92 / 158
第六章
遠山さんという人 2
「ほんっとにお前らは失礼な奴だな。確かに俺はこんなんだけどな、これでも教師なんだから生徒のことは可愛いって思えるんだよ。多少嫌なことがあったって頑張らなきゃと思うし、それはお前らだって同じだろ?」
「まあ、それはそうだけど」
うんざりしたように言い放つ先生に、遠山さんも渋々といったように頷いた。
「さ、もういいだろ、その辺で。そんな事より、この敷地の奥に渓流を楽しめる散策コースがあるって話しただろ?天気も良くて清々しいから、これから出かけないか?」
柳瀬さんが、パンと手を叩いて立ち上がる。
みんなそれに釣られてガタガタと席を立った。そして財布やそれぞれの貴重品を手にして、外に出る。
しばらく歩いていると、ここのコテージに泊っている他のグループの人たちにも遭遇した。
特に女性だけのグループとかは、綺麗な先生やカッコいい渚さんに目を奪われるようで、振り返りながらしばらく姿を追っていた。
通りすがりに、「カッコいい」とか、「見た? 今の人、すっごく綺麗だった」とか時折興奮気味に話す声も俺の耳に届く。
そして男の人たちも、美人な志緒利さんが気になるようで、チラチラと窺う人が何人もいた。
「南」
「え?」
周りをキョロキョロしながら歩いていたら、渓流散策コースの入り口に着いていた。
みんなより少し遅れて歩いてしまっていた俺を、先生がわざわざ戻って来て俺の腕を引いた。
「お前放っておいたら迷子になりそうだな」
「あ、ご、ごめん」
先生はそう言って俺の腕から手を放して、その手で今度は俺の手をキュッと握った。
え?と驚く俺に、「迷子防止」と真顔で言われた。
そんな俺たちを、みんなが振り返ってじいっと見てるのがちょっと怖い。
「じゃあ、南くんのそっちの空いてる手は、俺が取ろうかな」
なぜだかそう言って、わざわざ笑顔で近づいてくる遠山さん。
……何なの、この人。
気持ち悪くて、先生に思わず引っ付いてしまう。
「おい、そこ。何やってんだよ。こういう所で女性を先に歩かせるなよ。遠山! お前もこっちに来い」
渚さんが、来い来いと大きく手を振って合図をしている。
「分かった、分かった」
それもそうかといった風に、遠山さんが手を振って渚さんに返した。そして俺たちに振りかえる。
「なーんか南くんがさ、可愛く見えるんだよな。なんでだろ」
「さあな。俺たち大人と違って、素直な高校生だから眩しく思えるんじゃないのか?」
遠山さんの言葉に、え?と、ギョッとした俺の手を先生がギュッと一瞬素早く握る。そしてシレッと続けた言葉に、気持ちが落ち着いていくのを感じた。
「そうかもな」
遠山さんは、それ以上何かを言う事もなく、素直に渚さんの元へと歩いて行った。
という事で俺たち一行は、先頭に渚さんと遠山さん、そして高田さんと小波さん。その後に柳瀬さんと志緒利さんが続いた。そしてその後に俺たちだ。
「いやな気持にさせたか?」
「あ、ううん。大丈夫。……変わった人だね」
俺がそう言うと、先生がちょっぴりため息を吐いた。
「……あれな、しばらくあいつと会ってなかったから忘れてたけど、あいつ俺が普通に接する相手が気になるようなんだよな」
「……へえ?」
何、それ。
ちょっとどころかかなり気持ち悪いんですけど……。
「そうよね。私も澪と特別に仲が良いなとか、いろいろ言われたわね」
「――そういや、俺も」
「え?」
俺たちの会話が聞こえたんだろう。振り返って志緒利さんと柳瀬さんが話の輪に入る。
先生はそのことを知らなかったようで、驚いていたようだ。
「渚のことは聞いていたけど……」
「遠山さ、紫藤にライバル意識持ってるんだよ。不愛想なくせに、なぜかみんなが絡みたがるって。おまけに頭も良くて教授たちにも一目置かれてるのが気に食わないって、学生時代によくこぼしてた」
「しかも澪って、あの当時私たちには割とまともに返事してくれたけど、遠山君に対してなおざりだったでしょ?それがかなり気になってたみたいだったわよ」
「マジかよ」
そう言って頭を掻いた先生は、ため息を吐いた。
「まったく。俺なんか関係ない奴に興味を持てないただの欠陥人間なんだから、羨ましがる要素なんてないから放っとけばいいのに」
「相手してやる気は無いのか?」
そう聞く柳瀬さんに、先生は鬱陶しい表情を返した。
そして端的に一言。
