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第四章
まさか、だよな?
新入生歓迎スポーツ大会は滞りなく進んでいった。
特に、女装した猛者たちが真剣に走る姿には、みんな大笑いしながら応援していた。
「あー、腹よじれるかと思った」
「やっぱ、俺パン食い競争で良かったわー。女装とかとんでも無いぜ」
「悪かったな。お前ら笑いすぎだぞ!」
女装リレーから帰って来た木田が、真っ赤な顔をして怒っている。
「わりー、わりー。ご愁傷様」
そう言いながらも、利一や赤井はまだ笑いが収まらないようだ。
「俺、ちょっとトイレ行って来るわ」
「おう」
昼休みにギリギリまで先生のトコにいたせいで、トイレにも行ってなかった。
俺は目立たないようにと腰を軽く曲げながら、走ってトイレへと向かった。
△△△
「はーっ、すっきりした」
手を洗って鼻歌交じりに歩いていると、廊下の向こう側から鳥海先生が歩いて来た。
「やあ、南くん」
「あ……、ども」
鳥海先生は良い先生だと思うんだけど、この先生のせいで紫藤先生と喧嘩してしまったのも事実だ。
鳥海先生に何の非も無いのは分かっているのだけど、あまり親しくしない方がいいんだろうな……。
「元気になったみたいだね」
「え?」
「好きな人とは、……うまくいったの?」
「あ……、あー。そういうわけじゃ無いんですけど、片思いだし。開き直りました」
ちょっとまずかったかなと思った。
あの時は先生のことでイライラしちゃってて本音をついぼやいてしまったけど、俺と先生のことは秘密にしないといけない事だ。
鳥海先生に俺と紫藤先生のことがバレルとは思わないけど、それでも警戒しておいた方が良いのかもしれないって、そう思った。
「そう、か」
「……はい。じゃあ、俺……」
「さっきはちょっと残念だったなあ」
「……え?」
さっさとグラウンドに戻ろうと思ったのに、なぜか鳥海先生は話を続けようとする。
訝しく思って振り返ると、ニコリと笑われた。
なんだ?
「借り物競争。1番好きな先生って言ってたろ? 俺を選んでくれると嬉しかったな」
「……へ?」
一瞬、変にドキンとした。
紫藤先生や渚さんが、鳥海先生には注意しろだなんて余計なことを心配していたせいかもしれないけど。
「南くんとはちょっとは親しくなれてるかなって、思ってたんだけどなぁ」
「あ……、だって。普通はあの場合、教科担当しか思い出さないでしょ」
俺は無難であろう言い訳を考えながら、手のひらからは変に汗が滲み出ていた。
まさか本当に俺の事好きとかって……。
いやいやいや。いくら何でもそれは無いだろう。
鳥海先生が俺の事特別に思っているとか。口説こうとしているとか。
ありえないし!
「そうかなあ。だってホラ。高階先生は選ばれてたよ?」
「高階先生は特別でしょ! 俺も1番に考えましたよ!」
嘘だけど。
「おっぱい大きいから?」
「そうそう!」
「……男の子だねぇ。でも、紫藤先生には勝ちたかったな」
「え?」
「同じ男の先生との勝負なら、勝ちたかったよ」
「あー……」
なんだろ。嫌にグイグイ来るよな。
グラウンドにとっとと戻った方が無難かも。
「鳥海先生も教科担当だったら、頭に浮かんだんじゃないかな。じゃ、俺もう戻らないと」
「ああ。呼び止めてごめんね。カウンセリングルームには、いつでも遊びにおいでよ」
「はい」
ペコリと頭を下げて俺はグラウンドへと走って行った。
なんだか嫌に、バクバクと心臓が煩い。
考え過ぎだとも思うけど、渚さんの言うようにあまり隙を作らないようにしなくちゃと、漠然とだけどそう思った。
特に、女装した猛者たちが真剣に走る姿には、みんな大笑いしながら応援していた。
「あー、腹よじれるかと思った」
「やっぱ、俺パン食い競争で良かったわー。女装とかとんでも無いぜ」
「悪かったな。お前ら笑いすぎだぞ!」
女装リレーから帰って来た木田が、真っ赤な顔をして怒っている。
「わりー、わりー。ご愁傷様」
そう言いながらも、利一や赤井はまだ笑いが収まらないようだ。
「俺、ちょっとトイレ行って来るわ」
「おう」
昼休みにギリギリまで先生のトコにいたせいで、トイレにも行ってなかった。
俺は目立たないようにと腰を軽く曲げながら、走ってトイレへと向かった。
△△△
「はーっ、すっきりした」
手を洗って鼻歌交じりに歩いていると、廊下の向こう側から鳥海先生が歩いて来た。
「やあ、南くん」
「あ……、ども」
鳥海先生は良い先生だと思うんだけど、この先生のせいで紫藤先生と喧嘩してしまったのも事実だ。
鳥海先生に何の非も無いのは分かっているのだけど、あまり親しくしない方がいいんだろうな……。
「元気になったみたいだね」
「え?」
「好きな人とは、……うまくいったの?」
「あ……、あー。そういうわけじゃ無いんですけど、片思いだし。開き直りました」
ちょっとまずかったかなと思った。
あの時は先生のことでイライラしちゃってて本音をついぼやいてしまったけど、俺と先生のことは秘密にしないといけない事だ。
鳥海先生に俺と紫藤先生のことがバレルとは思わないけど、それでも警戒しておいた方が良いのかもしれないって、そう思った。
「そう、か」
「……はい。じゃあ、俺……」
「さっきはちょっと残念だったなあ」
「……え?」
さっさとグラウンドに戻ろうと思ったのに、なぜか鳥海先生は話を続けようとする。
訝しく思って振り返ると、ニコリと笑われた。
なんだ?
「借り物競争。1番好きな先生って言ってたろ? 俺を選んでくれると嬉しかったな」
「……へ?」
一瞬、変にドキンとした。
紫藤先生や渚さんが、鳥海先生には注意しろだなんて余計なことを心配していたせいかもしれないけど。
「南くんとはちょっとは親しくなれてるかなって、思ってたんだけどなぁ」
「あ……、だって。普通はあの場合、教科担当しか思い出さないでしょ」
俺は無難であろう言い訳を考えながら、手のひらからは変に汗が滲み出ていた。
まさか本当に俺の事好きとかって……。
いやいやいや。いくら何でもそれは無いだろう。
鳥海先生が俺の事特別に思っているとか。口説こうとしているとか。
ありえないし!
「そうかなあ。だってホラ。高階先生は選ばれてたよ?」
「高階先生は特別でしょ! 俺も1番に考えましたよ!」
嘘だけど。
「おっぱい大きいから?」
「そうそう!」
「……男の子だねぇ。でも、紫藤先生には勝ちたかったな」
「え?」
「同じ男の先生との勝負なら、勝ちたかったよ」
「あー……」
なんだろ。嫌にグイグイ来るよな。
グラウンドにとっとと戻った方が無難かも。
「鳥海先生も教科担当だったら、頭に浮かんだんじゃないかな。じゃ、俺もう戻らないと」
「ああ。呼び止めてごめんね。カウンセリングルームには、いつでも遊びにおいでよ」
「はい」
ペコリと頭を下げて俺はグラウンドへと走って行った。
なんだか嫌に、バクバクと心臓が煩い。
考え過ぎだとも思うけど、渚さんの言うようにあまり隙を作らないようにしなくちゃと、漠然とだけどそう思った。
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