綺麗な先生は好きですか?

くるむ

文字の大きさ
140 / 158
第八章

今、起きている事 6

俺は先生たちになるべく合わせようと、ゆっくりパフェを口に運んだ。
先生たちはしばらくのんびりとお互いの近況を話し合っていたけど、ご飯を半分くらい食べ終えたところで、先生が本題を切り出した。

「両親が離婚した話、しただろ?」
「……うん」
「その理由は言ってなかったけど、父親が浮気をしたことが原因なんだ」
「う……ん」

俺はこういう時どう返事をしていいのか分からなくて、頷くことくらいしか出来なかった。

「父がその浮気相手の女性と結婚したことで母が捨てられたんだが、……その女と、こないだバッタリ遭遇して、厄介な事になっちまってるんだ」

「厄介な事……?」
「ああ」

俺の問いかけに頷いた後、先生はため息を一つ吐いてまた話を始めた。

「俺の父親が自分にしでかしたことを学校側に言われたくなかったら、自分の面倒を見ろと言ってきやがったんだ」
「……は?」

俺は本気で分けが分からなくて、眉を顰めた。
なんだその言い分。自分が他人の家庭を壊す原因を作っておきながら何言ってんだ、その人。

「何が言いたいの、その人」
「南くんだって、そう思うよな」

今まで黙って聞いていただけの渚さんも、俺に同調した。先生と親しくしてる人じゃなくても、きっと誰が聞いてもそう思うはずだ。

「そいつの言い分はな――、」

先生の説明はこうだった。

15年前、
先生のお父さんは研究職をしていて、その一環でその女性の通っている大学に特別講師として呼ばれたことがあり、その時に2人は知り合った。
先生のお父さんを尊敬していたその女性は、だんだんと親しくなったある日、お酒に誘われて喜んで飲みに行ったら先生のお父さんに無理やり押し倒されてしまったというのだ。
それに怒ったその女の人が、結婚してくれなければ大学にも、先生のお父さんが務めている会社にも訴えると言い、結果先生の両親は離婚をすることになったらしい。そしてその後、2人は結婚している。
だけど、結局5年前に2人は離婚しているとの事だった。

「なんか酷い、その人。その時先生はまだ小学生だったのに、しかも先生だって家族を奪われた被害者だろ? 何の権利があって、そんな理不尽なことを言ってくるんだよ」

「……それも、そうなんだがな。あの頃はまだ子供だったから離婚の際の具体的な話までは聞かされて無かったんだが、今改めて聞いてみるとふに落ちないこともあるんだよな」

「それって?」
「父は、酒の席が嫌いな人間だったんだよ」
「……え?」
「変だと思うだろ? ……父も俺と似て偏屈なところがあった上に、あいつは下戸で、母がザルだったことも苦々しく思うような奴だったんだ。だから酒席にも余程の事が無い限り欠席してたし、ましてや自分から誘うだなんて考えられないんだ。……何かの餌で釣ったか、脅されて付いてったってのが正解じゃないかと俺は思ってる」

「そこのところは、もうちょっと待っててくれないか。今、調査会社の人間に調べてもらっているから」
「え? お前、調査会社って……」

渚さんの言葉に、先生が心底驚いた顔をした。まさか渚さんが、そこまで気にしてくれてるとは思っていなかったようだ。

「あ、大丈夫。その会社、俺の中学時代からの友人がやってるとこなんだ。良い奴だし信頼できるから、俺んちの顧問弁護士を紹介してやったんだよ。だからかなりの格安料金で引き受けてくれた。だから問題ないよ。……それに、今回お前の事あの人にバレちゃった原因って、俺にもあるだろ? だからさ」

「――原因というわけでは無いだろ。あれは、運が悪かっただけだ」

今一話の見えないキョトン状態の俺。目をパチパチさせていたら、気が付いた先生が補足してくれた。

「偶然な、俺が買い物をしている時に学生服を着た内の生徒に遭遇して、そしてどういうわけか渚もそこに偶然いて、俺を見つけたもんだから例の如く大声で俺の名前を呼んだんだよ。その場にまた偶然居合わせたあの女が、渚の声に反応して俺を見つけてしまったってわけ」

「でも、そんな一目見ただけでよく先生だって……あ、そっか」
「分かったか?」
「うん……」

言ってた、そう言えば。
日に日に先生がお父さんに似てくるのが辛くて、お母さんが変になっちゃったって……。
そう言う、事なんだな……。

「でも渚さん。先生の言う通り、これは渚さんのせいじゃないと思うよ。だって渚さんがその人に、先生を紹介したわけじゃないんだし」

「ありがとう南くん。でも澪、調査は俺の責任で続行させてもらうよ。あの時、お前が嫌がる顔を見るのがただ面白いってだけで、わざわざ大声で呼んじまった俺がやっぱり悪いと思うしさ。それに何よりあの女の理不尽さが、俺はどうしても許せないんだよ」

「渚……。すまんな。だけど、調査料は俺が払うから」
「だから、大した金額じゃないって言ってんだろ。俺のせいじゃないとしても、切っ掛けを作ったのは俺なんだから」
「じゃあ半分払わせろ」


チョコパフェをちびちびスプーンで掬う俺の前で、出すだの出させないだのの攻防が繰り広げられていた。
その微笑ましい攻防は、折半でという事で最後には話が付いたのだった。
感想 4

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。