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第四章
リリ スイーツ
しおりを挟む「ウィルお兄ちゃん! なにこれ!」
「……これはケーキだな。というか、凄いぞこれ。めちゃくちゃ丁寧に作られてる……」
「こちらはレレーナ様が作られたケーキです。様々なフルーツが使われているので、最後まで楽しんで食べられると思います」
ウィルとリリの前には、見ているだけでお腹いっぱいになりそうなケーキが運ばれてきた。
運んできたのは、ソフィアの下僕であるメイドだ。
人間の国にあるようなケーキとは、比べ物にならないほど拘って作られており、味も一級品である。
「すごーい! めちゃくちゃ美味しい!」
「こりゃソフィアも夢中になるわけだ」
「そうですね。ソフィア様はレレーナ様の作るスイーツが大好きですので、毎日のように食べられています」
やはりソフィアのお腹が引っ込まないのは、このスイーツのせいだった。
このケーキを見ただけで、暴力的なカロリーを秘めているのが分かる。
毎日のように食べるとなると、太ってしまうのは火を見るよりも明らかだ。
「こんな美味しいケーキ初めて食べたよ! ウィルお兄ちゃんが作ったホットケーキとは大違い!」
「このケーキとあの失敗作を比べないでくれ……」
「リリが最後まで食べてあげたもんねー」
「マジでごめん……」
あまりに美味すぎるケーキなため、ついつい過去のトラウマまで思い出してしまう。
黒焦げのホットケーキを、ウィルとリリで泣きながら食べたという渋い思い出だ。
「それにしても美味しいねー。リリもこの魔王城のメイドさんになろっかなー」
チラッとリリはメイドの方を見る。
突如話を振られてしまったメイドは、どうしていいか分からずにアタフタしていた。
「勘弁してくれ……リリちゃんがいないと、エルネとレフィーに挟まれて死んでしまうよ」
「ねぇ、メイドさん。メイドさんはいつもこんなに美味しいもの食べてるのー?」
「い、いえ。私たちには専用の食堂がありますので……ですが、リリ様ならいつ来ても、レレーナ様の手作りは食べられると思います」
なんだー――とリリはガッカリしたような素振りを見せる。
どうやら、レレーナはリリのお気に入りになってしまったらしい。
「でも、ソフィアちゃんが羨ましいよねー。いつもこんなの食べれるなんてー」
「ですが、ソフィア様はのびのびとし過ぎているようで……私たちがガツンと言わないといけないのですが……」
「そう? リリはあれくらいムチっとしてた方が良いと思うけどねー。お胸も大きいし……」
「それはサキュバス視点の話だろ……」
ウィルたちは、メイドも交えてスイーツを楽しんでいた。
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