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第一章 異世界へと誘われ
◇そして、私は念願のスキルを獲得する。
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祭壇のある部屋に戻り、やっと「ふぅ」と息を吐き出す。匂いとかが強烈過ぎて、鼻を摘まみずっと息を止めていたのだ。
もう、あれね……とてもじゃないけど、今日はもう、あの匂いと煙りが充満する通路に戻る気になれない。
部屋から出るときは気合い十分、張り切っていたけど、今は完全に意気消沈。すっかりとやる気を無くし、指先でキキと戯れつつ、ため息を吐き出す。
そうよ、明日、明日から頑張れば良いのよ。
私の悪い癖で、都合の悪い事は直ぐに後回しにしてしまう。分かってはいるんだけどねぇ。
まぁ、今日1日ぐらいは良いよね。今日はもう、この部屋の掃除でもしますか。
床一面に生える苔を眺めて、そんな事を考える。
あっ! と、その前に……。
指先で頭を撫でられ、気持ち良さげに目を細めるキキに和みながら、メニューを呼び出してみる。通路を駆け抜けてる最中に、チューさんが色々と言ってたようなので、それを確かめようと……。
――あれっ!
メニューの機能、マップが使えるようになっている。部屋を出る前は確かに、マップの文字は暗転して使えなかったはず。それが今はマップの文字が光り、点滅を繰り返している。
うぅん、どうなってるの?……と、悩んでも仕方ないので、マップの文字をそっとタッチしてみた。
すると画面が切り替わり、今いる部屋とさっきまでいた通路、ちょうど道が別れる三叉路まで描かれていた。
ほほぅ、もしかして、オートマップ機能?
どうやら、歩いた場所が全て表示されるようだった。これはこれで、かなり便利よね。
ここが、どういった場所か分からないけど、少し遠出しても迷子になる事もなく、この部屋に戻ってくる事が出来るから、ちょっと安心。
それにしてもマップが使えるようになったのは、スキルの【測量】のお陰なのかしら。でも、測量っていうぐらいだから、通路の幅を計ったりするのかと思ってたけど、目測で良かったみたいね。何となく釈然としないけど、便利なので深く考えるのは止めよう。
それ以外にも何か変わってないかと確かめる。けど、レベルは4に上がっているにも拘わらず、ステータスの類いはやはり殆どが読み取れない。それに落胆しつつも読み進めていくと、幾つかのクエストを達成していたのが分かった。
あっ、「スライム10匹を討伐しよう」も達成してる。まあ、あれだけスライムがいて、あの炎だからねぇ。10匹といわず、もっと焼き殺してるかも。
しかも、このクエストは難易度がEになってるわ。他の達成クエストが難易度Fなのに、これはランクがひとつ上という事なのかしらねぇ。1匹ではなく、10匹の討伐だから当然といえば当然かな。
そのかわり、クエスト「地図を作成してみよう」が達成出来ていない。
まあ、確かに、まだ地図と呼べる状態じゃないけど。これはもっと、地図と呼べる程度には範囲を広げないと駄目なのかもね。
でも、スライムのクエスト以外にも、幾つかは達成出来てるようだ。
待てよ、と、なると……。
私は慌てて画面をスクロールさせ、スキルの覧まで戻す。
おっ、やっぱり。
スキルポイントが60になってますよ。
どうやら、レベルアップとクエストの達成で増えたみたいね。
これで念願のスキル【鑑定】が取れる。【鑑定】のスキルには確か、50ポイントが必要だった。今の私なら十分に修得する事が出来る。
あっ、でも、【水魔法】も捨てがたい。
だって、風呂とまで贅沢は言わないけど、やっぱり女の子だから。シャワーぐらいは浴びたい訳で。あの魔法の水筒からだとチョロチョロとしか水が出てこないし、どばぁと水を出して汗を流したいのよ。
むむむ……しばらく悩むけど、結局、最初の予定通り、【鑑定】のスキルを取る事にする。
今のところ、私以外に誰も居ない訳だし、1日や2日ぐらいは私が辛抱すれば良いだけ。その間にまたポイントを稼げば良いかと思ってると、キキがスンスンと鼻を鳴らして、私の匂いを嗅いでいる。
ちょっ、ちょっとぉ、止めなさいよね、キキ!
