上 下
26 / 116
追憶_2

一色_十六歳_3

しおりを挟む
 裏バイトの内容がヤバイってことは解ってたよ。
 主に内容は違法な金や銃などの運び屋が多かったわ。まぁ、裏社会の手伝いやね。

 仕事を斡旋してたんが、当時は知らんかったけど、警察とヤクザと政治家。
 真面目に仕事して、信頼を得たってことは裏社会とズブズブになっていたわけや。
 この歳でやで。将来有望過ぎるわ。


 そんでこのバイトで大きなトラブルに巻き込まれたことで、俺の人生の方向性が固まることになる。

 事の発端は、俺とペアを組んでいた奴がこのバイトを辞める為に問題を起こしたんやな。

 銃をヤクザに運んで、金を受け取って依頼主に渡す――けど、このペアの奴は銃を一個かすめ取ってたんよ。ほんで、依頼主に金を渡すときに、その人も俺も銃殺して金を持ってトンズラってのが作戦やったみたいや。

 驚いたよ。一瞬何が起きたか解らんかった。
 ペアの奴が銃を取り出して、依頼主に発砲――でも、この依頼主の人も咄嗟に気づいたんか、慌てて銃を取り出したんやわ。でも、それでも遅かった。

 依頼主は肩を撃たれて蹲った。

 俺はこの世に神様はおらんと思ったわ。依頼主が持ってた銃が俺の足下に滑ってきたんやから。
 死にたくない――それが行動した理由やろね、俺は無意識に銃を手に取った。
 俺達を殺そうとした奴も予想外の事態に、依頼主を殺すべきか俺を殺すべきかの判断で一瞬固まった。

「撃て!」

 依頼主の声が俺の最後の躊躇を壊して、反射的に引き金を引かせた。
 こんなときに射撃の訓練の成果が出るんかい、と思うぐらいに弾丸は狙ったように頭部を貫いた。
 相手は即死。
 俺は助かった。そして、そこからが本当の地獄の始まりやった。

「お前、名前は?」

 人を殺したことの後悔と助かったことの安堵で震えていた俺に依頼主が声をかけてくれた。
 依頼主――この男が後に警察で俺の上司になる方波見って奴やった。
しおりを挟む

処理中です...