有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

文字の大きさ
6 / 104
過去との対話_有栖_1

有栖_1-2

しおりを挟む
 近くにあった空手道場。それが『私』の格闘技を学ぶ始まりだった。近所の子供達も多く通っていたけど、女子は少なかったかな。男子達に混じり、正拳突きや型などを繰り返して覚えていく。
 周囲の男子達は派手な回し蹴りなんかを覚えたいらしく、基礎は教えてくれる師範がいるときだけ練習していた。飽きやすい子供にとって反復練習は苦痛だったんだと思う。
 だけど、『私』は違った。基礎の繰り返しが好きだった。
 真っ直ぐに拳が伸びると嬉しかったし、どのタイミングで力を入れれば拳は速く放てるか、どのように体重移動すれば動きはスムーズになるか。そんなことばかり気になって、誰よりも基礎の反復練習をしていたと思う。道場に通っていない日も、家の中で自主練をしていた。

「この道場で一番上達しているのは有栖だな」

 小学生の高学年になった頃、師範からそう言われた。『私』もその自負はあった。
 誰よりも基礎に練習時間を費やしたからか、そのあとに習う応用の型や技も容易にできるようになった。身体の使い方、というのを理解できたんだと思う。

 さぁ、これからも頑張ろう、と思っていた矢先に事件は起こる。

 師範に気に入られている『私』を妬んだ男子達からのイジメだ。
 最初は面倒だから無視をしてた。靴を隠されたり、陰口叩かれたりするぐらいだったし。だけど、抵抗がないことをその男子達は面白がった。次第にエスカレートして……

「痛っ!」

 師範が不在で掃除をしていたときだった。いきなり横から蹴られたのだ。
 ニヤニヤと笑う男子達、さすがに『私』も我慢の限界だった。
『私』はその男子達を睨み、向かいあった。とはいえ、ケンカは御法度。それは男子達も解っていた。
 だから、提案されたのは試合形式の組み手だった。子供の浅知恵で『私』が怪我をして、師範に問い詰められても組み手だった、と言い訳するつもりだったんだろう。まぁ、そんな言い訳が通じないことが解らないところが子供なんだけど。
『私』は了承して組み手をすることになった。相手は一つ上の上級生。これだけならまだ問題なかったと思うけど、後に問題となるのはフルコンタクト――つまり、寸止めではなく、相手への直接打撃がオーケーだったこと。

『私』はそのルールを承知した上で、戦った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

有栖と奉日本『不気味の谷のアリス』

ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第五話。 マザー・エレクトロン株式会社が開催する技術展示会『サイバーフェス』 会場は『ユースティティア』と警察が共同で護衛することになっていた。 その中で有栖達は天才・アース博士の護衛という特別任務を受けることになる。 活気と緊張が入り混じる三日間――不可解な事故と事件が発生してしまう。 表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

有栖と奉日本『デスペラードをよろしく』

ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第十話。 『デスペラード』を手に入れたユースティティアは天使との対決に備えて策を考え、準備を整えていく。 一方で、天使もユースティティアを迎え撃ち、目的を果たそうとしていた。 平等に進む時間 確実に進む時間 そして、決戦のときが訪れる。 表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(X:@studio_lid)

酔っ払いの戯言

松藤 四十二
ミステリー
薫が切り盛りする小さな居酒屋の常連である佐々木は、酔った勢いに任せて機密情報を漏らす悪癖を持っていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】

naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。 舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。 結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。 失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。 やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。 男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。 これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。 静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。 全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...