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第九章
和田の企み 2 紫藤視点
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俺のその言葉に、瞬時に和田と弟、嗣治という男の顔が青くなった。
「……そんな事今更知ってどうする気よ。……それこそ15年も前の話なのよ。時効に決まってるわ」
「15年前の話をしているわけじゃありません。あなたは僕に冤罪を被った父の責任を取れと言った。もちろん父のしたことが冤罪では無かったとしても、息子である僕がそれを贖わなければならないいわれはありません。それどころか冤罪だったのですから……、責任を僕らに取らなければならないのは、偽証し父を陥れたあなた方にあります」
毅然と、和田の目をしっかり捕らえて話す俺に2人の顔色はますます悪くなっていく。
「……どうしろと言うのよ」
「慰謝料くらい払ってもらおうかな」
俺と和田の会話に、渚が入り込んできた。
「おい……」
別に慰謝料なんて俺は考えてもいなかった。ただ、二度と俺らの前に現れて欲しくないだけだ。
困惑して振り返ると、渚は俺に黙ってろと目で訴えて視線を和田に戻した。
「あなたは東堂さんと離婚する3カ月ほど前に、大手の企業に就職をしていますよね。それも東堂さんに紹介してもらったのでしょう? ……そうだなあ、30万。そのくらいの貯金なら、あるでしょう。彼らの家族をひどい目に合わせた償い金だ。それと今回の件も考えれば、あなたに否という返事は出来ないはずだ」
渚の、一歩も引きそうにない確固たる態度に、どうやら2人は観念したようだった。「わかった」と呟く2人に、海老原が誓約書を書かせ、俺に手渡した。
そこには、慰謝料の支払い期日と、そして二度と俺ら家族の前には表れないという趣旨の内容が書かれていた。
「……もう帰ってもいい?」
誓約書を書かされて呆然としながら和田がつぶやいた。
「どうぞ。あ、そうそう。約束はちゃんと守ってくださいよ。そうでなければ澪が許しても、俺が許しませんからね」
「――分かってるわ」
いつもの飄々とした表情じゃない。怖いくらいの真顔で言う渚に、俺も驚いたが、和田は本気で竦みあがったようだ。青白い顔で、絞り出したような掠れた声で返事をしていた。
よろよろと歩き出す和田に、まだ聞いていなかったことがあるのに気が付いた。
「和田さん!」
「……何?」
「……父の事は、どうして父を陥れるような真似をしたんですか」
俺の問いに、和田がゆっくりと振り返った。その顔には、何を分かり切ったことをと書かれている。
「――あの人を手に入れたかったからよ。……それ以外に、何があると言うの?」
そう告げる和田の顔は、この女のものとは思えない、静かで綺麗な表情だった――
「……そんな事今更知ってどうする気よ。……それこそ15年も前の話なのよ。時効に決まってるわ」
「15年前の話をしているわけじゃありません。あなたは僕に冤罪を被った父の責任を取れと言った。もちろん父のしたことが冤罪では無かったとしても、息子である僕がそれを贖わなければならないいわれはありません。それどころか冤罪だったのですから……、責任を僕らに取らなければならないのは、偽証し父を陥れたあなた方にあります」
毅然と、和田の目をしっかり捕らえて話す俺に2人の顔色はますます悪くなっていく。
「……どうしろと言うのよ」
「慰謝料くらい払ってもらおうかな」
俺と和田の会話に、渚が入り込んできた。
「おい……」
別に慰謝料なんて俺は考えてもいなかった。ただ、二度と俺らの前に現れて欲しくないだけだ。
困惑して振り返ると、渚は俺に黙ってろと目で訴えて視線を和田に戻した。
「あなたは東堂さんと離婚する3カ月ほど前に、大手の企業に就職をしていますよね。それも東堂さんに紹介してもらったのでしょう? ……そうだなあ、30万。そのくらいの貯金なら、あるでしょう。彼らの家族をひどい目に合わせた償い金だ。それと今回の件も考えれば、あなたに否という返事は出来ないはずだ」
渚の、一歩も引きそうにない確固たる態度に、どうやら2人は観念したようだった。「わかった」と呟く2人に、海老原が誓約書を書かせ、俺に手渡した。
そこには、慰謝料の支払い期日と、そして二度と俺ら家族の前には表れないという趣旨の内容が書かれていた。
「……もう帰ってもいい?」
誓約書を書かされて呆然としながら和田がつぶやいた。
「どうぞ。あ、そうそう。約束はちゃんと守ってくださいよ。そうでなければ澪が許しても、俺が許しませんからね」
「――分かってるわ」
いつもの飄々とした表情じゃない。怖いくらいの真顔で言う渚に、俺も驚いたが、和田は本気で竦みあがったようだ。青白い顔で、絞り出したような掠れた声で返事をしていた。
よろよろと歩き出す和田に、まだ聞いていなかったことがあるのに気が付いた。
「和田さん!」
「……何?」
「……父の事は、どうして父を陥れるような真似をしたんですか」
俺の問いに、和田がゆっくりと振り返った。その顔には、何を分かり切ったことをと書かれている。
「――あの人を手に入れたかったからよ。……それ以外に、何があると言うの?」
そう告げる和田の顔は、この女のものとは思えない、静かで綺麗な表情だった――
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