まだ、そんなに匂ってないと思うけど……。
キキの行動を気にしつつも、修得可能のスキル覧から【鑑定】を選ぶ。
……何も変わらない。
体にも、感覚も、さっきまでと何も変わらない。スキルポイントを見ると、確かに60から10にと、50ポイントが減っている。もっとこう、劇的な変化があっても良さそうだけど。
あっ、でも、痛いのは嫌だからね。
少し憮然としながら、試しにステータスを眺めてみる。
おっ、み、見える!見えるぞ!
ちょっと嬉しくて、ニュータイプぽい台詞を言ってみた。
ステータス
名前 :ユウコ・キムラ
年齢 :16
種族 :ヒューマン
level :4(※※※)
職業 :従魔師Lv2(※※※)
:弓師Lv1(※※※)
称号 :※※※
HP :70
MP :55
----------------------
筋力 :※※※
耐久力 :※※※
素早さ :※※※
知力 :※※※
魔力 :※※※
精神力 :※※※
器用さ :※※※
運 :※※※
----------------------
固有スキル
【チュートリアル】
スキル(SP10)
【弓術 Lv1(※※※)】
【火炎魔法 Lv1(※※※)】
【集中 Lv1(※※※)】
【平常心 Lv1(※※※)】
【測量 Lv1(※※※)】
【シンクロ Lv1(※※※)】
【鑑定 Lv1(※※※)】
加護
【※※※】
うぅん、それでもまだ半分ぐらいは見る事が出来ない。でもこれで、多少は分かるようになったわね。
ゲームをあまりしたことの無い私でも、HPとMPぐらいは分かる。
多分、体力と魔力の事だよね。
それに、修得してるスキルが表示されてるのが、大いに助かるわ。けど、スキルにもレベルがあるのかぁ……。【鑑定】のレベルを上げれば、見えないところも見えるようになるのかな。
あっ、【火炎魔法】。
やっばり、火に関する魔法を持っていた。けど、【火魔法】じゃなく【火炎魔法】?
他の魔法が、水、土、風とかだったから【火魔法】だと思ってた。
……まぁ、良いか。
それと、【弓術】【集中】【平常心】【測量】は、何となく分かるけど、【シンクロ】に関しては良く分からない。
毎度の事ながら、説明不足には参るわよ。誰かに説明して貰いたいところ。無い物ねだりをしても仕方ないので、何かの役にはたってると思い、今はスルーする。
それにしても、本当にゲームに似た世界なのね。レベルとかスキルとか、あまりの非現実さに呆れてしまう。
といっても、ここは非現実なようで、現実の異世界。当面はこの部屋を拠点に、レベル上げをした方が良さそうだ。
とはいったものの、さっきまでいた、沢山のスライムが蠢く通路を思い出し、恐怖に肌が粟立つ。
ちょっと、トラウマになってるかも。
あ、そうそうまた何かアイテムを落としてたかもと思うけど、やっぱりあの場所に戻る気には今はなれない。
嫌だなあと思いつつ、もう一度、マップを眺めていて、ふと思い付く。
そういえば、他の壁はどうなのだろう。
今までは、祭壇の正面に位置する壁から出入りしていた。それは、ゲームの『始まりの迷宮』からこの部屋に入る時に通った壁だったから。
試してみる価値はあるわね。
私は右側の壁に近寄り、手のひらをあてて念じる。
――お願い、ここから出して。
すると、正面の壁と同じように、ピシリと音を鳴らして縦に亀裂が走る。そして、グニャリと左右に別れ、出口が開いた。しかも、あのスライムがいた通路とは別の場所へと繋がっていたのだ。
「……こ、これは」
私の口から、思わず、驚きの声が漏れる。
何故なら、目の前には満々とした水を湛える、地底湖が広がっていたからだった。
もう、あれね……とてもじゃないけど、今日はもう、あの匂いと煙りが充満する通路に戻る気になれない。
部屋から出るときは気合い十分、張り切っていたけど、今は完全に意気消沈。すっかりとやる気を無くし、指先でキキと戯れつつ、ため息を吐き出す。
そうよ、明日、明日から頑張れば良いのよ。
私の悪い癖で、都合の悪い事は直ぐに後回しにしてしまう。分かってはいるんだけどねぇ。
まぁ、今日1日ぐらいは良いよね。今日はもう、この部屋の掃除でもしますか。
床一面に生える苔を眺めて、そんな事を考える。
あっ! と、その前に……。
指先で頭を撫でられ、気持ち良さげに目を細めるキキに和みながら、メニューを呼び出してみる。通路を駆け抜けてる最中に、チューさんが色々と言ってたようなので、それを確かめようと……。
――あれっ!
