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「ご機嫌麗しゅう陛下。ご機嫌は如何ですか?」
「うっ、あああっ!」
「あら、動かない方が宜しいのではなくって?クスクス」
歴代の王も使った高価なオークの執務机。
そこに座り、山ほどの書類にサインを淡々と書き連ねていた国王は、テヘラを見て動揺した。
だが、首元には大きな鎌が当てられており、常に見張る死神が容赦なく新たな王の命を狙っている。
げっそりとやせ細り、顔はどす黒いのに目だけは爛々とした姿は、過去の傲慢な王子の面影は一つもない。
行政や国の方針は、ほぼ重臣たちによって定められ、国王の仕事はサインするだけ。
生きる屍であろうと、手さえ動けば事が足りた。
「跡継ぎも出来ましたし、もう死にたいならご自由になさって結構ですよ?」
慈悲にあふれる優しさでテヘラが告げると、王は弱々しく懇願した。
「許してくれ……テヘラ。俺が悪かった……」
「あら、別に謝罪なんていりませんわ」
ニッコリと笑うテヘラに、王は涙を流す。
「もう解放してくれて、頼む……民たちの為に、いや……世界の為に魔界に帰ってくれ」
その言葉にテヘラは高らかに笑った。
空気が一瞬にして冷たく温度を変える。
「あーっはっはっは。面白い事を言うものですわ。魔界に帰れ?余計なお世話です」
「俺の命でいいなら差し出す……国を返してくれ」
ブルブルと声すら震える王の言葉を、テヘラは鼻で笑う。
サラリと黒髪を手ではらい、赤い口元に指先をあてた。
細くなった瞳は、いつもの青から赤に色を戻している。
その怪しい笑みと気迫に、側に控えていた死神すら動揺した。
「勘違いなさっているみたいですね。そもそも、お前たち人間が全て始めた事、その責任をとっているに過ぎないのだ」
「だから……責任は……んぐっ」
首元に赤い線が走り、鎌が首元に食い込んだ王は言葉を詰まらせる。
朱色の血が、細く首元を伝う。
「勇者を使って、我を退治しようとした愚かな行為。お前たちの選んだその勇者自ら、命と引き換えに国を差し出したに過ぎない」
「それはっ……俺たちには、もう……」
「関係ない?魔界にわざわざ乗り込んできた無礼を許し、国程度で命を救ってやったあげく、お前の先祖と取引までして我は大人しくしてやったのに」
「知らなかった!俺は父上から、お前の正体を聞いてなかった!知っていれば!」
「そういう決まりだ。知るのは国王ただ一人、お前はあれだ……」
テヘラはフッと雰囲気を和らげて、大人しい少女の顔に戻り微笑んだ。
「王子が、私を本来の婚約者として、普通に接して頂ければ、こうはならなかったと思いますよ?」
「うぁっ、あああっ」
鎌かスイッと後ろに下げられ首元から離れると同時に、王は机に突っ伏して慟哭した。
冷めた空気だけが流れる執務室に、突然場違いな声が乱入する。
「やだっ魔王……じゃなかった、ようこそテヘラ様!いらっしゃい!」
久方ぷりに見る王妃リズは、相変わらずの能天気さで現れた。
赤子を腕に抱いたまま、感激とばかりにズカズカとテヘラ達の元に来る。
「やだっ、ちょっと睨まないでよ。死神程度の癖に、黙ってソイツの首に鎌でも当ててなさいよ」
「ふふっ、元気そうねリズ。いえ、王妃様」
「本当、大変ですよテヘラ様。王妃とか本当に面倒……でも子供は可愛いです」
スリスリと我が子を頬ずりするリズを見て、テヘラは小さく息を吐く。
まさか、あれだけ嫌がっていたリズがこうも豹変するとは。
「産んでみてわかったんです。案外楽しいですよ」
「そうか」
「テヘラ様、ぜひこの子に祝福を!」
リズの願いに、それまで息を殺していた王が怒鳴った。
「やめろ!魔王の祝福など!」
その言葉に、リズはそれまでのなりを潜め、魔物の本性をさらけ出す。
顔の表情すら一変させ、殺さんばかりの視線で自らの夫を睨みつけた。
「まだ言うか……お前は魔王様の温情によって生かされているにすぎん。既にこの世の全てにおいて、この方に勝るものはいないのだ」
「まあまあ、やめなさいリズ」
軽くテヘラは令嬢のままにたしなめると、途端にリズは元に戻った。
「やーん、すいませんテヘラ様。まだ躾が甘かったみたいです。でも、もうこの子もいるし、アレは不要じゃないですか~?」
ビクリと座っていた王の体が大きく揺れた。
だが、テヘラは静かに首を横に振る。
