出して喜んだ。何しろずっと家族とは縁が遠い生活を送っていたのだ。誰かの姉になれるのも嬉しいし、長らく離ればなれだった両親が、ようやく親としてその手で共に子を育てられる喜びを得られることも、言葉では尽くせないほど嬉しく思う。が、一方で母の身体をひどく案じてもいる。
両親とは少なくとも月に一度は手紙のやり取りをしているが、最近の手紙によればどうも双子を妊娠しているらしいのだ。医師である父ジュードの見立てだから、まず間違いないだろう。出産の経験があるとは言え、母マルグレーテはもう四十をとうに超えているから、このお産にはかなりの危険が伴うことになる。その上、計算では生まれるまであと数週間もない。
だから、サゲンの提案はアルテミシアにとってこの上なく魅力的だった。
「嬉しい!…けど――」
アルテミシアは笑顔を消して肩を落とした。
「オアリスに帰ったらまた今回の事後処理とか新しい仕事とかで、休む間もないくらい忙しくなるよ。あんまり現実的じゃないな」
サゲンがアルテミシアの頬に触れようと手を伸ばした時、扉を叩く音がした。サゲンは立ち上がってアルテミシアを今まで自分が座っていた木の椅子に座らせ、扉を開けた。
アルテミシアの座る場所から、突然の訪問客の顔が見えた。軍の白いドレスに身を包んだ、例の看護助手だ。
アルテミシアはなんとなく鼻の頭を指でぐりぐり押し、それとなく戸口を挟んで向かい合うサゲンと看護助手の様子を観察した。茶を持ってきたと言う彼女に対し、サゲンの対応はなかなか冷淡だった。
「配慮はありがたいが、司令官だからといって俺に特別な対応をする必要はない。本来の職務に集中してもらうためにも、今後はこういうことは一切必要ない」
(おお)
とアルテミシアが思ったのは、看護助手の流した涙にもサゲンが全く心を動かされなかったことだ。引き取るように告げたサゲンの向かい側から、看護助手がアルテミシアへと視線を向けた。この視線に敵意と嫉妬が込められていることは、疑いようがない。
「あの人はどうしていいんですか。通詞の方ですよね」
と気丈にも司令官に反論する声がはっきりと聞こえた。
「彼女は妻だ。他に質問は?」
サゲンが抑揚のない声で言うと、看護助手は茶を持ったまま黙ってその場を去った。
「…こういうことは、初めてじゃなさそうですね。上官」
アルテミシアが部下のような口調で詰ると、サゲンは苦々しげに振り返った。無言の肯定だ。
「結婚指輪もしてるのに、構わない人が多いのかな」
「心配か?」
「心配してないよ。ただ――」
アルテミシアがむくれている。サゲンは口元が緩むのを我慢しながら、神妙な顔でその先を促した。
「さすがに目の前で他の女に夜這いを仕掛けられたのは不愉快だった」
「名前でも書いておくか?‘これはアルテミシア・ジュディットの夫です’と」
サゲンが自分の腕を指差して言ったので、そこにおかしな刺青を彫るサゲンをちょっと想像してしまった。アルテミシアはおかしくなって笑い声を上げ、椅子の背後へ回って抱きしめてきた夫の腕に頭を預けた。
「一緒に寝ていい?…あ。服を着たまま、寝るだけ」
「ああ。一緒に寝よう」
サゲンはアルテミシアの頬にキスをして、やわらかく笑った。
朝、バルカ将軍のもとへ署名をもらいに行ったきり姿の見えないアルテミシアを探して、ノイチが司令室の前をうろうろしていた。そろそろ朝食だからと呼びに来たものの、万が一にも司令室の中で何か――夫婦らしい何かが起きていたらと思うと、どうも戸を叩く気になれない。
「助手どの、入っていい」
と部屋の中から低い声が聞こえたので、ノイチは驚いて跳び上がりそうになった。
(な、なんで僕ってわかったんだろう…)
「足音でわかる」
「はっ、はい」
バルカ将軍は心を読むこともできるのだろうかとドキドキしながら、ノイチは扉に手をかけた。
扉を開けて目に飛び込んできたのは、予想よりも遙かに健全で、それなのに胸が痛む光景だった。
狭い寝台の上にサゲンが胡座をかいて本を読み、その膝にアルテミシアが頭を預けて寝息を立てている。ノイチはこれほど無防備に深く寝入っている上司の姿を見たことがない。激務の間に執務室のソファで仮眠していたことは何度かあるが、その時とは全く別だ。寝顔に幸福と安らぎが溢れている。
