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第十章_空白と余白
有栖_10-4
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「え?」
有栖は京の言葉に驚いた。
「それは一色さんが勝手に提出した、ということですか?」
「私も最初はそう思った。というか、勝手にそんなことしていないか、時々、役所に行ってチェックしてたんだけどね。
今回、彼が亡くなったから……もしかしたら、と思ってチェックしたの。そしたら離婚したことになってた。でもね、役所に聞いたら、つい最近の話ではないみたいなの。
少し前から離婚していることになってて、その他にも誠と関わったデータが消えているか、何かしらの近しい内容と置き換わってる。
ちなみに、私は離婚はしているけど旧姓には戻していない」
「役所の回答は?」
「少し困惑はしていたけど、データはそうなっていますの一点張り。まぁ、役所の人達も何万件という市民のデータを扱っているんだから、一つのデータだけ覚えてるなんてことはないわ――これって、データを改ざんされたのよね?」
「……京さんは知っているんですか?」
「最近ね。誠に協力していた元同僚の人間が来て、彼等が私にデータを改ざんするウイルスについて調べていたことを教えてくれたの。たぶんそれかなって」
「そこまで知っていたんですね。自分はその同僚の方は知りませんが、一色さんが個人的に動いていたことは知っていました。おそらく、その件でしょう」
「そっか……」
「大規模なデータ改ざんは、かなりの高精度で行われています。それでも、どこかしらに不自然な部分が生まれるものです。ですが、第三者が俯瞰的に見れば自然、当事者からすれば少し不自然――その程度のレベルでしか表れていないのでしょう」
「それが私達の離婚、ということね」
「推測ですが――あぁ、なるほど。だから、一色さんは京さんと離婚しようとしてたんですね」
何かに気づいた有栖が腑に落ちたように呟く。
「どういうこと?」
「このようなことが起こる可能性を一色さんは危惧していたんだと思います。今回はその元同僚の方が事前に情報を与えてくれていたので良かったですが、何も知らない状態で、もしこのようなことが発生すれば京さんは不自然だから詳細に調べる可能性がある」
「なるほどね。それで調べたら危険な目に合う可能性があるってことか」
「はい。ですが元々、離婚していれば一色さんとの関係は切れているからデータの改ざんの影響もないし、不自然なことに気づくこともなく……危険から遠く離れて生きて欲しかったんだと思います」
「自分の命は危ないことも、その先のことも解っていて……それでも残された私達が問題なく生きていけるように……か。本当に馬鹿な人」
京の声は少し震えていた。しかし、感情を抑え込むように大きく深呼吸すると、顔を上げて有栖を見た。その表情は無理に作った笑顔が貼られていた。
「ちょっと教えて欲しいんだけどさ。有栖さんから見て、誠はどんな人だった? 私、ユースティティアのあの人をほとんど知らないから……主観で良いから教えて欲しいの」
有栖は京の言葉に驚いた。
「それは一色さんが勝手に提出した、ということですか?」
「私も最初はそう思った。というか、勝手にそんなことしていないか、時々、役所に行ってチェックしてたんだけどね。
今回、彼が亡くなったから……もしかしたら、と思ってチェックしたの。そしたら離婚したことになってた。でもね、役所に聞いたら、つい最近の話ではないみたいなの。
少し前から離婚していることになってて、その他にも誠と関わったデータが消えているか、何かしらの近しい内容と置き換わってる。
ちなみに、私は離婚はしているけど旧姓には戻していない」
「役所の回答は?」
「少し困惑はしていたけど、データはそうなっていますの一点張り。まぁ、役所の人達も何万件という市民のデータを扱っているんだから、一つのデータだけ覚えてるなんてことはないわ――これって、データを改ざんされたのよね?」
「……京さんは知っているんですか?」
「最近ね。誠に協力していた元同僚の人間が来て、彼等が私にデータを改ざんするウイルスについて調べていたことを教えてくれたの。たぶんそれかなって」
「そこまで知っていたんですね。自分はその同僚の方は知りませんが、一色さんが個人的に動いていたことは知っていました。おそらく、その件でしょう」
「そっか……」
「大規模なデータ改ざんは、かなりの高精度で行われています。それでも、どこかしらに不自然な部分が生まれるものです。ですが、第三者が俯瞰的に見れば自然、当事者からすれば少し不自然――その程度のレベルでしか表れていないのでしょう」
「それが私達の離婚、ということね」
「推測ですが――あぁ、なるほど。だから、一色さんは京さんと離婚しようとしてたんですね」
何かに気づいた有栖が腑に落ちたように呟く。
「どういうこと?」
「このようなことが起こる可能性を一色さんは危惧していたんだと思います。今回はその元同僚の方が事前に情報を与えてくれていたので良かったですが、何も知らない状態で、もしこのようなことが発生すれば京さんは不自然だから詳細に調べる可能性がある」
「なるほどね。それで調べたら危険な目に合う可能性があるってことか」
「はい。ですが元々、離婚していれば一色さんとの関係は切れているからデータの改ざんの影響もないし、不自然なことに気づくこともなく……危険から遠く離れて生きて欲しかったんだと思います」
「自分の命は危ないことも、その先のことも解っていて……それでも残された私達が問題なく生きていけるように……か。本当に馬鹿な人」
京の声は少し震えていた。しかし、感情を抑え込むように大きく深呼吸すると、顔を上げて有栖を見た。その表情は無理に作った笑顔が貼られていた。
「ちょっと教えて欲しいんだけどさ。有栖さんから見て、誠はどんな人だった? 私、ユースティティアのあの人をほとんど知らないから……主観で良いから教えて欲しいの」
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