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076-078【第四幕】おっさん妖精と出会った
077 俺は77を軽視しない
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幸先の良いスタートが切れた。話数もラッキーセブンだし、何かいいことが起きたっておかしくないだろう。
深く積もった雪を誰かが掻いて進んだ跡がある。俺もその後をひとりで歩いて行った。雪の壁の向こうには家の屋根が見えている。
昨晩は捨てられた家にて過ごしたが、他にあるものも多分同じく捨てられたものだ。家財道具や家具なんかは何もなかった。風の通る空き家は寒かったが、盗賊などがアジトにしていないので、その点だけは助かったと言えるな。
「腹減った……。やばい……」
相変わらず空腹の限界は越えてある。俺はしばらく雪を食って凌いでいた。横着のせいでばっちり腹を壊したのでやめたのだ。
こんな季節に動物なんかは滅多に現れない。木の実だって根こそぎ取られて落ちていなかった。俺は自然界における冬が、いかに厳しい生存競争であるかを思い知らされていた。今日飲まず食わずで明日があるかも危うかった。
そのまま進んだ道がどういう訳だかぱったり途切れる。横道を作った跡もないのに。この先は雪の壁が立ちはだかるだけの、行き止まりになってしまった。
「雪の中を泳げというのか……」
ラッキーセブンを信じて行くしかない。そう決心し雪を掻いていたところで頭上から声が降ってきた。
「無謀なことをする奴だなぁ。そんなに命が惜しくないのかい」
だるそうに話しかけてくる奴だった。近くに木々もないので、どこから喋っているのかと探せば、上空におっさんは浮いていた。俺は悠々としたおっさんを睨み付けて言う。
「俺にも浮遊技術を教えろ」
「やーだね」
「じゃあ俺を運んで街へ連れていけ」
「やだやだ」
大あくびを見せつけられても、俺はイライラ出来るほどの元気がなかった。諦めて雪を掘り進めていたら、おっさんは位置的に上からものを言ってきた。
「てめえは魔法も使えねえのに冒険者やってんのか? たまーに居んだよなぁ。剣や武力だけでやってく奴がさ。魔法は便利だぞ? アイテムみたいに消費しないし、かさばらないし。使い用は色々……」
それでおっさんは魔法を使ってくれたらしい。雪の壁に向かっていた俺が、突然空中を掻いて地面に倒れたのもそのせいだ。おっさんの合図だけで雪の道は開かれていた。俺の目の前にどこまでも続くものとして現れたのだ。
「魔法ってすげえ!!」感動せずにはいられない。冷たさも苦労も何も感じずに道が作れるなんて神業だ。むしろおっさんは上空を飛んで行けるわけだから無敵か。
「冒険者よ。てめえはどこへ行く?」
「俺は……強敵を倒しに行くんだ」
キリッとけじめを付けて言うが、この腹はギュルルルルルルルルと、立派なファンファーレをおっさんのところまで響かせてくれた。
おっさんはへらへら笑った。その笑い方は俺の空腹を軽視したものであり、まさかおっさんは飯が出せる魔法も持っているんじゃないかって、俺は密かに期待を膨らませる。
深く積もった雪を誰かが掻いて進んだ跡がある。俺もその後をひとりで歩いて行った。雪の壁の向こうには家の屋根が見えている。
昨晩は捨てられた家にて過ごしたが、他にあるものも多分同じく捨てられたものだ。家財道具や家具なんかは何もなかった。風の通る空き家は寒かったが、盗賊などがアジトにしていないので、その点だけは助かったと言えるな。
「腹減った……。やばい……」
相変わらず空腹の限界は越えてある。俺はしばらく雪を食って凌いでいた。横着のせいでばっちり腹を壊したのでやめたのだ。
こんな季節に動物なんかは滅多に現れない。木の実だって根こそぎ取られて落ちていなかった。俺は自然界における冬が、いかに厳しい生存競争であるかを思い知らされていた。今日飲まず食わずで明日があるかも危うかった。
そのまま進んだ道がどういう訳だかぱったり途切れる。横道を作った跡もないのに。この先は雪の壁が立ちはだかるだけの、行き止まりになってしまった。
「雪の中を泳げというのか……」
ラッキーセブンを信じて行くしかない。そう決心し雪を掻いていたところで頭上から声が降ってきた。
「無謀なことをする奴だなぁ。そんなに命が惜しくないのかい」
だるそうに話しかけてくる奴だった。近くに木々もないので、どこから喋っているのかと探せば、上空におっさんは浮いていた。俺は悠々としたおっさんを睨み付けて言う。
「俺にも浮遊技術を教えろ」
「やーだね」
「じゃあ俺を運んで街へ連れていけ」
「やだやだ」
大あくびを見せつけられても、俺はイライラ出来るほどの元気がなかった。諦めて雪を掘り進めていたら、おっさんは位置的に上からものを言ってきた。
「てめえは魔法も使えねえのに冒険者やってんのか? たまーに居んだよなぁ。剣や武力だけでやってく奴がさ。魔法は便利だぞ? アイテムみたいに消費しないし、かさばらないし。使い用は色々……」
それでおっさんは魔法を使ってくれたらしい。雪の壁に向かっていた俺が、突然空中を掻いて地面に倒れたのもそのせいだ。おっさんの合図だけで雪の道は開かれていた。俺の目の前にどこまでも続くものとして現れたのだ。
「魔法ってすげえ!!」感動せずにはいられない。冷たさも苦労も何も感じずに道が作れるなんて神業だ。むしろおっさんは上空を飛んで行けるわけだから無敵か。
「冒険者よ。てめえはどこへ行く?」
「俺は……強敵を倒しに行くんだ」
キリッとけじめを付けて言うが、この腹はギュルルルルルルルルと、立派なファンファーレをおっさんのところまで響かせてくれた。
おっさんはへらへら笑った。その笑い方は俺の空腹を軽視したものであり、まさかおっさんは飯が出せる魔法も持っているんじゃないかって、俺は密かに期待を膨らませる。
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