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第五章_四日前

一色_5-3

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「ご要望の物は準備できました。そして、受け渡し方法ですが――」
 奉日本が一色に全ての説明を台本を読むように伝えていく。一言一句、間違えることなく、余計な解釈を与えることが無いように。
「……そこが決戦の地になるわけか」
「はい」
 自分以外の客がいない奉日本のバーで、一色は余裕がありそうな表情を浮かべていた。
「聞きたいことがあるのですが」
 その表情に奉日本は従来話す予定のない言葉を口にした。
「何やろか?」
「怖くはないのですか?」
「怖いよ」
「逃げたくはないのですか?」
「逃げたいなぁ」
「それでも実行するのですか?」
「あぁ」
「――覚悟はあるのですか?」
「それだけは揺るがへんのよ」
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