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追憶_3

一色_十八歳_2

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『シニガミ』に所属した俺の成績は、悲しいかな優秀やったんよな。ここでの優秀ってのは人に詳細は聞かせたくないぐらいに最悪なことをしてきた、ということでもあった。

 警察にここまで暗部があったなんて……そんな衝撃も最初はあったと思う。けど、それがあるから上手く回ることもあって、理解なんてしたくなかったけど、綺麗事では世の中回らんってのを突きつけてくるようやった。
 仕事を一つこなせば、一つ闇が生まれた。その度に、自分の中での理想は幻想でヒーローなんて存在せんことを思い知っていく。
 心を殺さないと理性が崩壊すると解ってからは、何も感じないように努めたなぁ。
 黒に黒を塗りつぶす作業やと思った。そんで、それを繰り返すことで自分も真っ黒になっていることも解ってたのに……気づかん振りをしてたんよな。

 逃げれば良かった、と思うこともあったんやけど、どうせ逃げたら口封じで消されるってのを解ってたんやろな。
 それでもこれを続けていたのは方波見が、

「これも正義だ。結果を残し続ければ別の課へ転属する口利きをしてやる」

 そんなちっぽけな希望とこれも正義、という言葉に縋ってたんやろな。

 一度汚れちまった手も心も消せやせんのに。

 俺は――『シニガミ』で殺し、裏取引……色んなことをやったよ。警察の暗部で活躍し続けてきたんや。

 結果、俺は優秀過ぎたんやろな。二十二歳までの五年間を四課で過ごしたよ。
 他人から聞いたら短いように思うかもな。でも、心を殺し続けた五年は俺にとっては無限に続く地獄のようやったよ。
 俺はこの五年間を『黒い五年』って呼んで、隠して生きてきた。
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