有栖と奉日本『カクれんぼ』

ぴえ

文字の大きさ
32 / 82
第二章:もういいかい?

有栖_2-3

しおりを挟む
「お疲れ様」
「はい、疲れました」
 桜華学園からユースティティアに戻った反保を有栖は特務課の部屋で待っていた。
「じゃあ、今日の情報を共有しようか」
「はい」
 一色から、有栖が外回りで得た情報と反保が桜華学園で得た情報については共有するように指示されていた。
 二人は本日得た情報を共有した。


「イジメ、という点に着目すると、その日下部って生徒の自殺が気になる」
 反保の話を聞き終えた有栖は率直な考えを口にした。
「スクールカウンセラーに届いた情報ではないんですか?」
「それも気になるけどね。でも、それもその自殺と繋がっているかもしれない、と考えられるし」
「確かに。スクールカウンセラーに届いた情報はまだ不確定ですが、自殺は既に現実で起きたことですからね」
「学校側の見解は?」
「学園長からは『人生に悲観して自殺した』と。イジメとかは関係ない、という態度でしたね」
「苦しい言い訳に聞こえる」
「ですね。えっと、有栖先輩はどうでしたか?」
 反保の問いに有栖は少し苦い表情を浮かべた。
「イマイチ。でも、目星をつけている場所があるから行くつもり。そういや、裏金については?」
「今日は全く情報を得られませんでしたね。ですが、もう一つのペア……警察側が学園のデータベースを確認したので、こちらも見せてもらうつもりです」
 警察側、という表現になったのは我孫子は調べていないだろうと判断した上でのことだった。
「言い分は素行調査にしといて」
「了解です」
 そこまで会話を交わすと、沈黙が挟まった。
「我孫子から――何か聞いた?」
 有栖は自身の中では、本日の情報よりも気になっていたことを反保に聞いた。いや、彼女からすれば聞くのが怖くて、遠回しに逃げているようなものだ。今の聞き方も含めて。
「いいえ」
「聞いたりしないの?」
 有栖が学園の捜査に参加できないのは我孫子とトラブルがあったことを反保も知っている。一般的には興味があったり、疑問があったりするものだろう。
「聞いて欲しいんですか?」
「いや、そんなことは……」
「じゃあ、僕にとってはどうでもいいことです。今の仕事とは関係ないことですし」
 反保はさらり、と答えた。そして、続ける。
「それに『誰か』から聞いた確証のない一方的な情報より、本人が話す、その言葉に耳を傾けますよ。どこかの先輩は、僕にそうしてくれましたから……僕もそうします」
 反保はそう言うと照れくさそうに、有栖から視線を外した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【戦国時代小説】 甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助

蔵屋
歴史・時代
 わたしは、以前、甲斐国を観光旅行したことがある。  何故、甲斐国なのか?  それは、日本を象徴する富士山があるからだ。     さて、今回のわたしが小説の題材にした『甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助』はこの甲斐国で殆どの戦国乱世の時代を生き抜いた。そして越後の雄•上杉謙信との死闘は武田信玄、山本勘助にとっては人生そのものであったことだろう。  そんな彼らにわたしはスポットライトを当て読者の皆さんに彼らの素顔を知って頂く為に物語として執筆したものである。  なお、この小説の執筆に当たり『甲陽軍鑑』を参考にしていることを申し述べておく。  それでは、わたしが執筆した小説を最後までお楽しみ下さい。  読者の皆さんの人生において、お役に立てれば幸いです。  

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...