「朝食か」
「あ、はい。呼びに来たのですが…お疲れのようですね」
「ああ。悪いがもう少し寝かせてやってくれ。夜中に担当の操舵手が体調を崩して、二時間前まで彼女が代わりに操舵していたんだ」
「え、ミーシャがですか?」
「自分に代わらせろとせがまれてな。船乗りの血が騒ぐらしい」
サゲンはアルテミシアの髪をそっと撫でた。アルテミシアが小さく唸り、ごろりと寝返りを打ってサゲンの方へ顔を向けた。
バルカ将軍の優しい笑みも、初めて見る。ノイチは口を開けたまま一瞬沈黙し、小さく頷いた。
「では、みなさんにお二人は朝食を遅れて摂ると伝えてきます」
「頼む」
ノイチはサゲンに向かって頭を下げ、くるりと背を向け扉を閉めようとして、もう一度サゲンに向き直った。
「あの、バルカ将軍。僕、ミーシャのことを尊敬してます。若いのに経験豊富だし、女王陛下に信頼されていて、何て言うか、本当に憧れなんです。あなたのような人と肩を並べられることも、すごいです。いつかあんな風になりたいと思っています。僕、仕事で彼女に認められるように頑張ります」
「ああ」
サゲンはノイチに向かって目を細めた。
顔を明るくしたノイチが頭をもう一度下げて辞去しようとしたとき、サゲンが呼び止めた。
「ノイチ・イアロ、君に頼みがある」
アルテミシアが目を覚ましたのは、それから小半時ほど経った頃合いのことだった。
髪を弄ぶサゲンの指がくすぐったい。小さく唸ってサゲンの指に自分の指を絡めると、サゲンの温かい手が頬に触れた。
アルテミシアはサゲンの膝からのろのろ起き上がり、欠伸をしながら訊ねた。
「さっきノイチ来てた?声が聞こえたような気がする」
「ああ。あいつはしっかりしているな。いいやつだ。大事にしてやれ」
「何話したの?」
「秘密だ」
「なにそれ」
アルテミシアは苦笑した。いつの間にそれほど仲良くなったのか謎だが、サゲンがなんだか機嫌良さげなので気にしないことにした。
航海は概ね順調だ。特に大きな時化もなく、天候も穏やかな日が続いているから、最短の日数で到達できる見込みだった。
が、航海三日目の早朝、風が出始めた。
船乗りだったアルテミシアや海軍のベテランは言うまでもなく、そこそこの経験がある者であればこの程度の風と揺れには慣れっこだが、まだ入隊して一年も経っていない新人には堪える。
サゲンは新人の操舵手の補佐をゴランに任せ、自分はその他の者たちの指揮に回った。
このとき船が緊張感に包まれたのは、風だけが理由ではない。強風で予定の航路を少々外れて航行していたときに、大砲を積んだ武装船が近付いてきたのだ。
物見の情報では国旗がなく、真っ黒に染め抜いた無地の帆が張られた二本マストの中型の船で、船員は軍装ではないらしい。が、櫓から見える者はみな帯剣している。
サゲンは兵士たちにいつでも戦闘態勢に入れるよう短く指示を出した。突然の砲撃に備えて反撃のための砲弾と矢を準備させ、看護師と軍医には船酔いが酷く使い物にならない者を下のデッキへ降ろさせ、エラには姉妹を連れて下のデッキへ降りるよう命じて、船首にアルテミシアを呼んだ。
「どう見る」
「雰囲気は海賊じゃないと思うけど、どの国にも属してない島の自警団とかだと少し厄介かもね。そういう人たちは警戒心が強いから」
サゲンは小さく顎を引いて、アルテミシアの肩を叩いた。
「行けるか」
「もちろん。バルカの出番だよ、バルカ将軍」
「バルカ夫人もな」
サゲンは唇を吊り上げた。
渉外担当のアルテミシアがまずボートで相手方の船に接近し、代表者と話し合いをする必要がある。
「ノイチも行く?」
と、アルテミシアは助手に声を掛けた。敵意を持っていないとも限らない武装した相手の元へ接近するというのに、まるで買い物にでも誘うような気軽さだ。
正直、恐怖はある。ノイチは躊躇ったが、それも一瞬だった。これほど面白い現場を目の前で見られる機会はなかなかないだろう。後学にもなる。
「行きます」
