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第九章
父の話 2 紫藤視点
俺があらかた食べ終わったのを見て、またグラスに酒を注ごうとする。俺は慌ててグラスに手で蓋をしてそれを阻止した。
「代行を頼んであげるって言ってるでしょ? どうせもうお酒を飲んでるんだから車では帰れないわよ。ほら」
和田は多分俺を酔い潰そうとしているのだろう。無理やりグラスを奪い取り、またなみなみと酒を注いだ。
そして自分も、味わうように美味しそうに飲んでいる。
雰囲気から言って、彼女も相当酒に強いのだろう。
「涼さんは、私を好きだと言ったのよ。何度も何度も。結婚しようと言いながら私を抱いたわ」
「…………」
「だから私も信じたのよ。憧れていて、嬉しいという思いもあったから。なのに酔いから覚めたら『そんなことは覚えていない、知らない』の一点張りで、だから私からあなたのお母さんに真実を告げるしかなかったのよ。……ほら、グラス空けなさい。まだこんなに残っているわよ」
俺にさらに飲むように勧め、瓶を持ち上げゆらゆらと揺らす。
「……勘弁してください。もうこれ以上は飲めません。それよりも、母に話したことは、本当に真実だったんですか?」
「当たり前でしょ! 私が嘘を吐いたとでも? だったら何であの人は私と結婚したのよ! ほら、飲みなさいよ!」
俺の言葉にカチンときたんだろう。和田は眉を吊り上げて、酒を飲むようにさらに強要する。仕方が無いので飲み干すが、せっかくの大吟醸なんだ。本当は、もっと楽しい席で心行くまで飲みたい。
この件が片付いたら、渚らを誘って飲みに行こうと思った。もちろん俺の奢りで。
「……涼さんは私を幸せにするって言ったのよ。なのに、たったの10年で私を捨てたわ。……しかも結婚してすぐに仕事人間になってしまって家庭も顧みずに。……私を幸せにしないといけないくせに、もう怖いものなんて無いだなんて訳の分からないことを言って私を捨てたのよ」
「…………」
「……責任取りなさいよ。貴方のお父さんが私にした仕打ちを償いなさい」
理不尽にもほどがある言い分に呆れながら、一体この女は何を要求したいのだろうと思う。
壁に背中を預け黙って下を向いて考えを巡らせていると、和田が近寄って来た。
「……寝てるの? 酔っちゃった?」
確かめるような小さな声に、俺は咄嗟に目を閉じた。
目を閉じて寝たふりをする俺の顔を覗き込む気配がする。
そのまま神経を集中させていると和田が離れていく気配がして、その後ガサガサとカバンを漁る音がした。
「もしもし、嗣治? 酔いつぶれちゃったみたい。来て」
嗣治?
誰だろう。
寝たふりをして神経を研ぎ澄ませていたら、ドアがカチャりと開く音が聞こえてきた。
「代行を頼んであげるって言ってるでしょ? どうせもうお酒を飲んでるんだから車では帰れないわよ。ほら」
和田は多分俺を酔い潰そうとしているのだろう。無理やりグラスを奪い取り、またなみなみと酒を注いだ。
そして自分も、味わうように美味しそうに飲んでいる。
雰囲気から言って、彼女も相当酒に強いのだろう。
「涼さんは、私を好きだと言ったのよ。何度も何度も。結婚しようと言いながら私を抱いたわ」
「…………」
「だから私も信じたのよ。憧れていて、嬉しいという思いもあったから。なのに酔いから覚めたら『そんなことは覚えていない、知らない』の一点張りで、だから私からあなたのお母さんに真実を告げるしかなかったのよ。……ほら、グラス空けなさい。まだこんなに残っているわよ」
俺にさらに飲むように勧め、瓶を持ち上げゆらゆらと揺らす。
「……勘弁してください。もうこれ以上は飲めません。それよりも、母に話したことは、本当に真実だったんですか?」
「当たり前でしょ! 私が嘘を吐いたとでも? だったら何であの人は私と結婚したのよ! ほら、飲みなさいよ!」
俺の言葉にカチンときたんだろう。和田は眉を吊り上げて、酒を飲むようにさらに強要する。仕方が無いので飲み干すが、せっかくの大吟醸なんだ。本当は、もっと楽しい席で心行くまで飲みたい。
この件が片付いたら、渚らを誘って飲みに行こうと思った。もちろん俺の奢りで。
「……涼さんは私を幸せにするって言ったのよ。なのに、たったの10年で私を捨てたわ。……しかも結婚してすぐに仕事人間になってしまって家庭も顧みずに。……私を幸せにしないといけないくせに、もう怖いものなんて無いだなんて訳の分からないことを言って私を捨てたのよ」
「…………」
「……責任取りなさいよ。貴方のお父さんが私にした仕打ちを償いなさい」
理不尽にもほどがある言い分に呆れながら、一体この女は何を要求したいのだろうと思う。
壁に背中を預け黙って下を向いて考えを巡らせていると、和田が近寄って来た。
「……寝てるの? 酔っちゃった?」
確かめるような小さな声に、俺は咄嗟に目を閉じた。
目を閉じて寝たふりをする俺の顔を覗き込む気配がする。
そのまま神経を集中させていると和田が離れていく気配がして、その後ガサガサとカバンを漁る音がした。
「もしもし、嗣治? 酔いつぶれちゃったみたい。来て」
嗣治?
誰だろう。
寝たふりをして神経を研ぎ澄ませていたら、ドアがカチャりと開く音が聞こえてきた。
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