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第九章
支えてくれる人たち 紫藤視点
数回のコールの後、渚が電話に出た。
「はいはーい。お待たせー」
「……よお」
相変わらずのテンションにややゲンナリしたが、迷惑を掛けている感は少なからずあるので敢えて流す。
「さっき、和田から電話があった」
「またか。で、なんだって?」
「今度の日曜日に居酒屋で会おうって言われた。何回か仕事を理由に断っていたから、とうとう業を煮やされたみたいだ」
「そうか……」
「悪いが、お前も付き合ってくれないか? 一人で行くと、ある事無いことでっち上げの証拠をねつ造されそうな気がするんだ」
「オッケ。日曜日だな、空けとくよ。ついでに良治にも連絡しておく」
「手間かけて悪いな」
「気にすんな、大したことじゃないさ」
「……解決したら奢る。どんなバカ高い店でも文句は言わないから、決めておいてくれ」
「いい、いい。南くんがお味噌汁飲ませてくれるって言ってたろ? それで十分だから」
「お前な……」
「澪、とにかく俺に気なんか遣うな。俺にとってのお前は、横柄な態度の俺様で、見ていて飽きない奴なんだからさ」
「……分かったよ」
長い付き合いになってきているから、これが渚流の俺を気遣っての表現だとすぐに気付いた。……本当にこいつには頭が下がる。
癪だから絶対に口にはしないけどな。
渚との電話を切って、ホッと一息吐いた。
教科書を引っ張り出してあらかた明日の準備をした後に、ライトを消して眠りにつく。
いくら私事で問題が起ころうとも、学校に行けば俺は一教師だ。
先輩教師らからの頼まれごとや生徒からの質問や雑談などに、丁寧に答えなければならない。
貼り付けた職場モードの笑顔で、俺は何とか乗り切っていた。
「先生ー!」
南のクラスの授業の無かった放課後、それにもかかわらず教科書片手に南が突進してきた。和田とのトラブルを南に伝えた直後はそれこそ俺を心配そうに見ていたが、その内こいつも自分なりに気持ちを切り替えたのだろう。今はキラキラした瞳で、以前と同じように嬉しそうに俺を見上げている。
「ここ、ここ教えて先生。予習してみようと思ったんだけど、躓いちゃって」
「どれ――」
廊下を歩きながら教科書を見る。近くに人が居なくなったところで南が俺の袖を引っ張った。
「先生、大丈夫? 和田って人、どうなってる?」
「なんだ、質問はカモフラージュか?」
「そういう訳じゃないけど。本当に勉強はしているからこれも質問したいことだし……」
「――大丈夫だ。調査は続けてもらってるし、それと今度渚たちと和田に会う事になってる」
「え! そうなの? ……でも、渚さんも一緒なら大丈夫だよね」
「ああ。だから別に心配はいらない」
「うん……」
『うん』と返事をしているくせに、心配そうな目で俺を見る南。それに大丈夫だと微笑むと、相変わらず俺の笑顔に弱いようで、頬がほんのりと赤くなった。
「これから職員会議だからのんびり教えてられないけど、気を付けて帰れよ」
「うん」
南は一瞬淋しそうな顔をした後、それでもすぐに笑顔になった。
「じゃあ明日ね、先生」
「ああ、また明日」
手を振る南に俺も振り返して、帰っていく南の後ろ姿を俺はジッと見送っていた。
「はいはーい。お待たせー」
「……よお」
相変わらずのテンションにややゲンナリしたが、迷惑を掛けている感は少なからずあるので敢えて流す。
「さっき、和田から電話があった」
「またか。で、なんだって?」
「今度の日曜日に居酒屋で会おうって言われた。何回か仕事を理由に断っていたから、とうとう業を煮やされたみたいだ」
「そうか……」
「悪いが、お前も付き合ってくれないか? 一人で行くと、ある事無いことでっち上げの証拠をねつ造されそうな気がするんだ」
「オッケ。日曜日だな、空けとくよ。ついでに良治にも連絡しておく」
「手間かけて悪いな」
「気にすんな、大したことじゃないさ」
「……解決したら奢る。どんなバカ高い店でも文句は言わないから、決めておいてくれ」
「いい、いい。南くんがお味噌汁飲ませてくれるって言ってたろ? それで十分だから」
「お前な……」
「澪、とにかく俺に気なんか遣うな。俺にとってのお前は、横柄な態度の俺様で、見ていて飽きない奴なんだからさ」
「……分かったよ」
長い付き合いになってきているから、これが渚流の俺を気遣っての表現だとすぐに気付いた。……本当にこいつには頭が下がる。
癪だから絶対に口にはしないけどな。
渚との電話を切って、ホッと一息吐いた。
教科書を引っ張り出してあらかた明日の準備をした後に、ライトを消して眠りにつく。
いくら私事で問題が起ころうとも、学校に行けば俺は一教師だ。
先輩教師らからの頼まれごとや生徒からの質問や雑談などに、丁寧に答えなければならない。
貼り付けた職場モードの笑顔で、俺は何とか乗り切っていた。
「先生ー!」
南のクラスの授業の無かった放課後、それにもかかわらず教科書片手に南が突進してきた。和田とのトラブルを南に伝えた直後はそれこそ俺を心配そうに見ていたが、その内こいつも自分なりに気持ちを切り替えたのだろう。今はキラキラした瞳で、以前と同じように嬉しそうに俺を見上げている。
「ここ、ここ教えて先生。予習してみようと思ったんだけど、躓いちゃって」
「どれ――」
廊下を歩きながら教科書を見る。近くに人が居なくなったところで南が俺の袖を引っ張った。
「先生、大丈夫? 和田って人、どうなってる?」
「なんだ、質問はカモフラージュか?」
「そういう訳じゃないけど。本当に勉強はしているからこれも質問したいことだし……」
「――大丈夫だ。調査は続けてもらってるし、それと今度渚たちと和田に会う事になってる」
「え! そうなの? ……でも、渚さんも一緒なら大丈夫だよね」
「ああ。だから別に心配はいらない」
「うん……」
『うん』と返事をしているくせに、心配そうな目で俺を見る南。それに大丈夫だと微笑むと、相変わらず俺の笑顔に弱いようで、頬がほんのりと赤くなった。
「これから職員会議だからのんびり教えてられないけど、気を付けて帰れよ」
「うん」
南は一瞬淋しそうな顔をした後、それでもすぐに笑顔になった。
「じゃあ明日ね、先生」
「ああ、また明日」
手を振る南に俺も振り返して、帰っていく南の後ろ姿を俺はジッと見送っていた。
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