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第十六章
マタタビ
しおりを挟む「リリちゃん、このキノコって食べられるやつ?」
「わー、綺麗なキノコだね。絶対美味しいよ、これ」
「……それ毒キノコらしいぞ。触っただけでも危ないから、見つけたら放置するのが一番みたい」
リリの願い通りキノコ狩りに来ているウィル一行。
早速ネフィルが見つけたのは、鮮やかな色で存在感を放っている毒キノコだ。
持参したキノコ図鑑によって、ウィルはそれが毒キノコだと判断できたが、リリやネフィルには難しいだろう。
毒が効かないのが何よりの救いである。
「こんなに綺麗なのに、何だか不思議だね」
「綺麗な薔薇には刺があるってことにゃ。リリちゃんみたいに」
「もー、ネフィルちゃんってばー」
「……君たちは何をやってるんだ?」
よく分からない茶番を目の前で見せられるウィル。
毒キノコに殺されないよう、細心の注意を払っているウィルからしたら、この余裕は考えられなかった。
「というか、ウィルお兄ちゃんが毒を受けても、リリが治してあげるから大丈夫だよ?」
「……いや、万が一のこともあるし」
「心配しすぎなんだってー。あ、オズさんを探すの忘れてた。ちょっと探してくるねー」
「本当に自由だな……」
リリは思い出したかのように、オズを探すため走り出した。
エルネとレフィーがいないことから、三人で固まっているのだろう。
どこかで木を切り倒すような音が聞こえてきたため、見つけるのは簡単そうだ。
「飼い主様はこれからどうするにゃ? キノコを食べたいなら、リリちゃんに付いて行った良いと思うけど」
「それはもうちょっと後にするよ。今は、レアなキノコを探して一攫千金を狙ってるんだ」
「そんなキノコがあるんだ……じゃあ、ワタシも探してみるにゃ。どんな見た目?」
「これだよ、これ。暗いところでは光るらしいから見つけやすいと思うけど、今はちょっと厳しいか……」
「……これオズさんが沢山採ってた気がする。大きな木の近くに生えてるって言ってた」
キノコで一攫千金を企むウィルの元に、耳寄りな情報が入ってきた。
当然大きな木は目立つため、現在地からでも何本かは見つけることができる。
鷹のような目を持つネフィルもいるため、確実に数本は見つかるはずだ。
「きっとエルネたちは、価値も分からないで食ってるんだろうな……先に回収しないと、全部取り尽くされるかもしれないぞ……」
「流石に全部はないと思うけど、心配なら急いだ方がいいかも」
「ちなみに、そのキノコ一個で高級マタタビ十個は買えるよ」
「――!?」
ネフィルは、日頃見せない跳躍力で木に登り、高所から効率的にキノコを探し始めた。
その気迫は、マタタビの依存性を顕著に表している。
これからのマタタビについて、ウィルが真剣に考え始めた瞬間だ。
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