有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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過去との対話_奉日本_3

奉日本_3-5

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「俺がこんなにも仕事で苦労しているのに、お前等はのほほんと楽して生きやがって」

 父のストレスは当然の如く、家族に対してぶつけられた。暴力、暴言の頻度は増し、不機嫌でない日の方が少ないぐらいだ。それでも、世間体を気にする余力はあるらしく、暴力が痕が残る顔などの目立つ場所には振るわれることはなかった。
 自身の苦労や疲労を感じるほどに、俺達が彼よりも疲れていないことが癪に障り、自身の稼いだ金で養われている俺達が楽して生きているように思ったのだろう。そんなことを小学生に対して求めても仕方ないのだが、父からすれば自身の息子に学校に行って色んなことを学んで欲しい、ではなく、義務教育であり、周囲も行かせているから仕方なく行かせてやっている、という認識だったように思う。

 震災があってからは母もパートで働き、稼いだ金を生活費として協力していた。

「これぐらいの金額なら俺が一回パチンコに行った方が稼げる」
「これっぽっちで家に協力した気になるなよ。俺がどれぐらい稼いでるか知ってるだろ?」
「まぁ、酒代とタバコ代の足しにはなるか」

 労いの言葉を聞いたことはない。文句を言う割には毎回、明細を確認し、その金額を全て搾取する。今思えば、生活費の協力の他にも母が稼げる金額では一人では生きていけない、生活していくには無理がある。だから、自身に依存するしかない、と思わせたかったのかもしれない。
 一方で母は整った容姿と社交性が高かったことにより、働くことで色んな友達ができたようだった。また、家にいる時間を少しでも減らしたい彼女にとっては良い気晴らしになっていたようにも思える。これがこの当時の明るいニュースだったような気がする。

 そして、俺が小学六年生になったとき――母はこの家から逃げ出した。突発的な行動だったのか、以前から計画されたことのなのか、それとも最後の危機管理能力が働いたのか……それは解らない。

 そして、その行動は正しかった、と思う。
 残された俺のことを考えなければ。
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