サゲンは、ボートには乗らない。何かあればすぐに陣頭指揮を執れるよう、母船で待つ。
「用心しろ」
上官らしく言って、サゲンは大型の帆船から比べればまるでおもちゃが海に浮かんでいるようなボートに飛び降りたアルテミシアとイグリとノイチを見送った。
大型のキャラック船を選んだのは、指揮官でもあるサゲンが若手の航行訓練を兼ねているからだ。イグリとゴランを含むベテラン数名に海軍の新人五十名、医療班の八名に加え、姉妹の付き添いという名目でエラも同行を許され、外交役であるアルテミシアの助手としてノイチも研修を兼ねて随行している。
既にエマンシュナ王府へはイサ・アンナの署名入りでイノイル王府関係者の渡航と姉妹の帰郷の連絡をしており、姉妹の故郷にいる縁者にも誘拐され行方不明だった彼女たちが帰国する旨を知らせている。姉妹の年老いた伯母は姪たちが生きていたことに大いに喜び、早く会いたいという手紙を送ってきていた。
本来であれば人身売買の被害に遭った者の帰郷にわざわざ女王が関与することはないが、今回は複数の国が関わる特殊な事例だ。
エマンシュナの海域を根城にしていた海賊が複数の国で犯罪行為を行い、それをイサ・アンナ女王の任命によりバルカ将軍率いるイノイル海軍が主導して、エマンシュナ海軍‘ナヴァレ’の協力のもと鎮圧し、なおかつエマンシュナ人を含む被害者の奪還と帰郷に成功したという事情がある。
そのため、女王としてはエマンシュナ国王に売っておけるだけの恩を売っておきたいという心算があるのだ。
姉妹の状態は、あまり良くない。帰郷できることを喜んではいるものの、船に乗ること自体が彼女たちの傷を開くためだ。そのためエラは最上層のデッキに彼女たちを連れ出して、できるだけ狭い船室へは行かせないようにした。食事を取るのも、外のデッキだ。風に当たると心が多少落ち着きを取り戻すらしかった。
外の空気を欲しがるのは姉妹だけではない。遠距離の航行に不慣れな新人が多いから、船酔いで体調を崩す者が続出した。
無論、サゲンはこのことを想定済みだ。そのために医療班の看護師と軍医を普段より多く同船させている。
その中には、サゲンの肩の手当てをしていた若い看護助手の姿もある。
アルテミシアは舳先に座って集まってくるカモメに手のひらから餌を与えながら、若い海兵の介抱をする看護助手を無意識のうちに目で追っていた。
なんだかやっぱりサゲンの方をちらちら見ている気がする。サゲンが近くを通り掛かるたびにそちらを向き、なんとか目を合わせようとして、仕舞いには船酔いの海兵に与えようとしていた薬湯をこぼしていた。
「ミーシャ」
とノイチに声をかけられ、アルテミシアはハッと我に返った。
(いけない。任務中だった)
部下もいるのだから、気を引き締めなければならないところだ。
「はは。鳥使いみたいですね」
ドレスの軍装で海風に髪を乱しながら無数のカモメに囲まれている姿は、なるほど異様だ。
アルテミシアはノイチの言葉であの看護助手にカモメをけしかける場面を想像したが、ぎゅっと目を閉じてその妄想を振り払い、舳先からデッキへぴょんと降りてスカートの裾を払った。
「ああ、ミーシャ。羽がついています」
ノイチがアルテミシアの頭から先が黒くなっている灰色の羽を取り、目を細めた。
「ありがと」
「頼まれていた書類、用意してきたので目を通してください」
ノイチが筒状に巻いて持ってきたのは、エマンシュナへの出航が決まってからアルテミシアがノイチに集めるよう指示していた事前情報と必要書類だ。
彼らは西エマンシュナ北部のルドヴァン領内にあるロショルー港に正式な手続きを経て入港した後、姉妹と十名ほどの代表者で陸路をしばらく南下してダランテス領へ入り、その領主邸で正式な手続きを行う必要がある。その際に必要なのが、姉妹が海賊討伐で保護された対象であること、外見の特徴や言語の訛り、これまで保護されていた場所などが記されているイノイル王府の公式な書面や、領内に立ち入る軍関係者のリストなどだ。更に、姉妹の今後の生活に支障が出ないよう、円滑な交渉で正確な手続きを行う必要があるから、ダランテス領主の為人を知るための資料も、アルテミシアは外交役として必要としていた。
