綺麗な先生は好きですか?

くるむ

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第六章

怖い遠山さん 3

「あんな自分勝手でやりたい放題の紫藤が、痕を付けないなんてありえないんだ。絶対、証拠を見つけてやる」
「くそっ、止めろ! 離せっ」

遠山さんは俺を床に押し付けながら、またシャツを捲り上げていた。気持ち悪くて情けなくて泣きたい気分だ。

「遠山!? お前、何して……? 南くん?」

突然聞こえてきた渚さんの声に、ビクッと遠山さんの手が止まった。


たす……、かった。
天の声とは、まさしくこの事だ。渚さんの声に安堵して、俺の体はいつの間にか弛緩していた。

「南、おっせーよ。どうしたかと……」

未だ床に倒れたままの俺の目に、飛び込んできた紫藤先生の顔が映る。
先生は俺の状態に一瞬怪訝な顔をしたけれど、隣で膝立ちになっている遠山さんを見て、瞬時に顔色が変わった。

「遠山! お前、南に何を……っ」
「待て、待て! 澪、落ち着け! いいからお前は南くんを見てやれ!」

激昂して今にも遠山さんを殴り掛かりそうな先生を、遠山さんが必死に抑える。

「馬鹿野郎、離せ! 南が何されたか見て分からないのか! 離せってば!」
「だからそれは俺に任せろって。お前は教師なんだろ! こういう時は生徒を落ち着かせるのが一番なんじゃないのか?」

必死で渚さんが先生を宥めて、俺のところに先生を押し出す。先生はどうにも怒りが収まらない様子だったけど、俺と目が合い、俺の表情を見たとたん何かを感じたのか、ゆっくりと息を吐きだして自分自身を落ち着けようとした。

「大丈夫か?」
掠れた絞り出すような先生の声。

「うん……。先生たちが来てくれたから、大丈夫」

凄い理不尽で気持ちの悪いことをされたけど、だけどそれは大したことじゃない。
そう思って安心してもらいたくて、出来るだけ普通に笑いかけたつもりだったんだけど、先生は何故か痛い表情をして俺を力いっぱい抱きしめてくれた。

途端に、震えだす体。

「……怖、かった」
漏れ出す自分の言葉にびっくりする。

「怖かったよ、先生……」

今頃になってカタカタと震えだす体が信じられない。
だけど優しく頭を撫でながら抱きしめてくれる先生の体温がうれしくて、俺は目を瞑って先生に縋り付いていた。
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