メニューの機能、マップが使えるようになっている。部屋を出る前は確かに、マップの文字は暗転して使えなかったはず。それが今はマップの文字が光り、点滅を繰り返している。
うぅん、どうなってるの?……と、悩んでも仕方ないので、マップの文字をそっとタッチしてみた。
すると画面が切り替わり、今いる部屋とさっきまでいた通路、ちょうど道が別れる三叉路まで描かれていた。
ほほぅ、もしかして、オートマップ機能?
どうやら、歩いた場所が全て表示されるようだった。これはこれで、かなり便利よね。
ここが、どういった場所か分からないけど、少し遠出しても迷子になる事もなく、この部屋に戻ってくる事が出来るから、ちょっと安心。
それにしてもマップが使えるようになったのは、スキルの【測量】のお陰なのかしら。でも、測量っていうぐらいだから、通路の幅を計ったりするのかと思ってたけど、目測で良かったみたいね。何となく釈然としないけど、便利なので深く考えるのは止めよう。
それ以外にも何か変わってないかと確かめる。けど、レベルは4に上がっているにも拘わらず、ステータスの類いはやはり殆どが読み取れない。それに落胆しつつも読み進めていくと、幾つかのクエストを達成していたのが分かった。
あっ、「スライム10匹を討伐しよう」も達成してる。まあ、あれだけスライムがいて、あの炎だからねぇ。10匹といわず、もっと焼き殺してるかも。
しかも、このクエストは難易度がEになってるわ。他の達成クエストが難易度Fなのに、これはランクがひとつ上という事なのかしらねぇ。1匹ではなく、10匹の討伐だから当然といえば当然かな。
そのかわり、クエスト「地図を作成してみよう」が達成出来ていない。
まあ、確かに、まだ地図と呼べる状態じゃないけど。これはもっと、地図と呼べる程度には範囲を広げないと駄目なのかもね。
でも、スライムのクエスト以外にも、幾つかは達成出来てるようだ。
待てよ、と、なると……。
私は慌てて画面をスクロールさせ、スキルの覧まで戻す。
おっ、やっぱり。
スキルポイントが60になってますよ。
どうやら、レベルアップとクエストの達成で増えたみたいね。
これで念願のスキル【鑑定】が取れる。【鑑定】のスキルには確か、50ポイントが必要だった。今の私なら十分に修得する事が出来る。
あっ、でも、【水魔法】も捨てがたい。
だって、風呂とまで贅沢は言わないけど、やっぱり女の子だから。シャワーぐらいは浴びたい訳で。あの魔法の水筒からだとチョロチョロとしか水が出てこないし、どばぁと水を出して汗を流したいのよ。
むむむ……しばらく悩むけど、結局、最初の予定通り、【鑑定】のスキルを取る事にする。
今のところ、私以外に誰も居ない訳だし、1日や2日ぐらいは私が辛抱すれば良いだけ。その間にまたポイントを稼げば良いかと思ってると、キキがスンスンと鼻を鳴らして、私の匂いを嗅いでいる。
ちょっ、ちょっとぉ、止めなさいよね、キキ!
