幼児化した闇魔術士は聖騎士に溺愛される

くるむ

文字の大きさ
11 / 59
第一章

事情聴取

しおりを挟む
 聖騎士団の執務室や隊舎は王城の敷地内に併設されていて、上官クラス以外は隊舎で寝起きし有事に備えている。

 宰相の執務室が入っている別棟までは歩いて大体十分くらいだ。

「宰相はウイルフレッド団長を高く評価されていましたから、今回のイアン討伐での失敗に心底落胆なさってましたよ」

「そうか……。それは期待に沿えなくて申し訳なかった」
「どうせまた、陛下の命令を無視して生け捕りにしようとでも思ったのでしょう」
「――無視したつもりはないのだがな」
「では、どうして毎回毎回、」
「いくら罪人でも、事情聴取もせずいきなり殺すのはどうかと思うだけだ」
「確かにあなたは、そういう方でしたね」

 話をしながら歩いていたら、通称黄金の棟に着いた。建物自体が本当に黄金に光り輝いているわけではなく、正確に言うとごく薄いレモンイエローといった感じの色合いだが、ここには宰相並びに大臣と言ったそうそうたる人物の執務室が入っているので、建物の色に引っ掛けていつの間にかそういう風に呼ばれるようになっていた。

 おそらく揶揄しているのだろうと思うのだが、本当のところがどうなのか私にはわからない。

 階段を上がって二階の端に宰相、パピルス公爵の執務室がある。

「宰相、ウイルフレッド団長をお連れしました」
「入れ」
「失礼します」

 室内に入ると、宰相は席から立つことなく手招きをした。デスクの前に立つと、なんとも言い難い冷たい笑みを浮かべた。

「君は、我が国が誇る優秀な聖騎士団団長だと思っていたのだが違ったかね?」
「イアンを取り逃したことを言われているのでしたら、きっと違っていたのでしょう」

 自分の信念を曲げる気はないので動揺せずにそう言い返すと、室内の張り詰めた空気は一層ピリピリとひどいものになった。私の視界ギリギリに入るジミーの表情もこわばっている。

「その時がどういう状況だったのか説明してくれますね?」

「はい。イアンがグルモイの三番街で暴れていると情報が入って駆けつけましたところ、イアンの怒りは頂点に達していて、私の説得も聞く耳を持たない状態でした。なのでおとなしくさせるためにも、こちらからも攻撃を仕掛け、立つことができない状態にさせたところを捕縛しようと思っていたのです」

「失敗したのか?」
 その表情には、君がか?といったような訝しさが入っている。

「――はい、油断しました。大怪我を負わせたので難なく捕まえられると思ったところ、まんまと逃げられました。彼の必死さの方が勝ったのだと思います。……本当に失敗しました」

「失敗したと思うのなら今度から生け捕りにできないと思ったときはさっさと仕留めるんだな」

「そういうわけには参りません。罪人にも裁判を受ける権利があります」

「イアンにはその価値すらないと陛下がおっしゃっているんだ。君は陛下を軽んじているのか?」

「とんでもございません。陛下がこの国を思い民を案じ、政策を施しているのは重々承知しております。ですが黒髪黒い瞳を忌み子と決めつけるのはいきすぎではないかと思っているだけです」

「君は前々からそう主張し続けているな」

「はい。罪を犯せば罰せられなければならないとは思っていますが、そこに至るまでの経緯は考えてしかるべきでしょう」

「もういい。君と話していても埒が明かない。陛下には、この後の結果がどうあれ、君が油断して任務に失敗したと報告しておくぞ」

「――はい」
 ほんの少しだけ悔しそうな顔をして見せた。やり過ぎは、わざとらしくなる。

「イアンの捜索も怠るな。死体を見つけたら持ってこい」
「かしこまりました。――失礼します」

 一礼して部屋を出て奥歯をぎりっと噛んだ。

 イアンを、陛下らの思い通りになんて絶対にさせない。私が必ず守り切ってみせる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

姉の忘れ形見を育てたいだけなのに、公爵閣下の執着が重いんですが!?~まっすぐ突き進み系令嬢の公爵家再建計画

及川えり
ファンタジー
突然届いた双子の姉からの手紙。 【これをあなたが読んでいるころにはわたしはもう死んでいることでしょう。わたしのことは探さないでね。双子を引き取ってもらえないかしら?】 姉の遺言通り双子を育てようと姉の嫁ぎ先へと突入する。 双子を顧みなかったという元夫のウィルバート公爵に何とか双子を引き取れるよう掛け合うが、話の流れからそのまま公爵家に滞在して双子を育てる羽目に。 だが、この公爵家、何かおかしい? 異常に気付いたハンナは公爵家に巣くう膿をとりのぞくべく、奮闘しはじめる。 一方ハンナを最初は適当にあしらっていたウィルバートだったが、ハンナの魅力に気付き始め……。 ハンナ・キャロライン・バーディナ 22歳      バーディナ伯爵家令嬢         ✖️ ウィルバート・アドルファス・キングスフォード 26歳      キングスフォード公爵 ブックマーク登録、いいね❤️たくさんいただきありがとうございます。 感想もいただけたら嬉しいです。

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

公爵家の伝統だと思っていたら、冷徹公爵様の溺愛でした

星乃和花
恋愛
(毎日21:30更新ー全8話) 家族にも周囲にもあまり顧みられず、 「私のことなんて、誰もそんなに気にしない」 と思って生きてきたリリアナ。 ある事情から、冷徹と噂されるヴァレントワ公爵家で働くことになった彼女は、 当主エドガーの細やかな気づかいに驚かされる。 温かいお茶、手袋、外出時のエスコート。 好みの食事までさりげなく用意されて―― けれど自己評価の低いリリアナは、それらすべてを 「これが公爵家の伝統……!」 「さすが名門のお作法……!」 と盛大に勘違い。 一方の冷徹公爵様は、そんな彼女にだけ少しずつ甘さをこぼし始めて……? これは、 “この家の作法”だと思っていたら、 どうやら冷徹公爵様の溺愛だったらしい やさしくて甘い勘違いラブコメです。

僕、天使に転生したようです!

神代天音
BL
 トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。  天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL

最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~

Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。 うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。 でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。 上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。 ——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

処理中です...