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第九章_ハローワールド

天使_9-5

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「一色さん、貴方は――私が最も策を弄し、最も注意を払って戦った相手でした」
 天使は膝を着く一色を労うように話す。そして、ゆっくりと近づいた。
「一つでもミスがあれば、一つでも条件が欠けていたら、負けていた可能性はあったと思います。それでも――結果はこの通り想定内です。貴方では、私を倒せないし、『レシエントメンテ』は止められない」
 天使は冷徹な目で、一色を見下す。
「『レシエントメンテ』か……それを知らんかったら、俺は安寧な人生を過ごせたんかもなぁ。俺達が『レシエントメンテ』を知ったとき――俺はその未来に恐怖し、お前はその未来に希望を抱いたんやな」
 一色は死んでない目で見上げて、天使を睨む。
「どう扱うつもりや『レシエントメンテ』を……いや、正式名称は『高度自己学習機能付きデータ改ざんウイルス』やったな」
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