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第四章
先生を誘惑しよう
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「説明しそびれて、悪かったな。……実は高階先生に頼まれたんだ。付き合ってる振りをして下さいって」
「え? 振りって、なんで?」
「……名前は言えないが、3年の生徒に真剣に好きだから付き合って欲しいと言われたらしいんだ」
「へえ……」
確かに高階先生は男子からの人気は高いし、真剣に好きな人の1人や2人、居るかもしれないけど。
「それでな、あんまり思い詰めているようにも感じたから、無下に生徒だから問題外だとも言えなくなって、つい、俺と付き合っていると答えてしまったようなんだよ」
「なにそれ……、ついって。じゃあ何? これからも、この嘘続けていく事になってるの?」
「まあ、そうなるな。その場しのぎの嘘だったなんてその子が知ったら、却って良くないだろう?」
「…………」
大人の事情なのかもしれないけど、それってなんかヤダ。
俺はこれからも、あんなにベタベタしている先生たちを見ないといけないって分け?
「そんな顔するな。一応、俺にもメリットはあるんだよ」
「メリット? ……って、もしかして俺とのカモフラージュってこと?」
俺がそう言うと、一瞬先生は小首を傾げる。(……可愛い)
だけどすぐに笑って否定した。
「いや、そうじゃないよ。結果的にはそうなるかもしれないけど、そうじゃなくて。……南に隠し事をする気は無いからあえて言うけど、じつは俺、小橋先生から好き好き攻撃されてて、ちょっと困ってもいたんだよな。だから、まあちょうど良いかと思って、高階先生のその持ちかけに乗っかったってわけ」
「そう、なんだ」
確かに、俺から見ても小百合先生って紫藤先生に好意を抱いているって、見え見えだったもんな。
「……分かった」
分かったとは言っても、面白くないのはやっぱり変わらないので、俺は唇を尖らせて剥れて見せる。
先生は、俺のその顔見て苦笑いをしたけれど、すぐにその表情を引っ込めて、じっと俺を見る。
「なあ、南」
「うん?」
「俺のことは分かったよな」
「うん」
「お前は? なんで俺が嫌がる鳥海先生のところに行ったんだ?」
先生は、薄っすら笑みを湛えてはいるけれど、声音が少し冷たくなった。
……もしかして、思い出してまた怒ってらっしゃる?
「……だってさ」
「だって?」
「先生が高階先生と付き合ってるって聞かされて、しかも2人くっ付いて楽しそーに腕組んでるところ見ちゃってさ。なのに、先生からは何の弁解もしてこないし……。そんな時に、お茶でも飲みに来ないか?みたいに誘われたらさ……。つい、行ってみようかなっても、思うだろ?」
かなり愚痴っぽくなっちゃったけど、本当のことだ。俺は隠さず先生にすべて話した。
「…………」
――んだけど、先生はまだ納得のいかない顔をしている。
「もう、先生! 先生が心配するようなことは本当に何も無かったんだからさ。そんな顔すんなよ」
そうだよ!
せっかく2人っきりで、しかも限られた時間なんだから、もっと有意義に時間を使わなきゃもったいないよ!
俺はさらに先生に近づいて、先生のシャツのボタンに手をかけた。
「こら、何してるんだ」
「うん? 先生、脱がしちゃおうかと思って」
ボタンを一つ、二つと外している途中で、先生の手が俺の手を止める。
「……お前、俺が注意したことをもう忘れたのか?」
「忘れてないよ。でも、ちゃんと鍵かけたし、大丈夫でしょ?」
「それもそうだが、そうじゃなくて。俺は忍耐には自信がないんだ。そんな風に煽って、後で泣くような事になっても知らないぞ」
泣くって……。
――あ
綺麗だった。先生すごく綺麗で獰猛で……。
俺、喰われちまうんじゃないかと思った。
だけど、だけどあの時俺、ちっとも怖いとは思わなかったよ。
それどころか……、
「ぞくぞくしたんだよ、俺。先生、すごく綺麗で色っぽくて」
「南……」
「先生のことが好きなんだ。俺、先生のことが凄く欲しいんだよ。……だから」
きっと俺の目は今、欲情に塗れてる。そんな目で先生を見上げたら、先生は一瞬目を見開いて軽く息を吐いた。
そして観念したかのように微笑んで、俺の頬に手を寄せる。
ゆっくり近づいてくる先生の唇を、俺は目を瞑って受け入れた。
「え? 振りって、なんで?」
「……名前は言えないが、3年の生徒に真剣に好きだから付き合って欲しいと言われたらしいんだ」
「へえ……」
確かに高階先生は男子からの人気は高いし、真剣に好きな人の1人や2人、居るかもしれないけど。
「それでな、あんまり思い詰めているようにも感じたから、無下に生徒だから問題外だとも言えなくなって、つい、俺と付き合っていると答えてしまったようなんだよ」
「なにそれ……、ついって。じゃあ何? これからも、この嘘続けていく事になってるの?」
「まあ、そうなるな。その場しのぎの嘘だったなんてその子が知ったら、却って良くないだろう?」
「…………」
大人の事情なのかもしれないけど、それってなんかヤダ。
俺はこれからも、あんなにベタベタしている先生たちを見ないといけないって分け?
