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第三章_六日前

一色_3-7

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「やぁ、閉店後に悪いね」
「いえ、問題ありませんよ。一色さん」
 深夜――一色は奉日本のバーへと訪れていた。
 カウンター席を間に挟んで向かい合う二人の間には、一色が注文したウィスキーのロックが置いてある。ゆっくりと会話をしながら飲むにはちょうど良い。
 閉店後なので周囲には客はいない。そうでなければ、これからする話は絶対にできないことだった。
「頼んでいたモノは準備できそうですか?」
「はい、既に手配できています」
 一色の質問に奉日本は静かに、しかし、即答した。
「頼もしい限りです」
「ですが、公に渡せるモノではありませんので、引き渡し場所とタイミングはこちらで策を考えた上で、別途連絡します」
 奉日本の言葉を聞くと、一色は、
「それで問題ありません」
 そう返答し、ウィスキーを一口飲み、喉に感じる刺激を楽しんだ。
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