親友の代わり?

あいうえお

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冷たい彼氏

fortune

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冬休みに入って三日目。俺の元に来た連絡は担任からの電話だけだった。
課題をするつもりがないのがバレてたらしく、取りに来いとお達しを受けた。

こちらは梓音の事でそんな気分じゃないというのに、だからといって行かない訳にも行かない。重くなる足を精一杯動かし学校へと向かった。

学校につけば部活休憩中の友人達がいた。

「え?樹!お前が休みに学校来るなんて珍しくね?」

「…せんせーに課題置いてったのがバレてたんだよ」

そのせいでこんな休みの日にまで学校に来なくちゃ行けなくなった。呑気に笑う友人達に八つ当たりしそうになるが、自分の心の狭さが益々浮き彫りになりそうだからと我慢した。

「てか、なんでそんな不機嫌なん?」

「別に」

「それこそ遥と一緒じゃねーの?」

「知らね」


適当に答える俺に友人たちはやれやれと言った表情を浮かべる。それがまた癪に触ったが、1人の友人の言葉で一気に意識がそちらに向いた。

「あ、でも遥はいねぇけど、梓音ならさっきそこで見たよ。梓音も課題取りに来てたっけな」

「ふーん、じゃあ俺梓音に会いに行ってくるから。バイバイ」

「え!?は?ちょっと樹!?」

梓音がここにいると聞いてすぐ俺は走り出した。先程梓音の教室を通り過ぎた時は誰もいなかったためもう帰ってしまったかもしれないが、もしかしてと期待して、玄関まで全速力で向かう。
玄関に梓音はいなかったが、あいつが電車通学しているのを知っていたので近くの駅の方向へと走り出す。

少し走ればよく見なれた後ろ姿が見えた。

「おい、梓音、止まれよ」

走ったせいか息が切れてしまったが、足を止めてくれた梓音にこれ幸いと近づき、逃げないように腕を掴んだ。

「とりあえず俺の家来いよ、すぐそこだから」

困惑した表情のまま俺の後ろをついてくる梓音。

「熱出て休んだってホント?仮病じゃなく?」

本当はそんな事が言いたいわけでは無かったのだが、今思いついた言葉はそれだけだった。

「本当だよ。どっかの誰かさんに雪が吹雪く中帰らされたんで。」

──勝手に帰ったんだろ。俺を置いて。

明らかな嫌味を初めて面と向かって言われ、思わず掴んでいた手の力がこもる。

「別に帰れなんて言ってねーだろ」


そんな事はただごめんと謝ればいいのに、俺の変なプライドが働いて、そんな言葉しかいえなかった。
その言葉に傷ついたのか、梓音はそれから家に着くまで喋ることは無かった。
家に着いてすぐいつもの部屋へと梓音押し込んだ。いつもであれば飲み物のひとつでも出して歓迎するのだが、逃げられる訳には行かないと隣に座り、口を開く。

「で?なんか言うことあるくね?」

こんな事が言いたかった訳では無いというのに俺の口から出たのは雑な一言だった。
しばらく梓音は悩んでいたようだったけど、ハッと何かに気づいたのか口を開いた。

「えっと…別れる?」

「は??ふざけてんの?」
先程の力とは比べ物にならないほど強く腕を握りしめ、戸惑う梓音を見つめれば、梓音何も分からないといった表情を浮かべた。
思わず苛立ちから舌打ちしてしまうが俺のしたいことはそれじゃない。

「お前俺の事好きだよな?」

「え?いきなり何?」

先程の流れを切ってしたその質問は梓音に益々の混乱を招くだけだったが、俺としては大事な質問だった。

「いいから早く答えろよ」

「…好きって恋愛的な意味でってこと?」

「それしかねーだろ」

「いや、それしかないわけないじゃん」

なら友人としてなら好きなのか?それとも、最初から俺は眼中になかったわけ?

「さっさと言えよ。好きだから俺と付き合ったのか?」

「……無理矢理犯されて怖かったからだよ。それになんか樹も辛そうだったし。」

その言葉を直接言われて思った以上の衝撃を受けた。ショックで力が抜けていくのを感じ、これ幸いと腕を離そうとする梓音に気づき無意識に抱きしめていた。

「じゃあ結局俺だけが好きだったって事?なんで?最初から拒否れば良かったじゃん。っ…期待させんじゃねーよ。」

実際は俺が拒否した梓音を無理矢理襲ったのにも関わらず身勝手な俺は梓音を抱きしめながら頑張って口を開いた。

「付き合っても、お、前…いっつも機嫌、良、くねーし、友達の頃の、方が、俺に冷たくなかった…ろ」

徐々に途切れ途切れになったその言葉と共に目からは水が出てしまった。
そんな俺に何を感じたのか梓音は背中を撫でた。

「そういうのやめろよ。…また期待させんじゃねーよ。」

ずずっと鼻水をすすりぐちゃぐちゃになっているであろう自分の顔を想像してまた気分が落ちた。

そこから梓音はぐしゃぐしゃになってまで泣いた俺に同情したのかは分からないが気持ちを教えてくれた。
そこでやっと梓音がとんでもない勘違いをしていることに気づいた。
すぐさまその勘違いは否定してあの時のおっさんについて聞けば従兄弟だと言う。
従兄弟だと言われてもあの距離に納得できない俺に梓音はずっと言って欲しかった「好き」を伝えてくれた。

しばらくして落ち着いてきてやっと俺は冷静になった。

今思えば泣きついて病んでる様なことを言って、とても恥ずかしいことをした気がする。

それでも梓音の「好き」が聞けたのでプラマイゼロ…どころかプラスだろう。

「好き、お前のこと一生離さないから。墓まで一緒な」

「いちいち重い」

そんなげんなりした様子の梓音ですら愛おしい。
初めてあったあの時から俺は梓音に首ったけだ。

そんな梓音と一緒に遥の恋人があの時の梓音の従兄弟だというおっさんと知って少し安心したのはここだけの話だ。
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