「そんな顔するな。一応、俺にもメリットはあるんだよ」
「メリット? ……って、もしかして俺とのカモフラージュってこと?」
俺がそう言うと、一瞬先生は小首を傾げる。(……可愛い)
だけどすぐに笑って否定した。
「いや、そうじゃないよ。結果的にはそうなるかもしれないけど、そうじゃなくて。……南に隠し事をする気は無いからあえて言うけど、じつは俺、小橋先生から好き好き攻撃されてて、ちょっと困ってもいたんだよな。だから、まあちょうど良いかと思って、高階先生のその持ちかけに乗っかったってわけ」
「そう、なんだ」
確かに、俺から見ても小百合先生って紫藤先生に好意を抱いているって、見え見えだったもんな。
「……分かった」
分かったとは言っても、面白くないのはやっぱり変わらないので、俺は唇を尖らせて剥れて見せる。
先生は、俺のその顔見て苦笑いをしたけれど、すぐにその表情を引っ込めて、じっと俺を見る。
「なあ、南」
「うん?」
「俺のことは分かったよな」
「うん」
「お前は? なんで俺が嫌がる鳥海先生のところに行ったんだ?」
先生は、薄っすら笑みを湛えてはいるけれど、声音が少し冷たくなった。
……もしかして、思い出してまた怒ってらっしゃる?
「……だってさ」
「だって?」
「先生が高階先生と付き合ってるって聞かされて、しかも2人くっ付いて楽しそーに腕組んでるところ見ちゃってさ。なのに、先生からは何の弁解もしてこないし……。そんな時に、お茶でも飲みに来ないか?みたいに誘われたらさ……。つい、行ってみようかなっても、思うだろ?」
かなり愚痴っぽくなっちゃったけど、本当のことだ。俺は隠さず先生にすべて話した。
「…………」
――んだけど、先生はまだ納得のいかない顔をしている。
「もう、先生! 先生が心配するようなことは本当に何も無かったんだからさ。そんな顔すんなよ」
そうだよ!
せっかく2人っきりで、しかも限られた時間なんだから、もっと有意義に時間を使わなきゃもったいないよ!
俺はさらに先生に近づいて、先生のシャツのボタンに手をかけた。
「こら、何してるんだ」
「うん? 先生、脱がしちゃおうかと思って」
ボタンを一つ、二つと外している途中で、先生の手が俺の手を止める。
「……お前、俺が注意したことをもう忘れたのか?」
「忘れてないよ。でも、ちゃんと鍵かけたし、大丈夫でしょ?」
「それもそうだが、そうじゃなくて。俺は忍耐には自信がないんだ。そんな風に煽って、後で泣くような事になっても知らないぞ」
泣くって……。
――あ
綺麗だった。先生すごく綺麗で獰猛で……。
俺、喰われちまうんじゃないかと思った。
だけど、だけどあの時俺、ちっとも怖いとは思わなかったよ。
それどころか……、
「ぞくぞくしたんだよ、俺。先生、すごく綺麗で色っぽくて」
「南……」
「先生のことが好きなんだ。俺、先生のことが凄く欲しいんだよ。……だから」
きっと俺の目は今、欲情に塗れてる。そんな目で先生を見上げたら、先生は一瞬目を見開いて軽く息を吐いた。
そして観念したかのように微笑んで、俺の頬に手を寄せる。
ゆっくり近づいてくる先生の唇を、俺は目を瞑って受け入れた。
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