3 / 8
3
「こらお前、たかだが下級のくせに」
リズを咎めようとした伯爵家の執事を、テヘラは手で制した。
「いいのよ。テヘラと平民のリズは、和解して友達になったのよ」
「ふふっ、馬鹿王子も役に立つものですね」
たまに牢屋に行くたびに、叫ぶ王子から生気を奪うのが、最近のリズの楽しみだった。
「最近は元気が無くなったというか、反応がニブくなってつまんないんです」
「一年経過して、人の精神が変化しても仕方ないわね」
ふむとテヘラは思案する。
そして決めた。
「そろそろ王の体も持ちそうにないし、リズ……面白いから王子と結婚しなさい」
「ええーっ!」
「人として王子が望んだ通りに、二人で国を統治なさいな」
「そんなー!面倒です魔王様!」
「この姿の時に、その呼び名は許さないと言ったはずよ?」
「ひっ、申し訳ございません!」
即座に椅子から飛び降りて、跪いたリズに目もくれず、テヘラは視線を遠くに向けた。
伯爵家の庭園は、鮮やかな花と緑に包まれている。
何かを一瞬で理解したテヘラは、執事に指示を出す。
「さて、人同士の結束が我々への宣戦布告らしいけど……相も変わらず無力なのが笑えるわ」
独り言をつぶやいたテヘラは、ただ指をパチンと鳴らしただけだった。
ただ、それだけ。
静かな心地良い風が、テヘラの豊かな黒髪を揺らした。
「お見事です」
低い声で感嘆した執事にはわかったのだ。
風と共に、遠くから運ばれた血の匂い。
だが執事は、主を褒めたたえつつ言葉をつけ加えた。
「なぜ回復させたのですか?」
今まさに、こちらに向けた討伐軍を一瞬にして壊滅させたテヘラだが、殲滅した後に再生させた。
理由を問われても、ただの気まぐれだ。
「今世では、どれだけ人を殺めずに生き抜けるかを楽しんでいるのよ」
「輪廻から外れて、こちらにお戻りになられる気はないのですね」
それこそ、また再び永遠の命を魔王として生きるという事だ。
テヘラとして生きて死ぬ。
それまでは、この思い付きのゲームを、寿命という期限付きで楽しむことに決めたのだ。
魔王ではなく、ただの人として。
たとえ覚醒していたとしても、表向きだけは人を保ったままに。
今のテヘラにとって、いや過去においても支配に固執した事などない。
この国の支配は魔物たちに任せるが、人の営みをできうる限り維持していくのも目標だ。
そして、他国にまで勢力を広げるつもりはなかった。
「だって、次の楽しみがなくなってしまうじゃない」
だが、他国側から横やりが入るのは鬱陶しい。
テヘラは昼下がりのティータイムを切り上げて、指示を出す。
リズを王子の元に向かわせ、執事に今後の方針を城にいる者たちに伝達させた。
城で執務に励む父は、指示通りに討伐軍と交渉に入るだろう。
――こちらが望むのは不干渉であり、再度の攻撃があれば、次こそ容赦なく蹂躙する――
脅しではないと、力を見せつけてやった。
軽いデモストレーションで、他国の軍勢が集まっていた手前の山を消滅させたのだが、大した労力でもなかった。
それから間もなく他国との和平交渉が成立し、他国民の入国も増えていった。
人間達は気づいたようだ。
魔物の生み出す技術と魔力、そして彼らの生え変わりの角や脱皮の皮、それこそリザートマンの鱗は立派な薬の材料になった。
即座に死んでは再生するスライムが発生し、それを利用した下水道の浄化システムは画期的だった。
他国が真似をしようとしてもムダで、スライムは魔物の気配に怯えて従う性質だからこそ、わが国独自の運用方法だった。
なんとか他国に逃げ出そうとしていた自国の民たちも、魔物に怯えても慣れていく。
与えられる魔物の利益に、逆に他国より入国希望者が出る始末だ。