残念そうな顔をしたリズだが、気を取り直して夫に甘く囁いた。
「首が繋がったわねぇ貴方。そろそろ、次の子も欲しいものだわ」
「さあ、その子を抱っこさせて頂戴」
差し出された赤ん坊は、一見ただの人の子にも見えた。
サキュバスと人のミックスであっても、無邪気に笑う姿では判別がつかない。
テヘラは赤子の頬にキスをする。
「この子に祝福あれ」
それだけで、リズは床にひれ伏し、泣いて感謝した。
「あっ、有難うございます!こんな名誉な事はございません!これでこの子は永久に、他の魔物に害される事はありませんわ!」
我が子を受け取り、深く何度も頭を下げるリズにテヘラは苦笑した。
「友人として祝福させて頂戴リズ。いい母親になってね」
「はい、はいっ!」
我が子が魔王の祝福を受けた事により、絶望する父親と歓喜に包まれる母親。
二人を置いて、用が済んだとテヘラは城を出て馬車にて帰路に向かう。
「案外楽しい……か、確かに赤ん坊を産むと言う発想はなかったな」
ぼんやりと先程のリズの変貌を思い出し、そんなものかと考えるテヘラ。
なんとか今は人として生きてはいるが、どこかで達観している自分がいるのも事実。
平穏を望んだくせに、弱小な人という生き物の感情がいまいち掴めていない。
記憶をとり戻す前に当たり前に感じたものが、魔王に戻ると消え去った。
それが、とても大事な物な気がして仕方ない。
だからこそ、テヘラはこのまま『人の寿命を生きるゲーム』を続ける事に決めたのだ。
「先程の王ですら、我が子に愛とやらがあるからこそ、怒り絶望したわけね」
――足りないのは何?何があれば、私は何かを大事だと思えるのだろう?――
その答えのヒントが近づいた気がする。
ここ数日、違和感を感じていた。
いや、正確には懐かしい気配、異物が近くに存在する。
その存在の潜む光に気づけるのは、魔王である自分ただ一人。
その正体が何であるのか、テヘラには察しがついていた。
「その中央広場で止まって頂戴」
久方ぶりの対面だと、テヘラは広場に到着するなり姿を探す。
すぐに見つかった。
若い姿の男で、年の頃は似た感じだろう。
赤毛に緑の目をした優男だが、その瞳の奥に潜む鋭さに、何人が気づけるだろうか?
――ただの人だ。だが、ただの人ではない。
噴水に腰掛ける男に、テヘラは近づき声をかけた。
相手の男も顔をあげ、テヘラを見るなり体を硬直させた。
「初めまして、私はテヘラ・ウェップシュタルトと申します。どこかでお会いしたことはありますか?」
令嬢らしく優雅に尋ねると、男はしばらくして、取り繕った笑みで答えた。
「いいえ、初めましてお嬢さん。貴方のような綺麗な方とお会いしていたら、忘れる事などありません」
「あら?懐かしい気配だったのだけれど、気のせいかしら?」
「まるで女性からナンパをされた気持ちです。良かったら、お茶でも如何ですか?」
しらばっくれる男が面白いと感じたテヘラは、素直に誘いに乗った。
そのままカフェにでも行くのかと思ったが、男はここで待っていろと言う。
逃げるのも面白いと好きにさせたら、すぐさま戻ってきた男の手には二つの紙カップがあった。
「まだこの国に来たばかりで、良い店はしりませんが、先程飲んだこの飲み物が美味しかったんです」
「ありがとう。このハチミツ入りミルクは、蜂の魔物のビーの黄金蜜ですわ」
「そうなんですか。最近は他国にも輸出されている高級品だ」
互いに並んで噴水の縁に腰かけて、語り合った。
一見和やかな雰囲気に、周囲の誰も気づかないが、この出会いがどれだけ運命的であるか、知るのは二人だけだった。
「商売の為にこの国に来られたのなら、あまりの違いに驚いたのではなくって?」
「ああ、魔物と人が共存してる事に困惑している」
「宜しかったら、私が色々と手助け出来る事があれば言って下さいませ」
テヘラからの申し出に、男は目を一瞬見開き、そして前のめりに喰いついた。
「ああ頼む、いやお願いしたい。俺の名はグレーンハルト。ただの平民の商人だが、本当に貴方のような存在にいいのか?」
含みを帯びた言葉に、テヘラは内心ほくそ笑む。
「ええ、グレーンハルトさん。私の事はテヘラと……あと言葉遣いも、もっと砕けてくれると嬉しいわ」
「有難いテヘラ。ならグレンと呼んでくれ。また会えたら、色々と教えてくれたら嬉しい」
