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第一章:決戦の足音
有栖_1-3
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「随分と難しい顔していますね」
高本が空になったコーヒーのカップを手に取ると、そういって微笑んだ。
「そうですか?」
苦笑いを作ってとぼけるが、有栖には心当たりがあった。ここ最近は気がつけば、天使を相手に戦うシミュレーションばかりしている。そして、その結果は上手くいかない。それが顔面に無意識に出ているというのならば、彼女の顔はここ最近がずっと難しい顔をしていたことになる。
「えぇ。有栖さん『らしく』ないですね」
「高本さんは自分のことどう見てるんですか?」
「いつもなら俺のランチを食べているときは笑顔でした。それは確信をもって言えます」
「あ……」
そういえば、と有栖は思う。いつも通り、高本のカフェでランチを食べているはいるものの、何を食べたか思い出せない。そのときの味も、会話も、自分の顔も。先程、高本が片づけてくれたコーヒーの温かさも苦さも思い出せない。
「どうやら、今の自分には余裕がないようです」
「『今の』ということは、いつかは楽になる予定なのでしょうか?」
「……はい、もう数日したらすべて終わって楽になります」
余裕のない表情でそういった有栖に対し、高本はホットコーヒーをもう一杯注ぎ、
「サービスです」
といって、差し出した。
「ありがとうございます」
「いえいえ、きっと楽になれますよ――もうすぐ、ね」
なんの根拠もない高本の笑顔と言葉に、有栖は気休めでもありがたいと思いながらホットコーヒーを一口……今度はその温かさと苦さをしっかりと感じることができた。
高本が空になったコーヒーのカップを手に取ると、そういって微笑んだ。
「そうですか?」
苦笑いを作ってとぼけるが、有栖には心当たりがあった。ここ最近は気がつけば、天使を相手に戦うシミュレーションばかりしている。そして、その結果は上手くいかない。それが顔面に無意識に出ているというのならば、彼女の顔はここ最近がずっと難しい顔をしていたことになる。
「えぇ。有栖さん『らしく』ないですね」
「高本さんは自分のことどう見てるんですか?」
「いつもなら俺のランチを食べているときは笑顔でした。それは確信をもって言えます」
「あ……」
そういえば、と有栖は思う。いつも通り、高本のカフェでランチを食べているはいるものの、何を食べたか思い出せない。そのときの味も、会話も、自分の顔も。先程、高本が片づけてくれたコーヒーの温かさも苦さも思い出せない。
「どうやら、今の自分には余裕がないようです」
「『今の』ということは、いつかは楽になる予定なのでしょうか?」
「……はい、もう数日したらすべて終わって楽になります」
余裕のない表情でそういった有栖に対し、高本はホットコーヒーをもう一杯注ぎ、
「サービスです」
といって、差し出した。
「ありがとうございます」
「いえいえ、きっと楽になれますよ――もうすぐ、ね」
なんの根拠もない高本の笑顔と言葉に、有栖は気休めでもありがたいと思いながらホットコーヒーを一口……今度はその温かさと苦さをしっかりと感じることができた。
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