数年たった頃に、テヘラが支持した通りに王子とリズの婚姻により、新たなる王の即位が行われる事となった。
目が虚ろながら、それでも生き延びるために王子はリズを受け入れた。
魔物にもよるが、サキュバスと人間ならば子どもも作れるだろう。
テヘラが人として死んだ後の、次の転生も王族は継続していく。
愛を知らぬ自分は、何度転生しても実る事も欲する事もなかったモノだ。
「テヘラちゃん、どこへ行くの?」
母に尋ねられ、テヘラは答えた。
「久しぶりに街に出ようと思っています。最近夢中な刺繍の糸が切れてしまって」
「あら、なら商人を呼べば宜しいのに」
母の言葉に、テヘラは首を横に振る。
「いいえ、久しぶりに街に出て来ます」
「そう、気を付けてね」
一見、会話だけなら、普通の母と娘の会話である。
ただし、より魅力的な年頃になったテヘラと向かい合うのは、下半身が長いヘビの母の姿だったが。
あえて屋敷内では、家族としての演技を厳守せよとの魔王の命令を、父も母も従っていた。
一角獣の馬車に乗り街へ繰り出したテヘラは、車窓から街の様子を眺めていた。
人と魔物の調和がなされ、街のあらゆる場所は平和に満ちていた。
「街灯に鬼火を使うのはいいアイデアだけど、ふふっ……ゴミ処理にアンデットを使うの?確かに腐ったモノには敏感だから、取りこぼしはないけど」
案外、魔物の使い道は多々あったようで、人の知恵も含めて利便性は上がっていく。
卵屋ではコカトリスの卵が販売され、滋養に良いと高値で取引されていた。
建築現場では、大きな柱を軽々と運ぶサイクロプスも見たし、ハーピーが手紙をくわえて空を飛んでいた。
きっと、他にも色々あるのだろうが、彼らは攻撃されない限りは共存せよと厳守させている。
どうしても人に危害をくわえる者や、食べる者たちは、魔界から出る事はない。
あくまで、この国にいるのは選ばれた魔物たちである。
最近では人だけでなく。魔物たちも商いをするようになり、商店街は様変わりしていた。
行きつけの貴族街の商店ですら、人と魔物が交じり合う。
辿り着いた小物店では、早速店主が恭しくテヘラを歓迎する。
「いらっしゃいませ魔王様。このような店にお越しいただき恐悦至極……」
「そういうのはやめてって言ってるでしょ?この姿の時は、ただの伯爵令嬢として対応して頂戴」
「はっ……申し訳ございませんでした。では、あらためて、ゴホン。いらっしゃいませお嬢様」
あくまで人として生きると決めたテヘラは、徹底して魔王である身分を隠していた。
断罪の場にいた人間たちの記憶も改ざんされており、魔物たちにも通告している。
「それで、本日は何をお探しですか?」
「ええ、スパイダーの極上糸で刺繍をしていたのだけど、糸が切れてしまって」
「それはそれは……でしたら、こちらに各色をご用意しております」
店内の一角には、四角のマス目に綺麗にはめ込まれた、色とりどりの糸の束がディスプレイされていた。
宝石のようなこの糸は、店主みずから作り出した魔物特産の丈夫で細い糸である。
髪のように細いのに、オーガですら千切れない糸は専用のハサミが必要だ。
「この桃色と、黄色と水色。ああ、白を複数貰えるかしら?」
「布は宜しいのですか?絹の布だけでなく、それ以外の素材もございますが」
「いえ、レース編みをしているの。手慰めに教会のチャリティーに出してるの」
「おおお、それは素晴らしい!」
元々テヘラは人であった当時から、慈悲にあふれた優しい少女であった。
魔力と共に、記憶を封印していた断罪の前までは、こうやって教会に寄付や奉仕に積極的だった。
――すでに遠い人であった記憶。今の私は、それをなぞっているにすぎないのかしら?