こうして、二人の交流が始まった。互いの心の奥底は隠したままに、何度も噴水で待ち合わせては、街を歩いたり、共に食事をしながらたわいもない話で盛り上がる。
「うっ、あああっ!」
「あら、動かない方が宜しいのではなくって?クスクス」
歴代の王も使った高価なオークの執務机。
そこに座り、山ほどの書類にサインを淡々と書き連ねていた国王は、テヘラを見て動揺した。
だが、首元には大きな鎌が当てられており、常に見張る死神が容赦なく新たな王の命を狙っている。
げっそりとやせ細り、顔はどす黒いのに目だけは爛々とした姿は、過去の傲慢な王子の面影は一つもない。
行政や国の方針は、ほぼ重臣たちによって定められ、国王の仕事はサインするだけ。
生きる屍であろうと、手さえ動けば事が足りた。
「跡継ぎも出来ましたし、もう死にたいならご自由になさって結構ですよ?」
慈悲にあふれる優しさでテヘラが告げると、王は弱々しく懇願した。
「許してくれ……テヘラ。俺が悪かった……」
「あら、別に謝罪なんていりませんわ」
ニッコリと笑うテヘラに、王は涙を流す。
「もう解放してくれて、頼む……民たちの為に、いや……世界の為に魔界に帰ってくれ」
その言葉にテヘラは高らかに笑った。
空気が一瞬にして冷たく温度を変える。
「あーっはっはっは。面白い事を言うものですわ。魔界に帰れ?余計なお世話です」
「俺の命でいいなら差し出す……国を返してくれ」
ブルブルと声すら震える王の言葉を、テヘラは鼻で笑う。
サラリと黒髪を手ではらい、赤い口元に指先をあてた。
細くなった瞳は、いつもの青から赤に色を戻している。
その怪しい笑みと気迫に、側に控えていた死神すら動揺した。
「勘違いなさっているみたいですね。そもそも、お前たち人間が全て始めた事、その責任をとっているに過ぎないのだ」
「だから……責任は……んぐっ」
首元に赤い線が走り、鎌が首元に食い込んだ王は言葉を詰まらせる。
朱色の血が、細く首元を伝う。
「勇者を使って、我を退治しようとした愚かな行為。お前たちの選んだその勇者自ら、命と引き換えに国を差し出したに過ぎない」
「それはっ……俺たちには、もう……」
「関係ない?魔界にわざわざ乗り込んできた無礼を許し、国程度で命を救ってやったあげく、お前の先祖と取引までして我は大人しくしてやったのに」
「知らなかった!俺は父上から、お前の正体を聞いてなかった!知っていれば!」
「そういう決まりだ。知るのは国王ただ一人、お前はあれだ……」
テヘラはフッと雰囲気を和らげて、大人しい少女の顔に戻り微笑んだ。
「王子が、私を本来の婚約者として、普通に接して頂ければ、こうはならなかったと思いますよ?」
「うぁっ、あああっ」
鎌かスイッと後ろに下げられ首元から離れると同時に、王は机に突っ伏して慟哭した。
冷めた空気だけが流れる執務室に、突然場違いな声が乱入する。
「やだっ魔王……じゃなかった、ようこそテヘラ様!いらっしゃい!」
久方ぷりに見る王妃リズは、相変わらずの能天気さで現れた。
赤子を腕に抱いたまま、感激とばかりにズカズカとテヘラ達の元に来る。
「やだっ、ちょっと睨まないでよ。死神程度の癖に、黙ってソイツの首に鎌でも当ててなさいよ」
「ふふっ、元気そうねリズ。いえ、王妃様」
「本当、大変ですよテヘラ様。王妃とか本当に面倒……でも子供は可愛いです」
スリスリと我が子を頬ずりするリズを見て、テヘラは小さく息を吐く。
まさか、あれだけ嫌がっていたリズがこうも豹変するとは。
「産んでみてわかったんです。案外楽しいですよ」
「そうか」
「テヘラ様、ぜひこの子に祝福を!」
リズの願いに、それまで息を殺していた王が怒鳴った。
「やめろ!魔王の祝福など!」
その言葉に、リズはそれまでのなりを潜め、魔物の本性をさらけ出す。
顔の表情すら一変させ、殺さんばかりの視線で自らの夫を睨みつけた。
「まだ言うか……お前は魔王様の温情によって生かされているにすぎん。既にこの世の全てにおいて、この方に勝るものはいないのだ」
「まあまあ、やめなさいリズ」
軽くテヘラは令嬢のままにたしなめると、途端にリズは元に戻った。
「やーん、すいませんテヘラ様。まだ躾が甘かったみたいです。でも、もうこの子もいるし、アレは不要じゃないですか~?」
ビクリと座っていた王の体が大きく揺れた。
だが、テヘラは静かに首を横に振る。
残念そうな顔をしたリズだが、気を取り直して夫に甘く囁いた。