まだ、そんなに匂ってないと思うけど……。
キキの行動を気にしつつも、修得可能のスキル覧から【鑑定】を選ぶ。
……何も変わらない。
体にも、感覚も、さっきまでと何も変わらない。スキルポイントを見ると、確かに60から10にと、50ポイントが減っている。もっとこう、劇的な変化があっても良さそうだけど。
あっ、でも、痛いのは嫌だからね。
少し憮然としながら、試しにステータスを眺めてみる。
おっ、み、見える!見えるぞ!
ちょっと嬉しくて、ニュータイプぽい台詞を言ってみた。
ステータス
名前 :ユウコ・キムラ
年齢 :16
種族 :ヒューマン
level :4(※※※)
職業 :従魔師Lv2(※※※)
:弓師Lv1(※※※)
称号 :※※※
HP :70
MP :55
----------------------
筋力 :※※※
耐久力 :※※※
素早さ :※※※
知力 :※※※
魔力 :※※※
精神力 :※※※
器用さ :※※※
運 :※※※
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固有スキル
【チュートリアル】
スキル(SP10)
【弓術 Lv1(※※※)】
【火炎魔法 Lv1(※※※)】
【集中 Lv1(※※※)】
【平常心 Lv1(※※※)】
【測量 Lv1(※※※)】
【シンクロ Lv1(※※※)】
【鑑定 Lv1(※※※)】
加護
【※※※】
うぅん、それでもまだ半分ぐらいは見る事が出来ない。でもこれで、多少は分かるようになったわね。
ゲームをあまりしたことの無い私でも、HPとMPぐらいは分かる。
多分、体力と魔力の事だよね。
それに、修得してるスキルが表示されてるのが、大いに助かるわ。けど、スキルにもレベルがあるのかぁ……。【鑑定】のレベルを上げれば、見えないところも見えるようになるのかな。
あっ、【火炎魔法】。
やっばり、火に関する魔法を持っていた。けど、【火魔法】じゃなく【火炎魔法】?
他の魔法が、水、土、風とかだったから【火魔法】だと思ってた。
……まぁ、良いか。
それと、【弓術】【集中】【平常心】【測量】は、何となく分かるけど、【シンクロ】に関しては良く分からない。
毎度の事ながら、説明不足には参るわよ。誰かに説明して貰いたいところ。無い物ねだりをしても仕方ないので、何かの役にはたってると思い、今はスルーする。
それにしても、本当にゲームに似た世界なのね。レベルとかスキルとか、あまりの非現実さに呆れてしまう。
といっても、ここは非現実なようで、現実の異世界。当面はこの部屋を拠点に、レベル上げをした方が良さそうだ。
とはいったものの、さっきまでいた、沢山のスライムが蠢く通路を思い出し、恐怖に肌が粟立つ。
ちょっと、トラウマになってるかも。
あ、そうそうまた何かアイテムを落としてたかもと思うけど、やっぱりあの場所に戻る気には今はなれない。
嫌だなあと思いつつ、もう一度、マップを眺めていて、ふと思い付く。
そういえば、他の壁はどうなのだろう。
今までは、祭壇の正面に位置する壁から出入りしていた。それは、ゲームの『始まりの迷宮』からこの部屋に入る時に通った壁だったから。
試してみる価値はあるわね。
私は右側の壁に近寄り、手のひらをあてて念じる。
――お願い、ここから出して。
すると、正面の壁と同じように、ピシリと音を鳴らして縦に亀裂が走る。そして、グニャリと左右に別れ、出口が開いた。しかも、あのスライムがいた通路とは別の場所へと繋がっていたのだ。
「……こ、これは」
私の口から、思わず、驚きの声が漏れる。
何故なら、目の前には満々とした水を湛える、地底湖が広がっていたからだった。
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