91 / 158
第六章
遠山さんという人
ご飯を食べ終えたところで、テキパキと志緒利さんが食器を片付けた。紫藤先生が認めるだけあって、他の女性陣とは大違いだ。
ポケーッとその様子を眺めていたら、後ろから犬でも愛でるようにわしゃわしゃと頭を撫でられた。
先生とは違う感触に誰?と思って振り向くと、渚さんが楽しそうに笑って俺を撫で繰り回している。
「やっぱり可愛いよなー、南くんは。こうしていると、ハナを思い出す」
「は、ハナ?」
なんですか、それ。
「んー、俺の小学校の頃の愛犬。ちょっと前に天国に召されちゃったけどな」
そう言いながら、俺をギューッと抱きしめる。
……不思議だ。
先生以外の男の人に抱きしめられるだなんてとんでもないって思っていたけど、渚さんのそれは、全然イヤな感じがしない。変な話だけれど、本当に渚さんの愛犬にでもなった気分だ。
しかも普段ならそんな渚さんを追い払う先生も、今は呆れたように笑いながら俺たちを見ていた。
「……南くんをここに招待しようって言い出したのは、渚だって聞いたんだけど本当なのか?」
「うんー? そうだけど。初めて病院で遭遇した時から意気投合しちゃって。なー?」
「はい」
これは鳥海先生の時にも使った言い訳だ。
それを今使っているのにも、きっと訳があるんだろうな。
だってこの遠山さんって人昨日は普通の感じだったのに、なんだか今朝起きてからは、変な感じで絡んでくるんだもん。
「病院って、何? 紫藤の恩人って事にも関係あるのか?」
更に突っ込んでくる遠山さんに、先生が腰に手を当てため息を吐いた。
「お前、そこまで聞く?」
「聞くだろ、普通に! どうせ渚や柳瀬は知ってるんだろう?」
あれ?
もしかしてこの人、先生に相手にされてないことに拗ねている……?
「別に大したことじゃないし。遭遇した渚しか知らないよ」
先生の言葉に、遠山さんは柳瀬さんに確認するように目を向ける。
「うん。俺、南くんが病院に行ったことなんて聞いてないよ」
「そう……、なんだ。で?」
一瞬、なんだって表情になった遠山さんだったけど、どうやらそれでも知りたいという気持ちは変わらないようだった。続けて返事を催促した。
女性陣も、興味津々にこちらに顔を向けている。
「……俺のことを気に入らないって生徒も中には居てさ、そいつらが俺をボコボコにしようと目論んだようなんだよ。それをたまたま聞いた南が止めに入って、俺の代わりに逆に凹られちゃったんだよ」
「でも先生、俺が知らないだけでホントはとっても強かったんだよね。俺が余計なことをしたせいで、却って事が大きくなっちゃったみたいで、結局迷惑かけちゃったんだけど……」
「そんな事は無いって言ってるだろ。あれに関しては、俺の方が南に迷惑をかけたんだから」
「なるほど……。それで紫藤は南くんと仲良くなったんだ」
「そうかもなー。俺がたまたま病院で南くんと澪に会って、しかも俺が南くんと意気投合しちゃったから。もともと教師と生徒の間柄なんだから、関係的にも距離が近くなるのは普通だろうけど」
渚さんが、紫藤先生と遠山さんの話に割って入り、補足した。
その言い回しからも、やっぱり遠山さんに警戒心を抱いているような確信が、俺の中では強くなっていった。
「なるほどねー。……俺は紫藤が教師になるって聞いた時は、はっきり言って選択を間違えてるだろって思ってた」
「ああ? 失礼な奴だな」
「だってそうだろ。お前、頭は良くて教え方も上手いかもしれないけど、全然他人に興味なんてないじゃんか。そんなんで、どうやって生徒と対峙するんだよって思うだろ、フツー」
「でも先生、俺ら生徒と良く喋ってくれるよ? 女子なんか、先生と遭遇したら普通に一緒に歩きながらお喋りしてるし。先生の周りって可愛い子がたむろするから、俺ら男子は羨ましがってる」
俺のその一言に、遠山さんが目を丸くした。
「良く喋る? お前が? 生徒と? 嘘だろ……」
唖然と呟く遠山さんに、柳瀬さんはただ単に遠山さんの拗ねているらしき行動に困ったような顔をして、渚さんは声を殺して笑っている。
もしかしたら先生が、学校で演技をしていることを知っているのは渚さんだけなのかもしれない。
女性陣らも良く喋るという言葉に、やはり信じられないといった顔をしていた。
ポケーッとその様子を眺めていたら、後ろから犬でも愛でるようにわしゃわしゃと頭を撫でられた。
先生とは違う感触に誰?と思って振り向くと、渚さんが楽しそうに笑って俺を撫で繰り回している。
「やっぱり可愛いよなー、南くんは。こうしていると、ハナを思い出す」
「は、ハナ?」
なんですか、それ。
