上 下
51 / 209
第四章

リリ スイーツ

しおりを挟む

「ウィルお兄ちゃん! なにこれ!」

「……これはケーキだな。というか、凄いぞこれ。めちゃくちゃ丁寧に作られてる……」

「こちらはレレーナ様が作られたケーキです。様々なフルーツが使われているので、最後まで楽しんで食べられると思います」

 ウィルとリリの前には、見ているだけでお腹いっぱいになりそうなケーキが運ばれてきた。

 運んできたのは、ソフィアの下僕であるメイドだ。

 人間の国にあるようなケーキとは、比べ物にならないほど拘って作られており、味も一級品である。

「すごーい! めちゃくちゃ美味しい!」

「こりゃソフィアも夢中になるわけだ」

「そうですね。ソフィア様はレレーナ様の作るスイーツが大好きですので、毎日のように食べられています」

 やはりソフィアのお腹が引っ込まないのは、このスイーツのせいだった。
 このケーキを見ただけで、暴力的なカロリーを秘めているのが分かる。

 毎日のように食べるとなると、太ってしまうのは火を見るよりも明らかだ。

「こんな美味しいケーキ初めて食べたよ! ウィルお兄ちゃんが作ったホットケーキとは大違い!」

「このケーキとあの失敗作を比べないでくれ……」

「リリが最後まで食べてあげたもんねー」

「マジでごめん……」

 あまりに美味すぎるケーキなため、ついつい過去のトラウマまで思い出してしまう。

 黒焦げのホットケーキを、ウィルとリリで泣きながら食べたという渋い思い出だ。

「それにしても美味しいねー。リリもこの魔王城のメイドさんになろっかなー」

 チラッとリリはメイドの方を見る。
 突如話を振られてしまったメイドは、どうしていいか分からずにアタフタしていた。

「勘弁してくれ……リリちゃんがいないと、エルネとレフィーに挟まれて死んでしまうよ」

「ねぇ、メイドさん。メイドさんはいつもこんなに美味しいもの食べてるのー?」

「い、いえ。私たちには専用の食堂がありますので……ですが、リリ様ならいつ来ても、レレーナ様の手作りは食べられると思います」

 なんだー――とリリはガッカリしたような素振りを見せる。
 どうやら、レレーナはリリのお気に入りになってしまったらしい。

「でも、ソフィアちゃんが羨ましいよねー。いつもこんなの食べれるなんてー」

「ですが、ソフィア様はのびのびとし過ぎているようで……私たちがガツンと言わないといけないのですが……」


「そう? リリはあれくらいムチっとしてた方が良いと思うけどねー。お胸も大きいし……」

「それはサキュバス視点の話だろ……」

 ウィルたちは、メイドも交えてスイーツを楽しんでいた。

しおりを挟む

処理中です...