ノイチはアルテミシアが女王のそばで通常の職務に忙しくしている間、塔にあるアルテミシアの執務室でこの作業に没頭していた。おかげで、特に興味もないダランテス領主である中年男性の経歴や家柄に、この船に乗る誰よりも詳しくなった自信がある。
「ルドヴァン領でも手続きがありますけど、こっちの情報は不要なんですか?」
「ルドヴァン領主夫妻のことはよく知ってるから大丈夫」
アルテミシアはニヤリとして言った。ルドヴァン領主――アルテミシアの恩師‘アリアネ先生’こと、イオネ・アリアーヌ・コルネールの夫アルヴィーゼ・コルネール公爵には、既にサゲンから話をつけてあるから、手続きは容易に終わるだろう。彼らとは定期的に私信や私的ではない情報のやり取りを行う仲だ。
アルテミシアはパラパラと書類をめくって目を通し、二箇所を指でさした。
「概ね問題ないけど、…ここと、ここ。綴り字記号落としてる」
「ああ、本当ですね。こんなに早く気付くなんて、さすがです」
言いながらノイチはジャケットのポケットから小さな木箱を出して携帯用のペンとインクの瓶を取り出し、ペン先にインクをチョンチョンつけてアルテミシアに差し出した。
「すごい。用意周到」
と、アルテミシアがペンを受け取る時、ノイチの手に爪がぶつかってしまった。
「ごめん」
引っ掻いていないか心配でそう言ったが、ノイチの顔を見ると、頬から耳にかけてみるみる赤くなっていく。
「…いえ、大丈夫です。僕こそすみません。…あの、綴りを間違えてしまって」
これか。
とアルテミシアは思った。恋の対象に獣のような視線を向けない例だ。
不覚にも可愛いと思ってしまった。深い意味はない。まるで思春期の少年のようだったからというだけのことだ。
ともあれ、部下とは適正な距離を保たなければならない、というサゲンの言葉が現実的な重みを持った瞬間だった。
この夜、アルテミシアはサゲンの船室を訪れた。甲板に打ち付けて固定された寝台と机と椅子があり、床は厚めの敷物で覆われていて、軍船の中にしては快適な部屋だ。サゲンはオイルランプの灯りで海図を広げ、その大きな身体には不釣り合いな小さい椅子に座っていた。
「姉妹に本を読んでいたんじゃなかったのか?」
サゲンは柔らかく笑って妻を迎え入れた。
「さっき二人とも寝ちゃったよ。エラがついていてくれたおかげで、落ち着いたみたい。実はあなたの署名が必要な書類があって、持ってきた」
アルテミシアが手に持っていた筒状の書簡をひらりと見せると、サゲンは笑みを消した。
「仕事の用事か」
「だめだった?」
「そうだな。もっと、個人的な用で来てくれてもいいんだぞ」
「おやすみのキスとか?」
「そうだな。それで終われば」
ふ、とアルテミシアは笑った。
「さすがにだめでしょう。任務だし、若手の訓練なんだから」
「そうだな」
サゲンは苦笑してアルテミシアから書簡を受け取り、机の上に広げて内容をざっと見ると、ペンを取ってささっとサインをした。そのままサゲンは書簡を返さずにちょいちょいと手招きし、近付いてきたアルテミシアの腰に腕を回して、その身体を抱き締めた。
「…ちょっと休暇を取らないか」
「これが終わったら?」
アルテミシアがサゲンの波打つ短い髪をわしゃわしゃと弄んで言った。
「ああ。君の妹か弟がそろそろ生まれるだろう。最近は働きづめだし、トーレへ遊びに行くのも良いんじゃないかと思っている。まあ、長く取れて二週間だろうが」
サゲンがそう言った通り、ルメオ共和国トーレ地方に暮らすアルテミシアの両親から、子供ができたと数か月前に手紙が届いたのだ。アルテミシアは手紙を読んだその場で跳びあがり、踊り出して喜んだ。何しろずっと家族とは縁が遠い生活を送っていたのだ。誰かの姉になれるのも嬉しいし、長らく離ればなれだった両親が、ようやく親としてその手で共に子を育てられる喜びを得られることも、言葉では尽くせないほど嬉しく思う。が、一方で母の身体をひどく案じてもいる。