「あるわけないだろ」
先生はそう言って俺の手を引っ張って歩き出した。
「まあ、それはそうだけど」
うんざりしたように言い放つ先生に、遠山さんも渋々といったように頷いた。
「さ、もういいだろ、その辺で。そんな事より、この敷地の奥に渓流を楽しめる散策コースがあるって話しただろ?天気も良くて清々しいから、これから出かけないか?」
柳瀬さんが、パンと手を叩いて立ち上がる。
みんなそれに釣られてガタガタと席を立った。そして財布やそれぞれの貴重品を手にして、外に出る。
しばらく歩いていると、ここのコテージに泊っている他のグループの人たちにも遭遇した。
特に女性だけのグループとかは、綺麗な先生やカッコいい渚さんに目を奪われるようで、振り返りながらしばらく姿を追っていた。
通りすがりに、「カッコいい」とか、「見た? 今の人、すっごく綺麗だった」とか時折興奮気味に話す声も俺の耳に届く。
そして男の人たちも、美人な志緒利さんが気になるようで、チラチラと窺う人が何人もいた。
「南」
「え?」
周りをキョロキョロしながら歩いていたら、渓流散策コースの入り口に着いていた。
みんなより少し遅れて歩いてしまっていた俺を、先生がわざわざ戻って来て俺の腕を引いた。
「お前放っておいたら迷子になりそうだな」
「あ、ご、ごめん」
先生はそう言って俺の腕から手を放して、その手で今度は俺の手をキュッと握った。
え?と驚く俺に、「迷子防止」と真顔で言われた。
そんな俺たちを、みんなが振り返ってじいっと見てるのがちょっと怖い。
「じゃあ、南くんのそっちの空いてる手は、俺が取ろうかな」
なぜだかそう言って、わざわざ笑顔で近づいてくる遠山さん。
……何なの、この人。
気持ち悪くて、先生に思わず引っ付いてしまう。
「おい、そこ。何やってんだよ。こういう所で女性を先に歩かせるなよ。遠山! お前もこっちに来い」
渚さんが、来い来いと大きく手を振って合図をしている。
「分かった、分かった」
それもそうかといった風に、遠山さんが手を振って渚さんに返した。そして俺たちに振りかえる。
「なーんか南くんがさ、可愛く見えるんだよな。なんでだろ」
「さあな。俺たち大人と違って、素直な高校生だから眩しく思えるんじゃないのか?」
遠山さんの言葉に、え?と、ギョッとした俺の手を先生がギュッと一瞬素早く握る。そしてシレッと続けた言葉に、気持ちが落ち着いていくのを感じた。
「そうかもな」
遠山さんは、それ以上何かを言う事もなく、素直に渚さんの元へと歩いて行った。
という事で俺たち一行は、先頭に渚さんと遠山さん、そして高田さんと小波さん。その後に柳瀬さんと志緒利さんが続いた。そしてその後に俺たちだ。
「いやな気持にさせたか?」
「あ、ううん。大丈夫。……変わった人だね」
俺がそう言うと、先生がちょっぴりため息を吐いた。
「……あれな、しばらくあいつと会ってなかったから忘れてたけど、あいつ俺が普通に接する相手が気になるようなんだよな」
「……へえ?」
何、それ。
ちょっとどころかかなり気持ち悪いんですけど……。
「そうよね。私も澪と特別に仲が良いなとか、いろいろ言われたわね」
「――そういや、俺も」
「え?」
俺たちの会話が聞こえたんだろう。振り返って志緒利さんと柳瀬さんが話の輪に入る。
先生はそのことを知らなかったようで、驚いていたようだ。
「渚のことは聞いていたけど……」
「遠山さ、紫藤にライバル意識持ってるんだよ。不愛想なくせに、なぜかみんなが絡みたがるって。おまけに頭も良くて教授たちにも一目置かれてるのが気に食わないって、学生時代によくこぼしてた」
「しかも澪って、あの当時私たちには割とまともに返事してくれたけど、遠山君に対してなおざりだったでしょ?それがかなり気になってたみたいだったわよ」
「マジかよ」
そう言って頭を掻いた先生は、ため息を吐いた。
「まったく。俺なんか関係ない奴に興味を持てないただの欠陥人間なんだから、羨ましがる要素なんてないから放っとけばいいのに」
「相手してやる気は無いのか?」
そう聞く柳瀬さんに、先生は鬱陶しい表情を返した。
そして端的に一言。
「あるわけないだろ」
先生はそう言って俺の手を引っ張って歩き出した。
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。