魔王として覚醒してからは、当然思考も感情も本来の魔に戻った。
どこかでうっすらと、過去の自分は人と違うと怯えていたのかも知れない。
だからこそ、必死で人の心を保とうと慈善に走り、人の顔色を窺い、己を抑える気弱な性格だった。
買い物を終えて馬車に乗り込む前に、ふと思いついた。
「私が気弱だったのをいい事に、調子に乗った愚か者を、久しぶりに見に行きましょう」
馬車は勢いをあげて王城を目指す。
激しいスピードのはずだが、馬車内は一切揺れがない。
「リズは幸せにしてるかしら?子供も生まれたばかりよね?」
この国の王は、婚約者を捨て平民だった娘リズを王妃に添えた。
夫婦仲は睦まじく、特に王妃は夫に夢中であると世間では評判だった。
表向きは……。
やがて大きな門を抜けて、白亜の王城に辿り着く。
伯爵家の家紋のお陰か、最終の第三の門まで馬車を横づけできた。
テヘラが馬車を降りた途端に、衛兵の騎士が走ってくる。
「失礼、ご令嬢。予約と許可をお取り……ああっ、あれ?」
テヘラが軽く目を向けただけで、駆け寄った騎士はその場で首をかしげた。
「え、あれ?俺は何をしているんだ?」
自らに認識阻害をかけ、テヘラは悠々と中を進んで行く。
誰も止める事はできない。
人はテヘラの存在がわからないし、魔物は恭しく頭を下げた。
迷うことなく、テヘラは国王がいる場所に辿り着く。
重厚な扉をノックすると、中から許可の声が出た。
執務室に入室するなり、テヘラは可憐なカーテシーで王に挨拶を述べた。
リズを咎めようとした伯爵家の執事を、テヘラは手で制した。
「いいのよ。テヘラと平民のリズは、和解して友達になったのよ」
「ふふっ、馬鹿王子も役に立つものですね」
たまに牢屋に行くたびに、叫ぶ王子から生気を奪うのが、最近のリズの楽しみだった。
「最近は元気が無くなったというか、反応がニブくなってつまんないんです」
「一年経過して、人の精神が変化しても仕方ないわね」
ふむとテヘラは思案する。
そして決めた。
「そろそろ王の体も持ちそうにないし、リズ……面白いから王子と結婚しなさい」
「ええーっ!」
「人として王子が望んだ通りに、二人で国を統治なさいな」
「そんなー!面倒です魔王様!」
「この姿の時に、その呼び名は許さないと言ったはずよ?」
「ひっ、申し訳ございません!」
即座に椅子から飛び降りて、跪いたリズに目もくれず、テヘラは視線を遠くに向けた。
伯爵家の庭園は、鮮やかな花と緑に包まれている。
何かを一瞬で理解したテヘラは、執事に指示を出す。
「さて、人同士の結束が我々への宣戦布告らしいけど……相も変わらず無力なのが笑えるわ」
独り言をつぶやいたテヘラは、ただ指をパチンと鳴らしただけだった。
ただ、それだけ。
静かな心地良い風が、テヘラの豊かな黒髪を揺らした。
「お見事です」
低い声で感嘆した執事にはわかったのだ。
風と共に、遠くから運ばれた血の匂い。
だが執事は、主を褒めたたえつつ言葉をつけ加えた。
「なぜ回復させたのですか?」
今まさに、こちらに向けた討伐軍を一瞬にして壊滅させたテヘラだが、殲滅した後に再生させた。
理由を問われても、ただの気まぐれだ。
「今世では、どれだけ人を殺めずに生き抜けるかを楽しんでいるのよ」
「輪廻から外れて、こちらにお戻りになられる気はないのですね」
それこそ、また再び永遠の命を魔王として生きるという事だ。
テヘラとして生きて死ぬ。
それまでは、この思い付きのゲームを、寿命という期限付きで楽しむことに決めたのだ。
魔王ではなく、ただの人として。
たとえ覚醒していたとしても、表向きだけは人を保ったままに。
今のテヘラにとって、いや過去においても支配に固執した事などない。
この国の支配は魔物たちに任せるが、人の営みをできうる限り維持していくのも目標だ。
そして、他国にまで勢力を広げるつもりはなかった。
「だって、次の楽しみがなくなってしまうじゃない」
だが、他国側から横やりが入るのは鬱陶しい。
テヘラは昼下がりのティータイムを切り上げて、指示を出す。
リズを王子の元に向かわせ、執事に今後の方針を城にいる者たちに伝達させた。
城で執務に励む父は、指示通りに討伐軍と交渉に入るだろう。
――こちらが望むのは不干渉であり、再度の攻撃があれば、次こそ容赦なく蹂躙する――
脅しではないと、力を見せつけてやった。
