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第五章
父さん、でかした!
靴を脱いで上がる手前で、視界の隅に父さんの靴が目に入った。
あ、父さん今日はもう帰って来てるんだ。
先生緊張してなきゃいいけど……。
「お帰り、陽太」
「ただいまー」
今日は父さんも居るので、先生は俺の隣に席を詰めた状態で腰かけていた。どうやら椅子は、父さんの書斎の椅子を持ってきたようだ。
食卓には、豆ごはんにカツオのたたき、キノコがたくさん入ったみそ汁に高野豆腐と人参、筍の煮物が並んでいた。
母さんも先生が独り暮らしだと知っているから、きっと家庭の味を意識して作ってくれたに違いない。
「紫藤先生」
「はい」
父さんに呼ばれて先生が顔を向こうに向ける。
チラッと見たその顔は、少し緊張しているようだ。
「先生は、日本酒はいける方かい?」
「はい……。嗜む程度には」
「そうか。母さん」
「ハイハイ」
母さんが笑って席を立とうとしたところで、先生は焦って止めに入った。
「あ、すみません。飲めはしますが車で来ていますので」
「なんだ、それは残念だな」
それは本当に残念そうだった。
父さんは晩酌を楽しみの一つとしていて、週に三日くらいそれを楽しんでいる。だけど、この家では父さん以外にお酒を飲むことが出来ないので、一人でチビチビとやるしかなかったのだ。
「……家はここからは遠いのかい?」
「いえ、それほど離れてはいません」
「そうか……。じゃあ、今日はこの家に泊って行ったらいい。そうだ! そうしなさい。母さん、酒」
「え!? いいえ、とんでもない。そこまでお邪魔するわけには……!」
「なに、遠慮なんかしないで下さい。母さん、確か下着の新しいのも歯ブラシも置きがあったよな」
「ああ、そうね。大丈夫、替えならあるわ。じゃあ、支度します」
「えっ!? いや、あの……。待ってください。そういうわけには……」
きっと先生の物腰柔らかな態度を、父さんも気に入ったんだろう。
それと、晩酌の相手が出来たと単純に喜んでいるようだった。
「先生、観念して父さんの晩酌の相手してやってよ」
「そうですよ、先生。この家では誰も父さんの相手をしてやれないから、先生が来てくれて心底喜んでるんですから」
俺のダメ押しに、今度は兄貴までもが加勢した。
もうこうなったら観念するしかないだろう。俺は心の中でほくそ笑んだ。
あ、父さん今日はもう帰って来てるんだ。
先生緊張してなきゃいいけど……。
「お帰り、陽太」
「ただいまー」
今日は父さんも居るので、先生は俺の隣に席を詰めた状態で腰かけていた。どうやら椅子は、父さんの書斎の椅子を持ってきたようだ。
食卓には、豆ごはんにカツオのたたき、キノコがたくさん入ったみそ汁に高野豆腐と人参、筍の煮物が並んでいた。
母さんも先生が独り暮らしだと知っているから、きっと家庭の味を意識して作ってくれたに違いない。
「紫藤先生」
「はい」
父さんに呼ばれて先生が顔を向こうに向ける。
チラッと見たその顔は、少し緊張しているようだ。
「先生は、日本酒はいける方かい?」
「はい……。嗜む程度には」
「そうか。母さん」
「ハイハイ」
母さんが笑って席を立とうとしたところで、先生は焦って止めに入った。
「あ、すみません。飲めはしますが車で来ていますので」
「なんだ、それは残念だな」
それは本当に残念そうだった。
父さんは晩酌を楽しみの一つとしていて、週に三日くらいそれを楽しんでいる。だけど、この家では父さん以外にお酒を飲むことが出来ないので、一人でチビチビとやるしかなかったのだ。
「……家はここからは遠いのかい?」
「いえ、それほど離れてはいません」
「そうか……。じゃあ、今日はこの家に泊って行ったらいい。そうだ! そうしなさい。母さん、酒」
「え!? いいえ、とんでもない。そこまでお邪魔するわけには……!」
「なに、遠慮なんかしないで下さい。母さん、確か下着の新しいのも歯ブラシも置きがあったよな」
「ああ、そうね。大丈夫、替えならあるわ。じゃあ、支度します」
「えっ!? いや、あの……。待ってください。そういうわけには……」
きっと先生の物腰柔らかな態度を、父さんも気に入ったんだろう。
それと、晩酌の相手が出来たと単純に喜んでいるようだった。
「先生、観念して父さんの晩酌の相手してやってよ」
「そうですよ、先生。この家では誰も父さんの相手をしてやれないから、先生が来てくれて心底喜んでるんですから」
俺のダメ押しに、今度は兄貴までもが加勢した。
もうこうなったら観念するしかないだろう。俺は心の中でほくそ笑んだ。
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