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目の前にいる人
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教室の窓から入る風が、ノートの端をぱらぱらとめくった。
「またぼーっとしてる」
後ろから聞こえた声に、肩がびくっと揺れる。
振り返らなくてもわかる。あなたの声だ。
「してないし」
そう返しながらも、たぶん顔は少し赤い。
あなたはいつも、こうやって急に話しかけてくる。
何でもないみたいな顔で、でもちょっとだけ距離が近い。
「今日さ、帰り寄り道しない?」
「え、なんで」
「なんでって…たまにはいいじゃん」
その言い方が、ずるい。
断れるわけないの、知ってるくせに。
「…いいよ」
小さく答えると、あなたは少しだけ嬉しそうに笑った。
その笑顔を見るたびに思う。
——好きだなって。
でも、言えない。
だってあなた、モテるし。
きっとこういうの、私だけじゃない。
帰り道、並んで歩く。
沈黙が続いても、不思議と気まずくない。
でも今日だけは、なんか違った。
「あのさ」
「ん?」
「もしさ、俺に好きな人いたらどうする?」
急すぎる質問に、心臓が跳ねる。
「…どうもしない」
「え、なんで」
「言えないから」
正直すぎたかもしれない。
でも、もう取り繕う余裕がなかった。
少しの沈黙。
それから、あなたがぽつりと呟いた。
「同じだ」
「え?」
思わず立ち止まる。
あなたも足を止めて、少し困ったみたいに笑った。
「俺も、言えない」
夕焼けが、やけに眩しい。
「…誰に?」
聞かないほうがいいってわかってるのに、口から出た。
あなたは一瞬だけ目を逸らして、それから、まっすぐこっちを見た。
「目の前にいる人」
頭が真っ白になる。
言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。
「それって…」
「気づいてなかった?」
からかうような声なのに、どこか緊張してる。
心臓がうるさい。
たぶん今、同じくらいうるさいのは——あなたも。
「…気づくわけないじゃん」
そう言ったら、あなたは少しだけ笑って、
「そっか」
って、小さく頷いた。
そのあと、ほんの少しだけ手が触れた。
離れないでほしいって思ったのは、きっと私だけじゃない。
「またぼーっとしてる」
後ろから聞こえた声に、肩がびくっと揺れる。
振り返らなくてもわかる。あなたの声だ。
「してないし」
そう返しながらも、たぶん顔は少し赤い。
あなたはいつも、こうやって急に話しかけてくる。
何でもないみたいな顔で、でもちょっとだけ距離が近い。
「今日さ、帰り寄り道しない?」
「え、なんで」
「なんでって…たまにはいいじゃん」
その言い方が、ずるい。
断れるわけないの、知ってるくせに。
「…いいよ」
小さく答えると、あなたは少しだけ嬉しそうに笑った。
その笑顔を見るたびに思う。
——好きだなって。
でも、言えない。
だってあなた、モテるし。
きっとこういうの、私だけじゃない。
帰り道、並んで歩く。
沈黙が続いても、不思議と気まずくない。
でも今日だけは、なんか違った。
「あのさ」
「ん?」
「もしさ、俺に好きな人いたらどうする?」
急すぎる質問に、心臓が跳ねる。
「…どうもしない」
「え、なんで」
「言えないから」
正直すぎたかもしれない。
でも、もう取り繕う余裕がなかった。
少しの沈黙。
それから、あなたがぽつりと呟いた。
「同じだ」
「え?」
思わず立ち止まる。
あなたも足を止めて、少し困ったみたいに笑った。
「俺も、言えない」
夕焼けが、やけに眩しい。
「…誰に?」
聞かないほうがいいってわかってるのに、口から出た。
あなたは一瞬だけ目を逸らして、それから、まっすぐこっちを見た。
「目の前にいる人」
頭が真っ白になる。
言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。
「それって…」
「気づいてなかった?」
からかうような声なのに、どこか緊張してる。
心臓がうるさい。
たぶん今、同じくらいうるさいのは——あなたも。
「…気づくわけないじゃん」
そう言ったら、あなたは少しだけ笑って、
「そっか」
って、小さく頷いた。
そのあと、ほんの少しだけ手が触れた。
離れないでほしいって思ったのは、きっと私だけじゃない。
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