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第九章

出陣

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 【トップ・ロブ・ファイト】開会式からの自由時間。
 エルネとレフィーは、くたびれたように待機室へ戻ってきた。

 今回の【トップ・ロブ・ファイト】では、出場する選出たちのため、二人に一部屋が割り振られている。

「エルネお姉ちゃんもレフィーお姉ちゃんもお疲れ様! もし怪我をしちゃっても、リリが回復してあげるからね!」

 エルネとレフィーに与えられた部屋には、二人に加えてウィルとリリが座っていた。

 柔らかさに感動したのか、リリはピョンピョンとソファーの上で飛び跳ねて遊ぶ。
 ウィルはそれを気にする様子もない。
 見慣れた光景だからだ。

「なんじゃ、あの馬鹿みたいに長い話は。戦いよりも疲れるじゃろ」

「一応周りの奴らを見ておきましたけど、正直脅威になり得る存在はいませんでした。リリが出ても問題ないレベルでしょう」

「そーなの!? 国を代表した戦いなのに!?」

 エルネもレフィーも、興味を失ったように首を振る。
 魔王と天使のお眼鏡にかなう存在はいなかったようだ。

 まるで、これからの全てが消化試合であるかのような態度。
 最初は心配していたウィルも、次第に何とも思わなくなっていった。

「そうだ、お前らの試合っていつからなんだ?」

「詳しい時間は覚えてないのじゃ。呼ばれたら行くから気にせんでよい」

「いや、気にするよ」

「ウィルお兄ちゃん、これじゃない?」

 リリはどこから手に入れたのか、試合の組み合わせが書かれている紙をウィルに渡す。
 そこには、十分後に行われるラズディア国対ロロール国の情報がしっかりと書かれていた。

「おいおい! のんびりしてる暇ないんじゃないか!? 十分後だぞ!?」

「相手はどこですか?」

「ロロール国だって、レフィーお姉ちゃん」

「あー、あの弱そうな国ですね」

 エルネとレフィーがダルそうに支度を始める。
 武器の使用は禁止であり、そもそもエルネとレフィーは武器を使わないため、準備と言っても身だしなみを整える程度だ。

「じゃあ行ってくるのじゃ、ご主人様」

「五分後くらいには戻ってきます。労いの言葉を考えておいてくださいね、マイマスター」

 そこには、これから試合をするとは思えないような美女が二人いた。
 綺麗な服を身にまとい、レッドカーペットの上と見間違えてしまうほどの足取りで部屋を出る。

「がんばってー!」

 リリの応援に、エルネとレフィーは心の底から安心させてくれるような笑顔で手を振り返したのだった。

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