「んー、俺の小学校の頃の愛犬。ちょっと前に天国に召されちゃったけどな」
そう言いながら、俺をギューッと抱きしめる。
……不思議だ。
先生以外の男の人に抱きしめられるだなんてとんでもないって思っていたけど、渚さんのそれは、全然イヤな感じがしない。変な話だけれど、本当に渚さんの愛犬にでもなった気分だ。
しかも普段ならそんな渚さんを追い払う先生も、今は呆れたように笑いながら俺たちを見ていた。
「……南くんをここに招待しようって言い出したのは、渚だって聞いたんだけど本当なのか?」
「うんー? そうだけど。初めて病院で遭遇した時から意気投合しちゃって。なー?」
「はい」
これは鳥海先生の時にも使った言い訳だ。
それを今使っているのにも、きっと訳があるんだろうな。
だってこの遠山さんって人昨日は普通の感じだったのに、なんだか今朝起きてからは、変な感じで絡んでくるんだもん。
「病院って、何? 紫藤の恩人って事にも関係あるのか?」
更に突っ込んでくる遠山さんに、先生が腰に手を当てため息を吐いた。
「お前、そこまで聞く?」
「聞くだろ、普通に! どうせ渚や柳瀬は知ってるんだろう?」
あれ?
もしかしてこの人、先生に相手にされてないことに拗ねている……?
「別に大したことじゃないし。遭遇した渚しか知らないよ」
先生の言葉に、遠山さんは柳瀬さんに確認するように目を向ける。
「うん。俺、南くんが病院に行ったことなんて聞いてないよ」
「そう……、なんだ。で?」
一瞬、なんだって表情になった遠山さんだったけど、どうやらそれでも知りたいという気持ちは変わらないようだった。続けて返事を催促した。
女性陣も、興味津々にこちらに顔を向けている。
「……俺のことを気に入らないって生徒も中には居てさ、そいつらが俺をボコボコにしようと目論んだようなんだよ。それをたまたま聞いた南が止めに入って、俺の代わりに逆に凹られちゃったんだよ」
「でも先生、俺が知らないだけでホントはとっても強かったんだよね。俺が余計なことをしたせいで、却って事が大きくなっちゃったみたいで、結局迷惑かけちゃったんだけど……」
「そんな事は無いって言ってるだろ。あれに関しては、俺の方が南に迷惑をかけたんだから」
「なるほど……。それで紫藤は南くんと仲良くなったんだ」
「そうかもなー。俺がたまたま病院で南くんと澪に会って、しかも俺が南くんと意気投合しちゃったから。もともと教師と生徒の間柄なんだから、関係的にも距離が近くなるのは普通だろうけど」
渚さんが、紫藤先生と遠山さんの話に割って入り、補足した。
その言い回しからも、やっぱり遠山さんに警戒心を抱いているような確信が、俺の中では強くなっていった。
「なるほどねー。……俺は紫藤が教師になるって聞いた時は、はっきり言って選択を間違えてるだろって思ってた」
「ああ? 失礼な奴だな」
「だってそうだろ。お前、頭は良くて教え方も上手いかもしれないけど、全然他人に興味なんてないじゃんか。そんなんで、どうやって生徒と対峙するんだよって思うだろ、フツー」
「でも先生、俺ら生徒と良く喋ってくれるよ? 女子なんか、先生と遭遇したら普通に一緒に歩きながらお喋りしてるし。先生の周りって可愛い子がたむろするから、俺ら男子は羨ましがってる」
俺のその一言に、遠山さんが目を丸くした。
「良く喋る? お前が? 生徒と? 嘘だろ……」
唖然と呟く遠山さんに、柳瀬さんはただ単に遠山さんの拗ねているらしき行動に困ったような顔をして、渚さんは声を殺して笑っている。
もしかしたら先生が、学校で演技をしていることを知っているのは渚さんだけなのかもしれない。
女性陣らも良く喋るという言葉に、やはり信じられないといった顔をしていた。
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる
衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。
男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。
すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。
選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。
二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。
元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。