両親とは少なくとも月に一度は手紙のやり取りをしているが、最近の手紙によればどうも双子を妊娠しているらしいのだ。医師である父ジュードの見立てだから、まず間違いないだろう。出産の経験があるとは言え、母マルグレーテはもう四十をとうに超えているから、このお産にはかなりの危険が伴うことになる。その上、計算では生まれるまであと数週間もない。
だから、サゲンの提案はアルテミシアにとってこの上なく魅力的だった。
「嬉しい!…けど――」
アルテミシアは笑顔を消して肩を落とした。
「オアリスに帰ったらまた今回の事後処理とか新しい仕事とかで、休む間もないくらい忙しくなるよ。あんまり現実的じゃないな」
サゲンがアルテミシアの頬に触れようと手を伸ばした時、扉を叩く音がした。サゲンは立ち上がってアルテミシアを今まで自分が座っていた木の椅子に座らせ、扉を開けた。
アルテミシアの座る場所から、突然の訪問客の顔が見えた。軍の白いドレスに身を包んだ、例の看護助手だ。
アルテミシアはなんとなく鼻の頭を指でぐりぐり押し、それとなく戸口を挟んで向かい合うサゲンと看護助手の様子を観察した。茶を持ってきたと言う彼女に対し、サゲンの対応はなかなか冷淡だった。
「配慮はありがたいが、司令官だからといって俺に特別な対応をする必要はない。本来の職務に集中してもらうためにも、今後はこういうことは一切必要ない」
(おお)
とアルテミシアが思ったのは、看護助手の流した涙にもサゲンが全く心を動かされなかったことだ。引き取るように告げたサゲンの向かい側から、看護助手がアルテミシアへと視線を向けた。この視線に敵意と嫉妬が込められていることは、疑いようがない。
「あの人はどうしていいんですか。通詞の方ですよね」
と気丈にも司令官に反論する声がはっきりと聞こえた。
「彼女は妻だ。他に質問は?」
サゲンが抑揚のない声で言うと、看護助手は茶を持ったまま黙ってその場を去った。
「…こういうことは、初めてじゃなさそうですね。上官」
アルテミシアが部下のような口調で詰ると、サゲンは苦々しげに振り返った。無言の肯定だ。
「結婚指輪もしてるのに、構わない人が多いのかな」
「心配か?」
「心配してないよ。ただ――」
アルテミシアがむくれている。サゲンは口元が緩むのを我慢しながら、神妙な顔でその先を促した。
「さすがに目の前で他の女に夜這いを仕掛けられたのは不愉快だった」
「名前でも書いておくか?‘これはアルテミシア・ジュディットの夫です’と」
サゲンが自分の腕を指差して言ったので、そこにおかしな刺青を彫るサゲンをちょっと想像してしまった。アルテミシアはおかしくなって笑い声を上げ、椅子の背後へ回って抱きしめてきた夫の腕に頭を預けた。
「一緒に寝ていい?…あ。服を着たまま、寝るだけ」
「ああ。一緒に寝よう」
サゲンはアルテミシアの頬にキスをして、やわらかく笑った。
朝、バルカ将軍のもとへ署名をもらいに行ったきり姿の見えないアルテミシアを探して、ノイチが司令室の前をうろうろしていた。そろそろ朝食だからと呼びに来たものの、万が一にも司令室の中で何か――夫婦らしい何かが起きていたらと思うと、どうも戸を叩く気になれない。
「助手どの、入っていい」
と部屋の中から低い声が聞こえたので、ノイチは驚いて跳び上がりそうになった。
(な、なんで僕ってわかったんだろう…)
「足音でわかる」
「はっ、はい」
バルカ将軍は心を読むこともできるのだろうかとドキドキしながら、ノイチは扉に手をかけた。
扉を開けて目に飛び込んできたのは、予想よりも遙かに健全で、それなのに胸が痛む光景だった。
狭い寝台の上にサゲンが胡座をかいて本を読み、その膝にアルテミシアが頭を預けて寝息を立てている。ノイチはこれほど無防備に深く寝入っている上司の姿を見たことがない。激務の間に執務室のソファで仮眠していたことは何度かあるが、その時とは全く別だ。寝顔に幸福と安らぎが溢れている。
「朝食か」
「あ、はい。呼びに来たのですが…お疲れのようですね」
「ああ。悪いがもう少し寝かせてやってくれ。夜中に担当の操舵手が体調を崩して、二時間前まで彼女が代わりに操舵していたんだ」
「え、ミーシャがですか?」
