44 / 57
有栖_5
有栖_5-4
しおりを挟む
深く、深くナイフが刺さっている肩を押さえながら有栖は片膝を着いた。
「これが答えですか?」
「はい。そして、これで終わりです」
そう言って、田中は銃を構えた。
「何で、こんなことを……」
絶体絶命だった。現状、有栖にこの状況を打破する方法は思いついていない。田中と戦うことは想定していたが、相手がここまで動揺することなく、冷徹に攻撃へ移るとは想定していなかった。
「何でって……人を殺したかったからです」
「……は?」
「俺、血が好きで、生の死体を見たかったんですよ。警察だったらさ、事件現場とかで見れると思って就職したんだけど、派出所勤務じゃ地味な仕事ばかりでさ。だったら、自分で起こせば良いやって思ったんですよ」
田中は思い出話を語るように話す。しかし、自身の発言が一般的のように語るその表情が、彼の異常さを強く表面化させていた。
「警察の動きは派出所勤務でもある程度なら解るんですよ。だから、状況とパトロールの配置場所とか解ってれば、安全圏で事件は起こせる。特に切り裂き魔が出てからは模倣犯として動きやすくでラッキーだったよ」
田中の笑顔を有栖は睨む。
「だからさ、コイツに罪を擦り付ければ殺人も出きると思ったんだ。結果は成功――だと思ったけど、色々とイレギュラーがあって面倒なことになった。まぁ、ここで全て処理すればオーケーだけど。有栖さんも切り裂き魔も殺して、俺が証言すれば良いよね。全ての罪は切り裂き魔に、全てを知る有栖さんは殉職ってことで」
「ふざけるなよ」
「俺は真面目だよ。全部、真面目にやってきて、嘘はない。本気で血や死体が好きなだけ。特に、女性は最高なんだよ。肉が柔らかくて、血が流れ、恐怖と苦痛に歪む顔も含めて、全てが美しいんだよ。殺したときなんて、もう最高でさ――」
「ふざけるな!」
有栖は意気揚々と語る田中の表情を見て、怒りが頂点に達した。それを動力にし、痛みに耐え、立ち上がる。
「被害者の気持ちを考えたことがあるか? 死んでしまった女性には未来があったんだぞ。生きている女性も、お前に襲われた恐怖が付きまとい、それを拭い去るには多大な時間が必要になる。いや、もしかしたら一生、消すことができないかもしれない。怯えながら、苦しみながら生きないと駄目になったんだ」
有栖は怒りに任せて、感情のまま話す。今、自身が命の危機にあることなんて関係なかった。思っていることを、ただぶつけることしか考えてなかった。
「反保のこともだ。反保はお前の罪を背負う為に生きてるわけじゃない! そいつは幸せになる為に生きているんだ!」
「これが答えですか?」
「はい。そして、これで終わりです」
そう言って、田中は銃を構えた。
「何で、こんなことを……」
絶体絶命だった。現状、有栖にこの状況を打破する方法は思いついていない。田中と戦うことは想定していたが、相手がここまで動揺することなく、冷徹に攻撃へ移るとは想定していなかった。
「何でって……人を殺したかったからです」
「……は?」
「俺、血が好きで、生の死体を見たかったんですよ。警察だったらさ、事件現場とかで見れると思って就職したんだけど、派出所勤務じゃ地味な仕事ばかりでさ。だったら、自分で起こせば良いやって思ったんですよ」
田中は思い出話を語るように話す。しかし、自身の発言が一般的のように語るその表情が、彼の異常さを強く表面化させていた。
「警察の動きは派出所勤務でもある程度なら解るんですよ。だから、状況とパトロールの配置場所とか解ってれば、安全圏で事件は起こせる。特に切り裂き魔が出てからは模倣犯として動きやすくでラッキーだったよ」
田中の笑顔を有栖は睨む。
「だからさ、コイツに罪を擦り付ければ殺人も出きると思ったんだ。結果は成功――だと思ったけど、色々とイレギュラーがあって面倒なことになった。まぁ、ここで全て処理すればオーケーだけど。有栖さんも切り裂き魔も殺して、俺が証言すれば良いよね。全ての罪は切り裂き魔に、全てを知る有栖さんは殉職ってことで」
「ふざけるなよ」
「俺は真面目だよ。全部、真面目にやってきて、嘘はない。本気で血や死体が好きなだけ。特に、女性は最高なんだよ。肉が柔らかくて、血が流れ、恐怖と苦痛に歪む顔も含めて、全てが美しいんだよ。殺したときなんて、もう最高でさ――」
「ふざけるな!」
有栖は意気揚々と語る田中の表情を見て、怒りが頂点に達した。それを動力にし、痛みに耐え、立ち上がる。
「被害者の気持ちを考えたことがあるか? 死んでしまった女性には未来があったんだぞ。生きている女性も、お前に襲われた恐怖が付きまとい、それを拭い去るには多大な時間が必要になる。いや、もしかしたら一生、消すことができないかもしれない。怯えながら、苦しみながら生きないと駄目になったんだ」
有栖は怒りに任せて、感情のまま話す。今、自身が命の危機にあることなんて関係なかった。思っていることを、ただぶつけることしか考えてなかった。
「反保のこともだ。反保はお前の罪を背負う為に生きてるわけじゃない! そいつは幸せになる為に生きているんだ!」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
【戦国時代小説】 甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助
蔵屋
歴史・時代
わたしは、以前、甲斐国を観光旅行したことがある。
何故、甲斐国なのか?
それは、日本を象徴する富士山があるからだ。
さて、今回のわたしが小説の題材にした『甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助』はこの甲斐国で殆どの戦国乱世の時代を生き抜いた。そして越後の雄•上杉謙信との死闘は武田信玄、山本勘助にとっては人生そのものであったことだろう。
そんな彼らにわたしはスポットライトを当て読者の皆さんに彼らの素顔を知って頂く為に物語として執筆したものである。
なお、この小説の執筆に当たり『甲陽軍鑑』を参考にしていることを申し述べておく。
それでは、わたしが執筆した小説を最後までお楽しみ下さい。
読者の皆さんの人生において、お役に立てれば幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる