ドラゴンアース【地球を股がける者】

とと

文字の大きさ
19 / 30
第一章【それぞれの冒険】

pioneer2❲ドワーフの帝国❳

しおりを挟む
「これから私の同胞である二頭の龍に会いに行く」

魔龍ゼルゼ・フォーガは那賀龍神にそう告げた。

那賀龍神の年齢は十四歳であり、体格は痩せ細り長く黒い前髪のせいで両目が隠れ、身なりも何日も着替えていない汚れた服を着ていた。

「会いに行くって言ったって……」

那賀龍神は言葉を濁しながら遠慮がちに呟く。

「そうだな、この姿では目立ち過ぎるな」

ゼルゼ・フォーガは自身の巨大な姿を見ながら答えると、全身をいきなり光らせた。

巨大な光りはすぐに小さくなり、すぐに光りが消えると人影が現れた。

「これで目立つ事はない」

ゼルゼ・フォーガは成人男性へと変貌したのだ。

「全くなんで俺はこんな奴に目を付け……」

「何か言ったか、那賀龍神?」

那賀龍神……、龍神の小声の文句にゼルゼ・フォーガ……、ゼルゼが嫌味混じりに答えた。

ゼルゼの今の姿は龍神の身長一七八センチよりも少しだけ高く、長く赤黒い髪を後ろで束ねており筋肉質ではあるが、どことなく優男のイメージがあった。

「で、誰に会いに行くんだ?」

「先程言ったであろう?このガー砂漠の北にあるドワーフ帝国シルヴェ・スターにいる、邪龍コーライトと亡龍エンディアだ。私同様の邪悪なる三龍と呼ばれた龍だ」

ゼルゼは龍神の頭の弱さを実感した。










ドワーフ帝国シルヴェ・スターは岩山が重なりあった巨大な渓谷の中にあり、断崖絶壁の岩々に建物が連なっていた。断崖絶壁にそびえ立つ岩の建物や鋼鉄の要塞等、人間の技術では果てしない時間と労力が必要なのだが、世界一の技術と労力を持つ亜人の中では断突にドワーフが優れているのは、この渓谷要塞を見れば納得ができた。

龍神とゼルゼはガー砂漠から一日かけ、ジープに乗りシルヴェ・スターに到着した。

シルヴェ・スター帝国の内部に居る龍神とゼルゼは、鍾乳洞の中を機械化させた広間にいた。

「那賀龍神、何を挙動っている?」

ゼルゼは辺りを鼻で笑いながら、辺りをキョロキョロと見ながら挙動不審になっている龍神に質問した。

何千何万年をかけて出来た岩の支柱に場違いな金属の壁、どんな思いでドワーフ達は造りあげたのだろうか?龍神は言葉にはしなかったが、そう態度に出していた。

「済まぬダ、ゼルゼ待たせたダ」

突然、龍神とゼルゼに近づいて来たドワーフが話しかけてきて、龍神とゼルゼはドワーフに身を向けた。ドワーフは三頭身の髭が腹まで伸びた寸胴の男であった。名をタンクと呼ぶ。

「今日は別の客人が来ていたので、あんたらの世話が後回しになってしもうたダ」

「気にするな。突然、来訪したこちらに責がある」

ゼルゼがタンクに簡単な会釈をした。

「そんしても、まさかこの王国に伝説の三龍が対峙するとダ」

タンクのその口調からゼルゼの正体が魔龍である事が解る。そしてゼルゼがこれから会おうとしている二頭の龍の事も……、龍神はこのドワーフは何者と思ったが口にはしなかった。