「首が繋がったわねぇ貴方。そろそろ、次の子も欲しいものだわ」
「さあ、その子を抱っこさせて頂戴」
差し出された赤ん坊は、一見ただの人の子にも見えた。
サキュバスと人のミックスであっても、無邪気に笑う姿では判別がつかない。
テヘラは赤子の頬にキスをする。
「この子に祝福あれ」
それだけで、リズは床にひれ伏し、泣いて感謝した。
「あっ、有難うございます!こんな名誉な事はございません!これでこの子は永久に、他の魔物に害される事はありませんわ!」
我が子を受け取り、深く何度も頭を下げるリズにテヘラは苦笑した。
「友人として祝福させて頂戴リズ。いい母親になってね」
「はい、はいっ!」
我が子が魔王の祝福を受けた事により、絶望する父親と歓喜に包まれる母親。
二人を置いて、用が済んだとテヘラは城を出て馬車にて帰路に向かう。
「案外楽しい……か、確かに赤ん坊を産むと言う発想はなかったな」
ぼんやりと先程のリズの変貌を思い出し、そんなものかと考えるテヘラ。
なんとか今は人として生きてはいるが、どこかで達観している自分がいるのも事実。
平穏を望んだくせに、弱小な人という生き物の感情がいまいち掴めていない。
記憶をとり戻す前に当たり前に感じたものが、魔王に戻ると消え去った。
それが、とても大事な物な気がして仕方ない。
だからこそ、テヘラはこのまま『人の寿命を生きるゲーム』を続ける事に決めたのだ。
「先程の王ですら、我が子に愛とやらがあるからこそ、怒り絶望したわけね」
――足りないのは何?何があれば、私は何かを大事だと思えるのだろう?――
その答えのヒントが近づいた気がする。
ここ数日、違和感を感じていた。
いや、正確には懐かしい気配、異物が近くに存在する。
その存在の潜む光に気づけるのは、魔王である自分ただ一人。
その正体が何であるのか、テヘラには察しがついていた。
「その中央広場で止まって頂戴」
久方ぶりの対面だと、テヘラは広場に到着するなり姿を探す。
すぐに見つかった。
若い姿の男で、年の頃は似た感じだろう。
赤毛に緑の目をした優男だが、その瞳の奥に潜む鋭さに、何人が気づけるだろうか?
――ただの人だ。だが、ただの人ではない。
噴水に腰掛ける男に、テヘラは近づき声をかけた。
相手の男も顔をあげ、テヘラを見るなり体を硬直させた。
「初めまして、私はテヘラ・ウェップシュタルトと申します。どこかでお会いしたことはありますか?」
令嬢らしく優雅に尋ねると、男はしばらくして、取り繕った笑みで答えた。
「いいえ、初めましてお嬢さん。貴方のような綺麗な方とお会いしていたら、忘れる事などありません」
「あら?懐かしい気配だったのだけれど、気のせいかしら?」
「まるで女性からナンパをされた気持ちです。良かったら、お茶でも如何ですか?」
しらばっくれる男が面白いと感じたテヘラは、素直に誘いに乗った。
そのままカフェにでも行くのかと思ったが、男はここで待っていろと言う。
逃げるのも面白いと好きにさせたら、すぐさま戻ってきた男の手には二つの紙カップがあった。
「まだこの国に来たばかりで、良い店はしりませんが、先程飲んだこの飲み物が美味しかったんです」
「ありがとう。このハチミツ入りミルクは、蜂の魔物のビーの黄金蜜ですわ」
「そうなんですか。最近は他国にも輸出されている高級品だ」
互いに並んで噴水の縁に腰かけて、語り合った。
一見和やかな雰囲気に、周囲の誰も気づかないが、この出会いがどれだけ運命的であるか、知るのは二人だけだった。
「商売の為にこの国に来られたのなら、あまりの違いに驚いたのではなくって?」
「ああ、魔物と人が共存してる事に困惑している」
「宜しかったら、私が色々と手助け出来る事があれば言って下さいませ」
テヘラからの申し出に、男は目を一瞬見開き、そして前のめりに喰いついた。
「ああ頼む、いやお願いしたい。俺の名はグレーンハルト。ただの平民の商人だが、本当に貴方のような存在にいいのか?」
含みを帯びた言葉に、テヘラは内心ほくそ笑む。
「ええ、グレーンハルトさん。私の事はテヘラと……あと言葉遣いも、もっと砕けてくれると嬉しいわ」
「有難いテヘラ。ならグレンと呼んでくれ。また会えたら、色々と教えてくれたら嬉しい」
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