薄明かりの下で君は笑う

ひいらぎ

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「ふんふんふーん♪」

「なんで俺までお前のかわいい路線に付き合わされてんだ」

「……ぶはっ、はははは!  超かわいいよ、亮雅!」


もふもふぺん太の専門店を後にすると、周囲からの視線がより一層と感じられた。
それもそのはずだ。
テーマパークに行くようなカチューシャを亮雅につけさせ、おれはぺん太のリュックまで背負っている。
あきらかに異様な光景だ。


亮雅は優斗くんと並んでいるとみょうに大人っぽいのに、かわいいものを身につけると一気に大学生に戻ってしまう。
同い年だからか、やっぱりあの頃とあまり変わらない懐かしさがある。


「あの2人、大学生かなぁ?  かわいい……」

「うちの大学にあんな人いてほしかったぁっ」


残念、2人とも28歳のれっきとした大人です。


「亮雅って年齢不詳だよなー」

「お前がいうな」

「大学生だと思われてるよ、おれたち」

「20歳も28歳もたいして変わんねえだろ」

「いや、全然ちがうでしょ。でも、永遠に18歳でいたいとは思うな~。いっぱい遊べるし」

「……そうだな。俺もたまに友人ともっと遊びにいってればよかったと思うときがある。学生の頃から仕事のことしか考えてなかったしな」

「社畜じゃん……亮雅は責任感つよすぎなんだよ。なにも聞いてないけどさ、陸のことも色々大変だったんだろ?」

「……」


人という生きものはふしぎだ。
恋人や愛する誰かに向けるのと友人に向けるのとでは、顔や言葉が自然と変わるから。
亮雅の腕にぺん太のぬいぐるみを押しつけると、心底嫌そうな顔をした。


「なに」

「その人の苦労はその人にしかわからないから、いくつになっても遊びたくなったときに遊べばいいって、志野が言ってた」

「志野さんは教祖かよ」

「亮雅は自分に厳しすぎなんだよ、子どものときからそう。えらそうだし俺様だしムカつくけど、気づかないところでずっとおれのこと守ってくれてた。それって凄いことだしおれもお返ししたい」

「肇に励まされんのは違和感すげー……」

「バカにするなよー、おれだって大人だし男だし、友人の助けになりたいって思うよ」

「……ふ、必死すぎだろ」


本当のこというと、志野に出会えなかったらこんな言葉は出なかったかもしれない。
誰かの助けになれる自信なんてなかったから。
おれは1人で地に足をついて立てなかった。

でも、志野と出会ってそれは変わった。
きっと前向きな方に。


「まぁー……周囲の人間が頼りにできないってのはたしかにあったな。自分でやった方がはやいし」

「ひど。それで仕事抱えまくってたら優斗くんや陸がかわいそうじゃん」

「ああ、優斗が気利かして先回りで俺の雑用やってくれてたりすっから大助かりだ」

「優斗くんまじ頭よさそーだもんなぁ、頭の回転はやすぎて、おれ日本語ついてけない」

「ははは、あいつは天才肌だからな。それが当たり前の世界で生きてんだから、自分が天才だってことすら気づきやがらねー」

「おれには絶対わかんない世界だな。今度、文書のつくり方教えてもらお」


友人とこんな何気ない会話をしたのも、もう何年ぶりなんだろう。
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