「コーライトとエンディアはこの間を抜け、WEGSウェグス工場の先の間に居るダ。案内するダ」

タンクがそう言うと、龍神とゼルゼは無言でタンクの後について歩きだした。

「タンク、小耳に挟んだのだがダウニーロートの巨人達とは、また戦争になりそうなのか?」

ゼルゼは移動しながら、タンクに世間話程度の感覚で質問した。

「そうなるダ、一週間前にあの巨人共が威嚇しにこの王国に襲撃に来たダ」

ドワーフ帝国シルヴェ・スターと東の隣国である巨人王国ダウニーロートの間には何百年という年月をかけ、度重なる戦争やいざこざが絶えないのだ。

「ちと今回の争いは厄介かもしれぬダ」

「厄介……?」

「奇形種、ヘカトンセントが居るやもしれぬダ」

「ヘカトンセントだと?それは本当か?」

鋼鉄の空洞の中、三人は歩きタンクの話しにゼルゼは驚愕した。

鋼鉄の空洞はやがて透明カプセルのような硝子でできた空洞に入り、中から様々なロボットがドワーフ達の手により作成されている光景が見え、龍神は足を止めた。

「あれは?」

「ウェポン・アース・ガーディアン・サイエンスサイバー。略してWEGSウェグスだ。見たことぐらいあるだろう?」

龍神の問いにゼルゼは冷たく答えると、龍神は膨れっ面を見せた。

「それは知ってる。俺が言いたいのはあの奥で造られている鳥型のWEGSだ」

龍神は、様々な機械に囲まれ製造されているWEGSに指を差して答えた。

「あれは不死鳥フェニックスモデルのWEGSダ。坊主、あれに目が行くとは」

タンクが龍神に少しだけ感心の表情を見せた。

実は龍神と後にアースフィールと名付けられる製造途中のWEGSとの初めての出会いは、この時であるのだがこの時は知る由もなかった。

「どけっ!邪魔だ!」

突然、龍神の前に悪態を付く者が現れ龍神達は声のした方へと振り向いた。

「なんだ?なんか文句あんのか?」「うわ、コイツストライダーだぜ!」

声の主は人間であり、四人の少年だった。年端も龍神と同じような年齢であり、二人が肌の白く、二人は黒い肌だった。

「文句はねぇけど、てめぇらもストライダーか?」

龍神は無表情で四人の少年に質問した。

「そうだね、君と同じストライダーだが、君よりもこのアウリナの方が遥かに優れている」

ひとりの白人少年が自信ありげに答えると、他の三人も龍神の姿を見ながら笑いだした。

「行くぞ、那賀龍神。そんな奴ら相手にするな」

ゼルゼが歩みを始めようとすると、四人の少年がゼルゼの前に立ち尽くした。

「そんな奴らってこのアウリナ達に向かって言っているのですか、おじさん?」

少年達がゼルゼに凄むと、ゼルゼは無言で四人の少年達に睨みを効かせた。ゼルゼの圧倒的な睨みに少年達はその場で腰を抜かし、恐怖にひきつった表情を見せた。

「行くぞ、那賀龍神」

「お、おう……」

龍神は四人の少年を哀れむように見て、ゼルゼの後へと歩きだした。

実はこの四人の少年とも龍神にとって初めての出会いであった……。那賀龍神の運命を左右する四人との出会いが……。








「この扉の奥にお前さんの求める、コーライトとエンディアが居るダ」

到着した大きな鋼鉄の扉にゼルゼの同胞が居る。

タンクの言葉にゼルゼは頷き、ゼルゼは扉を開け、龍神はそれに続いた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

おさがしの方は、誰でしょう?~心と髪色は、うつろいやすいのです~

ハル*
ファンタジー
今日も今日とて、社畜として生きて日付をまたいでの帰路の途中。 高校の時に両親を事故で亡くして以降、何かとお世話になっている叔母の深夜食堂に寄ろうとした俺。 いつものようにドアに手をかけて、暖簾をぐぐりかけた瞬間のこと。 足元に目を開けていられないほどの眩しい光とともに、見たことがない円形の文様が現れる。 声をあげる間もなく、ぎゅっと閉じていた目を開けば、目の前にはさっきまであった叔母さんの食堂の入り口などない。 代わりにあったのは、洞窟の入り口。 手にしていたはずの鞄もなく、近くにあった泉を覗きこむとさっきまで見知っていた自分の姿はそこになかった。 泉の近くには、一冊の本なのか日記なのかわからないものが落ちている。 降り出した雨をよけて、ひとまずこの場にたどり着いた時に目の前にあった洞窟へとそれを胸に抱えながら雨宿りをすることにした主人公・水兎(ミト) 『ようこそ、社畜さん。アナタの心と体を癒す世界へ』 表紙に書かれている文字は、日本語だ。 それを開くと見たことがない文字の羅列に戸惑い、本を閉じる。 その後、その物の背表紙側から出てきた文字表を見つつ、文字を認識していく。 時が過ぎ、日記らしきそれが淡く光り出す。 警戒しつつ開いた日記らしきそれから文字たちが浮かび上がって、光の中へ。そして、その光は自分の中へと吸い込まれていった。 急に脳内にいろんな情報が増えてきて、知恵熱のように頭が熱くなってきて。 自分には名字があったはずなのに、ここに来てからなぜか思い出せない。 そしてさっき泉で見た自分の姿は、自分が知っている姿ではなかった。 25の姿ではなく、どう見ても10代半ばにしか見えず。 熱にうなされながら、一晩を過ごし、目を覚ました目の前にはやたらとおしゃべりな猫が二本足で立っていた。 異世界転移をした水兎。 その世界で、元の世界では得られずにいた時間や人との関わりあう時間を楽しみながら、ちょいちょいやらかしつつ旅に出る…までが長いのですが、いずれ旅に出てのんびり過ごすお話です。

処理中です...