軽いデモストレーションで、他国の軍勢が集まっていた手前の山を消滅させたのだが、大した労力でもなかった。
それから間もなく他国との和平交渉が成立し、他国民の入国も増えていった。
人間達は気づいたようだ。
魔物の生み出す技術と魔力、そして彼らの生え変わりの角や脱皮の皮、それこそリザートマンの鱗は立派な薬の材料になった。
即座に死んでは再生するスライムが発生し、それを利用した下水道の浄化システムは画期的だった。
他国が真似をしようとしてもムダで、スライムは魔物の気配に怯えて従う性質だからこそ、わが国独自の運用方法だった。
なんとか他国に逃げ出そうとしていた自国の民たちも、魔物に怯えても慣れていく。
与えられる魔物の利益に、逆に他国より入国希望者が出る始末だ。
数年たった頃に、テヘラが支持した通りに王子とリズの婚姻により、新たなる王の即位が行われる事となった。
目が虚ろながら、それでも生き延びるために王子はリズを受け入れた。
魔物にもよるが、サキュバスと人間ならば子どもも作れるだろう。
テヘラが人として死んだ後の、次の転生も王族は継続していく。
愛を知らぬ自分は、何度転生しても実る事も欲する事もなかったモノだ。
「テヘラちゃん、どこへ行くの?」
母に尋ねられ、テヘラは答えた。
「久しぶりに街に出ようと思っています。最近夢中な刺繍の糸が切れてしまって」
「あら、なら商人を呼べば宜しいのに」
母の言葉に、テヘラは首を横に振る。
「いいえ、久しぶりに街に出て来ます」
「そう、気を付けてね」
一見、会話だけなら、普通の母と娘の会話である。
ただし、より魅力的な年頃になったテヘラと向かい合うのは、下半身が長いヘビの母の姿だったが。
あえて屋敷内では、家族としての演技を厳守せよとの魔王の命令を、父も母も従っていた。
一角獣の馬車に乗り街へ繰り出したテヘラは、車窓から街の様子を眺めていた。
人と魔物の調和がなされ、街のあらゆる場所は平和に満ちていた。
「街灯に鬼火を使うのはいいアイデアだけど、ふふっ……ゴミ処理にアンデットを使うの?確かに腐ったモノには敏感だから、取りこぼしはないけど」
案外、魔物の使い道は多々あったようで、人の知恵も含めて利便性は上がっていく。
卵屋ではコカトリスの卵が販売され、滋養に良いと高値で取引されていた。
建築現場では、大きな柱を軽々と運ぶサイクロプスも見たし、ハーピーが手紙をくわえて空を飛んでいた。
きっと、他にも色々あるのだろうが、彼らは攻撃されない限りは共存せよと厳守させている。
どうしても人に危害をくわえる者や、食べる者たちは、魔界から出る事はない。
あくまで、この国にいるのは選ばれた魔物たちである。
最近では人だけでなく。魔物たちも商いをするようになり、商店街は様変わりしていた。
行きつけの貴族街の商店ですら、人と魔物が交じり合う。
辿り着いた小物店では、早速店主が恭しくテヘラを歓迎する。
「いらっしゃいませ魔王様。このような店にお越しいただき恐悦至極……」
「そういうのはやめてって言ってるでしょ?この姿の時は、ただの伯爵令嬢として対応して頂戴」
「はっ……申し訳ございませんでした。では、あらためて、ゴホン。いらっしゃいませお嬢様」
あくまで人として生きると決めたテヘラは、徹底して魔王である身分を隠していた。
断罪の場にいた人間たちの記憶も改ざんされており、魔物たちにも通告している。
「それで、本日は何をお探しですか?」
「ええ、スパイダーの極上糸で刺繍をしていたのだけど、糸が切れてしまって」
「それはそれは……でしたら、こちらに各色をご用意しております」
店内の一角には、四角のマス目に綺麗にはめ込まれた、色とりどりの糸の束がディスプレイされていた。
宝石のようなこの糸は、店主みずから作り出した魔物特産の丈夫で細い糸である。
髪のように細いのに、オーガですら千切れない糸は専用のハサミが必要だ。
「この桃色と、黄色と水色。ああ、白を複数貰えるかしら?」
「布は宜しいのですか?絹の布だけでなく、それ以外の素材もございますが」
「いえ、レース編みをしているの。手慰めに教会のチャリティーに出してるの」
「おおお、それは素晴らしい!」
元々テヘラは人であった当時から、慈悲にあふれた優しい少女であった。
魔力と共に、記憶を封印していた断罪の前までは、こうやって教会に寄付や奉仕に積極的だった。
――すでに遠い人であった記憶。今の私は、それをなぞっているにすぎないのかしら?
