有栖と奉日本『千両役者のワンカラ―』

ぴえ

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第十章:最後の策

天使_10-2

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「復旧? アース博士と接触したのですか? それとも別の『デスペラード』が何処かに隠していて、それを受け取ったのですか?」

 天使は思いつく限りの可能性を言葉にする。彼としては最後が可能性としては高い、と考えていた。アース博士が現時点で警察やユースティティアに顔を出して接触するリスクを取るとは思えない。ならば、別の『デスペラード』を作成、もしくは複製していたものを秘密裏に渡したというのが妥当だろう。
 しかし、一方で有栖の言葉に引っかかる部分もある。それは『復旧』という言葉だ。先程の可能性が事実であるのならば、その言葉は適切ではない。

「違う」

 有栖は首を横に振り、天使の問いに答えた。

「アース博士は貴方を最大限にまで警戒をしていました。だから、物の受け渡しなどは気づかれる可能性を考慮し、避けていたそうです。だから――貴方を騙すことにした」
「騙す?」
「貴方が『レシエントメンテ』を使って『デスペラード』を消すことを予期していた。だから、それを逆手に取った策を講じた」
「逆手に? ですが、『デスペラード』が動作しないことは確認しましたよ」
「えぇ。だって、壊れましたから」
「どういうことですか?」
「半壊だったんですよ。『レシエントメンテ』を使って『デスペラード』を消すことを実行した際に映像が表示されたでしょう? あの順に途中まで壊れただけです」
「そうなると、アース博士に接触した、ということですか? 半壊とはいえ、あのプログラムを復旧することができるのは彼女ぐらいでしょう?」

 天使の言葉に有栖は小さく笑って、首を横に振る。

「では、アース博士と同等の技術者が?」
「そんなものはいないでしょ」
「ならば、誰がどうやって?」

 天使は疲労とダメージでこれ以上の思考の回転は無理だと思い、回答を求めた。

「表示された順に途中まで壊れただけです。ということは、逆の順をたどれば復旧できる、ということです」
「そんなことは当たり前――あぁ、なるほど」

 有栖が何を言いたいのかを察すると、天使は答えを呟く。

「カメラアイですか」
「えぇ。あのとき、反保は飛田に捕まっていた。その際に耳打ちで画面を見るように言われたそうです。だから、反保は半壊していくプログラムに記載されていた内容を全て記憶していました」
「あなた達がここに乗り込んでくるまでに時間を要した理由が解りました。彼に復旧させたのですね」

 天使の言葉に有栖は肯定するように頷いた。彼が語った策を虹河原から聞いたときは彼女も驚いたし、何よりも反保が戸惑ったことは言うまでもない。記憶した内容を複写する作業は時間を要すれば可能であり、その策を講じたアースに改めて背筋に寒いもの全員が感じていた。今の天使と同様に。

 ――全ては彼女の掌の上か。

 頭脳でアースに上回れて、その策を実行した有栖達を含めた総合力で負けた。
 答えを提示した有栖は全てを見届けるようにパソコンを自身に向けてモニターを凝視していた。それを確認した天使はゆっくりと右腕を動かし、ジャケットの内ポケットに手を入れる。
 硬く、ひんやりとした感触が指に触れる。ゆっくりと身を起こし、指先に触れたそれを引き抜く。彼の手には拳銃が握られていた。そして、彼は――その銃口を有栖へとむけた。
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