性癖粉砕骨折BL短編集

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奇妙な物を収集する癖がある貴族と病弱ナルシスト弟

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鏡の前にはオッドアイの愛らしい美少女。
あぁ、こんなに可愛い僕が居るのに、どうして兄さんは他の物に目移りしてしまうのか!
「僕が一等変だろ! 兄さんちょっとは僕の事見てよ!」
「ちょっとは見ているだろうが。ただ、好きな物は沢山集めたい方なだけだ」
「一つをきちんと愛でろー! それは好きじゃなくてただの浪費癖だ!」
「別に集めているのははぐれ者だから良いだろう。人助けで」
「弟も助けてくれますぅ!? 僕いつ死ぬか分かんない程病弱なんだよぉ!? 構って欲しいんだから構ってよ!」
「こうして色々集めていれば、いつか治療法も見つかるやも知れぬ」
「このド糞冷酷野郎! 人の願いは聞き入れろ!」
我を貫き通して相手の話を聞かない所は母親譲り。いや僕もなんだけど。
しかも奇妙な生き物を収集する悪癖のある兄が領主で弟は死にかけなんて、少々領民が可哀想である。
まぁ、平穏無事な暮らしを送っているから、他の所よりマシなんだろうけど。
「ウム、ちょっと疲れた……あぁ、手近に丁度良い物があるな」
むすっとむくれる僕の顎を兄さんが掴む。
その顔は僕の目しか見ていない。
「そんなに僕の目玉が大事?」
「あぁ。不可思議な色合いに移り変わる、不揃いの色彩……奇怪でいつまでも見ていられる」
「じゃあいつまでも見てて下さいー。浮気癖とワーカーホリックなとこを治してくれ」
「それは出来んな。仕事中毒で糞みたいな悪癖のある自分もかなり興奮する」
「頭大丈夫かこのナルシスト!? 僕は素直に自分の美点を愛してるけど、アンタのそれ汚点だぞ!?」
「良いだろう。頭おかしくて」
「もーついてけねー! 何でこんなアホ好きなんだ僕はー!」
頭を抱える僕の瞼に、兄さんが接吻を落とす。
「そこは兄弟、似た物同士だろう」
「しれっと僕の性格も悪いって言ってない?」
「ナルシストで口が悪くて愉快な性格だと思っているが」
「何でキスされながら痛罵されてんだ僕は……」
この不気味な生き物を好きだとか、本当に僕は終わっている。
世界一可愛い僕の最大の汚点だと思いながらも、趣味の悪さは変えられなくて辟易とするのだった。
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