魔王として覚醒してからは、当然思考も感情も本来の魔に戻った。
どこかでうっすらと、過去の自分は人と違うと怯えていたのかも知れない。
だからこそ、必死で人の心を保とうと慈善に走り、人の顔色を窺い、己を抑える気弱な性格だった。
買い物を終えて馬車に乗り込む前に、ふと思いついた。
「私が気弱だったのをいい事に、調子に乗った愚か者を、久しぶりに見に行きましょう」
馬車は勢いをあげて王城を目指す。
激しいスピードのはずだが、馬車内は一切揺れがない。
「リズは幸せにしてるかしら?子供も生まれたばかりよね?」
この国の王は、婚約者を捨て平民だった娘リズを王妃に添えた。
夫婦仲は睦まじく、特に王妃は夫に夢中であると世間では評判だった。
表向きは……。
やがて大きな門を抜けて、白亜の王城に辿り着く。
伯爵家の家紋のお陰か、最終の第三の門まで馬車を横づけできた。
テヘラが馬車を降りた途端に、衛兵の騎士が走ってくる。
「失礼、ご令嬢。予約と許可をお取り……ああっ、あれ?」
テヘラが軽く目を向けただけで、駆け寄った騎士はその場で首をかしげた。
「え、あれ?俺は何をしているんだ?」
自らに認識阻害をかけ、テヘラは悠々と中を進んで行く。
誰も止める事はできない。
人はテヘラの存在がわからないし、魔物は恭しく頭を下げた。
迷うことなく、テヘラは国王がいる場所に辿り着く。
重厚な扉をノックすると、中から許可の声が出た。
執務室に入室するなり、テヘラは可憐なカーテシーで王に挨拶を述べた。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
モブ令嬢は脳筋が嫌い
斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
恋愛
イーディスは海のように真っ青な瞳を持つ少年、リガロに一瞬で心を奪われた。彼の婚約者になれるのが嬉しくて「祖父のようになりたい」と夢を語る彼を支えたいと思った。リガロと婚約者になってからの日々は夢のようだった。けれど彼はいつからか全く笑わなくなった。剣を振るい続ける彼を見守ることこそが自分の役目だと思っていたイーディスだったが、彼女の考えは前世の記憶を取り戻したことで一変する。※執筆中のため感想返信までお時間を頂くことがあります。また今後の展開に関わる感想や攻撃的な感想に関しましては返信や掲載を控えさせていただくことがあります。あらかじめご了承ください。
良くある事でしょう。
r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。
若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。
けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。
【完結】一番腹黒いのはだあれ?
やまぐちこはる
恋愛
■□■
貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。
三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。
しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。
ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。
幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい
ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26)
鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。
狭い個室にはメイド服がかかっている。
とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。
「この顔……どこか見覚えが……」
幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。
名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー)
没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。
原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。
「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」
幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。
病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。
エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18)
全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。
タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。
必要とされなくても、私はここにいます
あう
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスのもとへ嫁ぐことになったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、理想の妻になろうとも、誰かの上に立とうともしなかった。
口出ししない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
ただ静かに、そこにいるだけ。
そんな彼女の在り方は、少しずつ屋敷の空気を変えていく。
張りつめていた人々の距離はやわらぎ、日々の営みは穏やかに整いはじめる。
何かを勝ち取る物語ではない。
誰かを打ち負かす物語でもない。
それでも確かに、彼女がいることで守られていくものがある。
これは、
声高に愛を叫ばなくても伝わる想いと、
何も奪わないからこそ育っていく信頼を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。