「自分に代わらせろとせがまれてな。船乗りの血が騒ぐらしい」
サゲンはアルテミシアの髪をそっと撫でた。アルテミシアが小さく唸り、ごろりと寝返りを打ってサゲンの方へ顔を向けた。
バルカ将軍の優しい笑みも、初めて見る。ノイチは口を開けたまま一瞬沈黙し、小さく頷いた。
「では、みなさんにお二人は朝食を遅れて摂ると伝えてきます」
「頼む」
ノイチはサゲンに向かって頭を下げ、くるりと背を向け扉を閉めようとして、もう一度サゲンに向き直った。
「あの、バルカ将軍。僕、ミーシャのことを尊敬してます。若いのに経験豊富だし、女王陛下に信頼されていて、何て言うか、本当に憧れなんです。あなたのような人と肩を並べられることも、すごいです。いつかあんな風になりたいと思っています。僕、仕事で彼女に認められるように頑張ります」
「ああ」
サゲンはノイチに向かって目を細めた。
顔を明るくしたノイチが頭をもう一度下げて辞去しようとしたとき、サゲンが呼び止めた。
「ノイチ・イアロ、君に頼みがある」
アルテミシアが目を覚ましたのは、それから小半時ほど経った頃合いのことだった。
髪を弄ぶサゲンの指がくすぐったい。小さく唸ってサゲンの指に自分の指を絡めると、サゲンの温かい手が頬に触れた。
アルテミシアはサゲンの膝からのろのろ起き上がり、欠伸をしながら訊ねた。
「さっきノイチ来てた?声が聞こえたような気がする」
「ああ。あいつはしっかりしているな。いいやつだ。大事にしてやれ」
「何話したの?」
「秘密だ」
「なにそれ」
アルテミシアは苦笑した。いつの間にそれほど仲良くなったのか謎だが、サゲンがなんだか機嫌良さげなので気にしないことにした。
航海は概ね順調だ。特に大きな時化もなく、天候も穏やかな日が続いているから、最短の日数で到達できる見込みだった。
が、航海三日目の早朝、風が出始めた。
船乗りだったアルテミシアや海軍のベテランは言うまでもなく、そこそこの経験がある者であればこの程度の風と揺れには慣れっこだが、まだ入隊して一年も経っていない新人には堪える。
サゲンは新人の操舵手の補佐をゴランに任せ、自分はその他の者たちの指揮に回った。
このとき船が緊張感に包まれたのは、風だけが理由ではない。強風で予定の航路を少々外れて航行していたときに、大砲を積んだ武装船が近付いてきたのだ。
物見の情報では国旗がなく、真っ黒に染め抜いた無地の帆が張られた二本マストの中型の船で、船員は軍装ではないらしい。が、櫓から見える者はみな帯剣している。
サゲンは兵士たちにいつでも戦闘態勢に入れるよう短く指示を出した。突然の砲撃に備えて反撃のための砲弾と矢を準備させ、看護師と軍医には船酔いが酷く使い物にならない者を下のデッキへ降ろさせ、エラには姉妹を連れて下のデッキへ降りるよう命じて、船首にアルテミシアを呼んだ。
「どう見る」
「雰囲気は海賊じゃないと思うけど、どの国にも属してない島の自警団とかだと少し厄介かもね。そういう人たちは警戒心が強いから」
サゲンは小さく顎を引いて、アルテミシアの肩を叩いた。
「行けるか」
「もちろん。バルカの出番だよ、バルカ将軍」
「バルカ夫人もな」
サゲンは唇を吊り上げた。
渉外担当のアルテミシアがまずボートで相手方の船に接近し、代表者と話し合いをする必要がある。
「ノイチも行く?」
と、アルテミシアは助手に声を掛けた。敵意を持っていないとも限らない武装した相手の元へ接近するというのに、まるで買い物にでも誘うような気軽さだ。
正直、恐怖はある。ノイチは躊躇ったが、それも一瞬だった。これほど面白い現場を目の前で見られる機会はなかなかないだろう。後学にもなる。
「行きます」
サゲンは、ボートには乗らない。何かあればすぐに陣頭指揮を執れるよう、母船で待つ。
「用心しろ」
上官らしく言って、サゲンは大型の帆船から比べればまるでおもちゃが海に浮かんでいるようなボートに飛び降りたアルテミシアとイグリとノイチを見送った。
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