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001-005【第一幕】転生した。経緯は省く

001 俺は家畜にはならない

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 俺は異世界に転生した。別に前世の話なんて興味ないだろ。だから省く。謎の空間で女神と会話したことも省かせてもらう。

 目を開けたらそこは寝室の天井だったりはしない。この時点でたぶん王族ルートは無し。悪役令嬢とかも外された。

 俺の異世界生活の始まりは、薄暗い小屋で直立だった。小屋は臭い。うんことかうんことかうんこの匂いがする。鼻がもげる前に、とりあえず外の光らしいものが入っていそうなところを押し開けた。

 それが扉で脱出できると、晴れて太陽の下に降り立つことができる。周りは当然知らない場所。森とか山とかの自然が豊かで、人が見つからない代わりに別の種族がいる。

「……ンモォー」

「言葉、わかります?」

「……モォ?」

 ぼけーっとした種族だな。ただの牛みたいだ。っていうかただの牛か。うんこの匂いもお前の生産物なのか。

 柵に囲まれたところは、この家畜らのテリトリーなんだろう。俺が直立で納まっていた小屋も柵の中にあった。おそらく飼い主はこの柵の外で生活しているはずだ。

 どっちかっていうと俺は家畜を飼う方とお近づきになりたい。だから柵を伝いながら出入口を探すことにした。

 そしたら運良く、柵の向こうで俺に気付いた人間の男が現れる。

「ウシ泥棒だー!」

 展開はどうあれ。とりあえず出口ぐらいは案内して貰えそうだな。
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