有栖と奉日本『カクれんぼ』

ぴえ

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第一章:この指止まれ

有栖_1-3

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「イジメか……」
 有栖は腕を組み、強く目を瞑って眉間に皺を寄せて、唸る。
「助けて頂くことは難しいですか?」
 右京の表情に不安の色が浮かぶ。
「デリケートな問題だからね。下手に動くと加害者側を刺激して、楓ちゃんに更に被害が発生する可能性もある。加害者が危険を察知して一時的に止めることもある。キミから見て、イジメのきっかけ――要因になるようなことの話を聞いたとこはあるの?」
「いや……楓はいつも通りでした。でも、正義感が強いから彼女がそれを理由に何か動いたのかも。それが気にくわない奴がいたとか」
「それもあるかもね。それに、もしかしたらきっかけすら無いのかもしれないし。それぐらいに、デリケートで難しい問題だから」
「そ、そうですよね」
 右京の落胆した様子が声にも表情にも出ていた。それを見て、同情したわけではないが有栖が声をかける。
「大丈夫。聞いたからには無視するつもりはないから」
「あ、ありがとうございます」
「でも、慎重に動く。イジメ、という点で動くと調査される学校側にも警戒されるし」
「わかりました。有栖さんの動ける範囲でお願いします。俺も協力できることがあれば何でもしますので、言ってください」
 右京はエンジンがかかった車のように身体を揺らし、前のめりでやる気を表現している。
「わかった、わかった。さて、どうしたものか……ところで、楓ちゃんが通っている学校って何処?」
 有栖が右京のやる気をたしなめると、肝心の場所を尋ねた。
「そうですよね、そこからですよね。楓が通っている学校は――桜華学園、というところです」
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